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パパラッチはぶっちゃけない  作者: 設楽 素敵
第三話 伝説! 君が来てくれることを信じて
21/22

10

 目を覚ますと、薄ら明るい早朝の森が広がっていた。

「寒っ!」

 何かを考えるよりもまず寒さに凍え、花沢は自分を抱き締めるように身を縮める。

 戻ってきた。

 黒ジャージのポケットには財布があり、足元にはセグウェイが倒れている。

「……つーか、時間経過するんだな」

 当初来たときはまだ夕方で、今は大体朝の四時とか五時だろうか。セグウェイが錆びていたり、服が劣化してひどい有様になっていないことからして、浦島太郎的な大幅な時間の経過はないようだ。ひとまずは一安心できる。

 すっと立ち上がって汚れたチノパンを払っていると、財布が地面に落ちた。ペタッという軽い音がして、花沢はん? と首を傾げた。

「こんなに軽かったっけ?」

 地面に落ちた財布を持ち上げて上下させてみる。軽い。明らかに中身が少なくなっているような気がする。

元から持ち歩いていた金額が少なかったものの、硬貨同士がぶつかる音があんまりしないのはどう考えてもおかしい。

恐る恐る小銭を入れるポケットを見てみると、やはり減っていた。千円近く入っていたのが、二、三百円程度にまで減っている。

被害額は少額かもしれないが、ここで問題視すべきなのは使った金額がゲームの中で使ったのと同じくらいということである。

まさか、と思いながら財布を観察していると、ひらりと紙幣を入れるポケットから一枚のレシートが舞いながら落ちてきた。

「こ、これは!」

 あのゲームの中の世界で利用したコンビニのレシート。買ったものも見事にリンクしていた。

「あっちで使った分、リアルで支払われるってことか……?」

 忌々しくレシートを見つめていると、裏の文字が透けて見えた。眉間にしわを寄せてひっくり返すと、そこには女子らしい丸みを帯びた文字でこう書かれていた。

『課金分の七百七円、確かに徴収しましたポン』

「それくらいそっちが負担しろよ!」

 誰にも届かない文句を叫んでから花沢は意気消沈したように少し軽くなった財布を携えて、セグウェイに乗って帰っていった――また、それと同時に。

「……ご利用いただき、ありがとうございましたポン」

木の裏側に隠れていた一匹の獣も森の奥へと消えていった。


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