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第五話 「危機一髪?」

そんなドタバタであっという間に朝のHRは終わる。

そして、以前の渚が来たときのように黒羽さんの周りに人だかりができる。


「信じられないわね〜、あんな自己紹介しても人気がでるのに」


呆れ顔で話す舞。

その意見はもっともだが、それを差し置いても彼女にはそれだけの魅力があるのだろう。

それに、彼女もあんな性格だけど、人の対応には慣れているみたいだ。


「そういえば亮介、あなた頬は大丈夫なの? すごい良い音したけど」

「いや、結構痛い」


肉体的にも精神的にもね。


「ちょっと見せてみて……」

「えっ?」


そういって舞の顔が俺の顔に接近する。

息がかかるぐらいの距離だ。

さすがにこんな近くで舞の顔を見た事はない為か、胸がドキドキしていた。


「あ〜、結構赤くなってるわね」

「そ、そう?」

「ちょっと熱があるんじゃない? 顔真っ赤よ?」

「え? いや、だ、大丈夫だから」


俺は直ぐに舞と距離をとる。

しかし……それがまずかったみたいだ。

俺のぎこちない動きからなにやらピーンと来た表情の舞。


「どうしたのよ? 本当に熱があるんじゃない?」


とか心配してるように言いつつ、顔は笑っている舞。

どう考えてもからかってるようにしか見えない。


「ほらほら、もう一回見せてみなさいよ〜」

「だ、大丈夫だって言ってるだろ!」


そんなやりとりの時、猛烈に殺気を放つ方が近づいてくる。

その殺気は視線だけで人を殺せそうな程。


「相沢さん、神崎君がひじょ〜に困っているようですのでやめてもらえませんか?」

「あら、私は亮介の頬がどうなってるか見てただけよ?」


最初はね。それから先は全然別ですけどね。

舞の言い訳に、一層不機嫌になっていく渚。


「そういえば、白鳥さんは朝はリョウ君なんて言ってたのに、何で学校では

 神崎君なの?」


舞の鋭い突っ込みに後ろにたじろぐ渚。

そこは俺も気になっていた。


「ひ、人の眼もありますから、そこは気にしてるんです!」


若干赤く頬を染めてすねたような言い方をする渚。

だが、渚の言う事ももっともである。

学校でリョウ君、リョウ君と言われた日にはクラスの男子から何をされるやら。

タコ殴り……いや、下手すれば火あぶりでは?

ただでさえ舞と渚がここに居る時点で注目を浴びるというのに。


「へ〜、本当は恥ずかしくて言えないんじゃないの?」

「! し、失礼ですね、言えますよ! だって私とりょ……」

「だー! あーあー!」


俺は発声練習をするかのような声を出して渚の言葉を遮る。

それは殺人クラスのNGワードだ渚。

周りが俺の奇妙な行動を見て、冷ややかな視線を送る。

おれ……このままじゃ本当に変態扱いされてしまうかもしれない。



そんなギリギリの綱渡りのような舞と渚の行動に注意しながら、なんとか

学校を無事終える事ができた。

そして俺は問答無用でダッシュで帰る。


「おい亮介! 今日は飯おごる約束じゃなかったのかー!」

「すまない! おれは一刻も早く平和な時間が過ごしたいんだ〜!」

「何だよそれー!」


再び正輝との約束を破ってまで俺は家路につく。

しかし、校門の所になにやら黒服の方々が……ん? 何か前にもあったような?

嫌な予感を感じながらも俺は何もやましい事はしていないので堂々と

校門を出て行こうとするが……。


「えっ?」


俺をササッと囲む黒服の方々。

そして、案の定がっしりと拘束されました。


「な、なんでこうなるんだよー!」


生涯で二度目の拉致。

何処かへと俺を連れ去る黒塗りの車。

まぁ……なんだ、二回目ともなると、なんか吹っ切れるな。

また渚の家に連れて行かれるのか? それともあのメイドの仕業か?

などと考えていると、意外に早く車が止まる。

車から降ろされる俺。

そして、目の当たりにしたものは……。


「うわー……」


感嘆の声があがる。

目の前には日本古来の塀に囲まれた歴史を感じさせる和のお屋敷。

重々しい扉を開き、見事な庭園を歩いてお屋敷に招かれる。

何? 俺なんか最近こういう豪邸に招かれる運命なの?

などと考えながら、屋敷の玄関に黒服と共に入る。

そこには着物を着た女性が左右に一列に並び、お辞儀をして歓迎する。

そして、奥から白髭しろひげを生やしたご老人が俺の前まで来る。


「神崎亮介様ですね?」

「えっ……は、はい」

「お待ちしておりました、どうぞこちらへ」


お待ちも何も、勝手に連れてこられたのだが……と声に出そうだったがやめた。

黒服たちはどうやら俺を連れてきたことでお役目ご免らしい、どこかへと

出かけていった。

俺は老人の後を追う。

そして、ある和室で待つように指示される。

和室は畳がざっと見て、40畳ぐらいあるのでは無いだろうか?

それぐらい大きな和室だった。

そして中央には朱色の立派なテーブルが置いてあり、その後ろには掛け軸が。


待たされる事数十分――。


なにやら先程からあわただしく動く人達と、先程のご老人。

そして、俺をここに導いた元凶と思わしき人物が姿を現した。


「……く、黒羽さん?」

「ご機嫌いかがですか、神崎様」


さ、様〜!? いかんいかん、どうやら何時の間にか眠っているようだ。

俺は頬をつねるが、直ぐに現実である事に気づく。だって、痛いし。

黒羽さんは、制服姿で俺の前に姿を現し、目の前のテーブルに座り

テーブルを挟んで俺と対面の状態になる。


「あ、あの〜……率直に聞いてもよろしいですか?」

「はい、なんでしょうか」

「俺、何で呼ばれたんでしょうか?」


まさか、今朝の事を根に持っており、直々に家に招いて拷問タイム?

やばい、否定できないところが恐い。


「あなたを直々に招いたのは、白鳥渚の事について聞きたいからです」

「えっ? 渚のこと?」

「ええ。彼女はわざわざ名門の高校を辞めてまで、この田舎の高校に来たのです。

 その理由を探りましたが、なんら手がかりも無いまま……。

 そこで、今日親しげに話していたあなたなら何か知っているのではないかと思い

 ここに呼び出した所存です」


そんな事、本人に聞けばいいじゃないか。

と、声に出したかったがそれが嫌だから俺を連れてきたのだろう。

しかし、俺って最近なにかと拉致されるな……理由無しで。


「きっと私の想像もつかないような凄い理由にちがいありませんわ」


う〜ん、としわを寄せて悩む姿を見せる黒羽さん。

あー、それ当たってるよ。

まさか結婚したい相手がいるから学校変えたなんていう理由だからね。


「でも黒羽さん、そんな理由聞いてどうするの?」

「決まってますわ、理由を取り除くのです」

「取り除く?」

「ええ。別に私は彼女なんてどうでもいいですが、彼女がこんな片田舎にずっと

 住むとなると私としても面白くないですから」


そういって、持っている扇子を広げたり閉じたりしてためいきをつく。

う〜ん、もしかして黒羽さんは渚の事心配してる?


「黒羽さんって実は優しいんですね」

「!? な、何言ってるんですの! わ、私は別に……」


そういいながら頬を赤らめる黒羽さん。

むぅ……結構可愛いかも。



「黒羽さん、もし理由が好きな男性がこの田舎に居るから引っ越したと言う理由でしたら

 どうするんですか?」

「勿論、その男性を『消し』ますわ」



……はい? 今、何て?

あれ? なんだろう急に鳥肌が立ってきた。


「えっと、消すってどういう意味でしょうか?」

「そのままの意味ですわ。この世から抹消するという意味です」

「ど、どして!?」

「そんな理由で引っ越すなど99%無いとは思いますが、もしそのような理由でしたら

 私をこんな田舎まで来させた罪は万死に値しますもの」


おめでとうございます、その残り1%で当たりです。

そして、こんな田舎まで来たのはあんたが勝手に来ただけでしょう! 

そんな理由で消されるなどもってのほかです。


「ところで、知っておられるのですか? 渚さんがこの田舎まで来られた

 理由というものを」

「いえ、真に残念ながら、本当にマジで知らないんですこれが」


俺は丁寧に嘘をつかせていただきました。


「お話中失礼させていただきます」


丁度その時、着物を着た女性が襖を開いて俺達の居る和室に入ってくる。


「どうしたの?」

「実は……」


ヒソヒソと黒羽さんに耳打ちをする女性。

そして、聞き終わった後、すくっと立ち上がる。


「神崎様、失礼ですが少し席を外させていただきます」

「えっ?」

「ご心配なく、直ぐに終わる用事なのでそこでお待ちください」


そして、女性に連れられて黒羽さんは和室を出て行く。

再び一人寂しく和室で待つ事に……


「大変そうですね、亮介様」


ならなかった。

良く見た衣装に身を包む奇想天外なこの人物は紛れもなくルビア。

このメイドは和室の畳を一枚めくって姿を現したのだ。

どこでも出れるんだなあんた。


「あんた、本当に何者なんだよ?」

「失礼ですね、以前にも言ったとおりメイドです」

「……まぁ、いいや。あんたどうしてここに?」

「いえ、学校で仲良く黒服の人と車でお出かけしていたのを見かけたものですから、

 それを追いかけて今に至るわけです」


むっ、つまりそれは俺を心配して追いかけてきてくれたと思っていいのだろうか?

ちょっとあなたに対する目が変わりました。


「しかし、何事も無かったようですね。……チッ」


おい、今の舌打ちはどういう意味でしょうか?


「しかし亮介様、一体今どういう状況なのですか?」

「いや、実は……」


事の大筋をあらかた話す。

そして、それを聞いたメイドは。


「なるほど、このままでは亮介様は黒羽様に殺されかねないと」

「ああ。黒羽さんが何処まで本気か分からないけどね」


そう、もしも本気だった場合は俺の無残な死体が海に浮かびかねない。

そうなる前に何らかの手を……あれ? どうして笑っているのかなこのメイドは?


「……あなたの事はお嬢様と一緒に一生忘れません」

「おい、あんた何考えてる?」

「亮介様、人は秘密を喋りたがる生き物だという事はご存知で?」

「知らん。知りたくもないが、あんたの考えてる事はよ〜く分かった」


このメイドをこのままこの部屋に置いておく事は死に直結しかねない。

よって手を打つ事にした。


「あっ! あんな所に渚の姿が!」

「えっ!?」


キョロキョロと辺りを見渡すメイド。

その隙に背後に回り、メイドがさきほど出てきた場所に落とす。

そして、畳で蓋をしてその上に俺が乗る。

これで俺の窮地はなんとかしのげ……


「ひどいですね、亮介様」


なかった。

このメイドは他の畳の部分から姿を現したのだ。

くっ……この常識を遥かに超えたメイドには実力行使では無理か。

こうなったら逃げるしかない!

俺は急いで和室から出ようと(ふすまを開けると。


「あら? 神崎様、一体何処に行かれるのですか?」


目の前に黒羽さんの姿がありました。

なんというバッドタイミング。

そして、黒羽さんは後ろのメイド服姿のルビアに気づく。

終わった。

後はあの悪魔メイドが告げ口して黒羽さんが俺を消すだろう。

そう考えていた時。


「し……侵入者です! 誰かー!」

「えっ?」


黒羽さんの声に反応して、黒服の方々が集まってくる。


「あのメイド服姿の不法侵入者を捕まえなさい!」


ああ、成る程、そういわれてみれば確かに。

これにより、一気に形勢逆転。


「むっ、命拾いしましたね亮介様。ここは多勢に無勢で引かせてもらいます」


そういって、メイド服姿とは思えぬ俊敏な動きで和室を出て行くルビア。

それを追いかける黒服の方々。


「神崎様、話の方は後日聞かせていただきます。今はあの不法侵入者の方を

 優先しますので」

「あー、そうですね。あの人絶対捕まえてください。今後の為にもなりますので」

「? それは勿論」


そういって忙しく黒羽邸を駆け回る黒服の方々と黒羽さん。

俺は微かにメイドに感謝しつつ、黒羽邸を後にした。




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