第五話
たまたま見かけた本に書いてあったことが
シェイルにほとんど一致し、あせるたかし。
こうしてはいられない、と次の「3つのやること」を探すことに――――
僕はその本を本棚に持って行った。
片づけた、というよりは隠した、と言ったほうがいいだろう。
僕はあの手紙に書いてあった場所にいくために色々と考えた。
「男女・・・壁・・・閉ざされた・・・」
しかし簡単にぱっと出るような答えじゃなさそうだった。
シェイルに力を借りるか――――
いや、そんなことしたら疑われてもおかしくない――――
自力で解くしかないのか・・・
いや、僕にはまだ頼れる存在がいた。
そう、「妖精」である。
「妖精さんいるかー?ちょっと手伝ってほしいんだけど~・・・」
「いないのかー?」
「おーい、おーい・・・」
どれだけ呼んでもこういう肝心な時に出てこない。
「なに独り言言ってるんだ~?」
「!?」
シェイルだ、いつの間に帰っていたんだろうか。
僕がうろうろしながら誰かを呼んでたので、不思議に思ったらしい。
ええい、こうなったらやけだ。
「シェイル!突然だけどクイズを出すよ!」
僕はとっさに問題形式にして問うようにした。
「い、いきなりなんだよ・・・」
そりゃいきなりこんなこと聞いたら誰でも固まる。
気を取り直して僕はシェイルに問う。
「男女が壁で閉ざされている部屋って、ど~こだ?」
シェイルはその場に座って考えた。
「意図は分からないけど、なかなか難しい問題だね・・・」
僕もシェイルと一緒に考えることにした。
しかしいくら考えても思いつかない。
部屋といったら子供部屋、寝室、リビングなどなど色々あるが、
どれも男女が壁に閉ざされているわけではない。
そもそもどうして男女なのか。そこがさらに分からない。
もうしらみつぶしに探すしかないのか。
「――――トイレ。」
シェイルが立ち上がり、すたすたと歩く。
「ちょっとトイレ行ってくるね。」
シェイルはひとことそう言うとトイレに駆け込んだ。
「トイレか・・・なんだ・・・」
僕は答えが分かったかと思ったので落胆した。
何でこんな時にトイレに・・・。
ん?・・・・トイレ?
トイレで思い出したが、そういやトイレは男女が分かれていて、
別々になっていて・・・「壁に閉ざされていて」・・・
ふと思った僕はトイレに向かった。
僕は見上げてトイレの看板を見た。
――――やっぱりだ。
トイレの看板は、男と思わしきシルエットと女と思わしきシルエット。
そして、「間にある壁のような縦の棒線」。
これが紙に書いてあった「男女が壁に閉ざされている部屋」だったのだ。
「やっと見つけ・・・へぶっ!?」
ドアの前に立っていた僕は、シェイルがトイレから出てきたとき
ドアに激突してしまったのだ。
「あ、ごめんよ。んで、答えは何だったの?」
僕は側頭部をひりひりさせながら、
「君の答えが正解だよ・・・」と言い放った。
僕は紙に書いてあった通り、トイレの隣の部屋に向かった。
テーブルと、いすと、ガラスケース。
そのガラスケースの中に日記は入っていた。
シェイルはこれから昼の用意をすると言って部屋を出た。
早速日記を開く。
ボフンッ!!
「ぶはっ・・・!!助かった・・・」
日記を開けるといきなりあの妖精が出てきた。
「妖精!?なぜここに・・・?」
僕はキョトンとしてしまった。
「話が長くなりそうだから、簡単に説明するよ・・・」
妖精はゼーゼーハーハーしながら説明した。
どうやら、この前僕が寝てしまったのは
シェイルが睡眠薬を入れたからなのだという。
そして彼は突然僕の身体に呪文を詠み始めたそうな。
しかし熟練者ではない彼はその呪文に失敗する。
そのかわり、近くで心配していた「妖精」が術にはまってしまう。
妖精はその術が何なのか分からなかった。
しかし、夜が明けていくにつれ、妖精自身の身体がどんどんなくなっていくことに気付いた。
そして気が付かぬうちに妖精はこの日記に
「封印」されてしまったのだという。
え、分からないから三行で!?
シェイルが僕を眠らせ呪術を試みる。
失敗したあげく、よりによって妖精にかかってしまった。
妖精は時間が経つにつれ消えていき、気が付いたらあの日記に封印された。
「というわけで・・・日記を見ようよ。」
「ここに最後のやることが書いてあるんだね?」
妖精はうなずく。さらに付け加える。
「そこが脱出場所だよ。だからそれが終わることが脱出につながるんだ。」
僕はうなずく。
妖精はちょっと悲しい顔をした。
「いつ、脱出するのさ。」
僕は「解き次第すぐにでも。」と言い放つ。
「君自身はどうなってもいいんだね?」妖精は周りを飛びながら諭す。
正直、僕は今のこの状況で究極の決断を迫られていた。
僕が生き残るために友達を捨ててすぐに脱出するか、
僕の運命である「どうなるか分からない」に賭けて時を待つか――――
最後のほうでついに「運命」を信じようとする考えが生まれました。
しかしそれは、最初に考えていた運命に逆らう気持ちが揺らいだのと同じです。
ここでますますたかしは自分を追い詰めていきます。