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第十四話 「またあんたか……」

逃げる事も不可能な状況なので、渋々石段を上っていく。

やっとの思いで山頂まで上ると、そこには立派な古いお寺が姿を現す。


「お〜、何か凄い風格あるな」

「ここはね、歴史ある由緒正しきお寺らしいよ」

「へ〜」


渚の言葉に俺は感嘆の声をあげる。

そうして、俺達はお寺の中へと入る。

中は歩くと軋む木の床に、ヒンヤリとした空気が流れる広い空間が現れる。

目の前には大きな仏像と、大きな仏具。

そして、俺達に背中を向けて座禅しているこの寺の住職と思われる

長い金髪の……えっ? 金髪? なにやら嫌な予感がしてきた。

住職が俺達の方に振り向く。


「お待ちしておりました」


お坊さんの服を着たよ〜く知っている人物がいた。

え〜っと、確かここは歴史ある由緒正しき寺だよな?

俺は他人の空似だと心底思いたい。


「えっと、住職のお名前お聞きしてもよろしいでしょうか?」

留美亜るびあと申します」

「帰る」


名前を聞いた瞬間とほぼ同時に、俺は踵を返して帰ろうとする。

しかし、渚が俺の服を掴んで引き止める。


「リョウ君どこに行く気! まだお祓い終わってないよ!」

「いやいや、ある意味終わってるよ? このお祓い」

「どうして?」

「じゃあ渚に聞くけど、この寺の場所を教えてもらった人は?」

「えっ? 勿論ルビだよ」


えっへん、と胸を張って自身満々で言う渚。

あまりに予想通りの為、返す言葉が見つからない。


「おいメイド、これは一体どういうことですか?」

「メイド? 一体誰の事ですか?」

「あんたの事だよ、あんたの」

「失礼な、私は白鳥家に仕える美しく清らかなメイドなどではありません」


むすっとした表情で俺に返答するルビア。

その言葉で同一人物だという事を俺は確信した。


「なに言ってるのよ亮介? 住職さんに失礼よ?」

「舞、この人誰かに似てると思わないか?」

「えっ? 誰に似てるのよ?」


舞は全く誰だか分からない様子。

しかし、黒羽さんは頻りに首を傾げたりしてルビアを観察していた。


「どうしたんですか? 黒羽さん?」

「いえ、以前私の家に侵入してきた女性とよく似ているものですから……」


似ているどころか、同一人物です。

しかし、それを言うとまたややこしい事になりそうだからやめておく。

ぶっちゃけて言うと、さっさとお祓いもどきの事をやって家に帰りたいのが

本音である。


「えっと、とりあえずさっさとお祓いしてもらえますか?」

「亮介様……じゃなくて、そこの呪われてるあなた、それが人にモノを頼む

 態度ですか?」


むっ、意外とまともな事を言ってきた事に驚く。

確かに今の俺の言葉は良くない。

良くないが、住職のフリをしているあんたも良くないと思う。


「申し訳ありません。お願いです、呪われていない俺にお祓いをやって

 いただけませんか? 偽住職さん」

「……少し棘がある言い方ですが仕方ありませんね」


ルビアがそういうと、俺達を横一列に並ばせて座らせる。

そして、ルビアは俺達の正面に立つ。


「では、お祓いについての手順を説明させていただきます」


突然ルビアの顔つきが真剣になる。

それに気づいたのか、皆ピシッと姿勢を正す。

まさか本当にお祓いできるのか? このメイド?

有り得ない話ではない。ある時は担任、またある時は忍者にもなれる超人

メイドなのだから。

とりあえず、俺は真剣に話を聞くことにした。


「まず初めに、三日間ほど山篭りをしていただきます。そして

 精神と体力を鍛えた後、ここで五日ほどの寺のお手伝いを……」

「あー、ストップ。もう結構です」


真面目に聞こうとした俺が馬鹿だった。


「まだ話のほうは終わっておりませんが?」

「お祓いに来たのに、なんで修行しないといけないのか教えてくれ」

「あなたがたるんでいるから呪いなどにかかるのです」


理屈が無茶苦茶ですよ、あんた。

そうなると、全国で何百万という人が呪いにかかっている事になりますが?

それに修行して呪いが解けるとは如何に?


「とりあえず、俺はどんな呪いにかかっているのか教えてもらえませんか?」

「女難の呪いです」


ルビアの言葉に周囲の人たちが頷く。

……それは本当に呪いなんでしょうか?


「そうよ! リョウ君はその呪いに間違いないわ!」

「待て、そんな呪いあるわけが……」

「住職さんの言葉に偽りがあると思ってるの? 亮介?」

「うん、間違いなく」

「神崎様、見苦しいですわよ? 素直に認めたらどうですか?」


執拗にルビアを肯定する3人。

むぅ……なぜここまで俺は3人に攻められなければならないんだ?

それに、なぜこの人たちはそんな呪いで納得しているのだろうか?


「それじゃあ修行を行いましょうか?」

「いやだと言ったら?」

「嫌でもYESと判断します」

「あんた無茶苦茶」


俺の拒否権を真っ向から否定する住職。

そしてジリジリとにじみよってくる。

このままでは俺の夏休みライフは山篭りでジ・エンドだ。

それだけは避けたいのだが、逃げ場の無い俺にはどうする事も出来ない。

一巻の終わりと思ったその時、お寺の奥の方からなにやら騒がしい声が聞こえてくる。

そして、突如大量のお坊さんがなだれ込んできた。


「いたぞ! あの金髪女だ!」

「あのやろう! イキナリ人をグルグル巻きにしやがって」

「かんべんならねぇ! 更正してやる!」


ルビアに対してもの凄い殺気を放つお坊さん達。

どうやら、ここの本当のお坊さん達らしい。


「ふぅ、どうやらここまでですか」


そういうと、突風の如く寺から去っていくルビア。

それを追いかけるお坊さん達。

だが奴が捕まる事は多分無いのであろう。


「えっと……どういうことなの?」


突然の出来事にその場から動けない3人。

まぁ言える事は、俺のお祓いは無効になってしまったという事だ。

俺はホッと胸を撫で下ろしたのだった。


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