愛すべき問題又は列車で逃げ出す僕。
今日、僕は友人の家から帰るのに、千五百六十円の切符を買った。
家に帰るのに必要なのは五百三十円。
時刻は二十二時。
Q,以上をふまえて、なぜ約三倍もする切符を買ったのか?
A,知らないところに行きたかったから。
簡単な理由。
一種の現実逃避。
そうさ、ただ単に逃げ出したくなったんだ。
僕を取り巻く責任という亜鉛色のプールを泳ぐことに疲れたんだ。
券売機から出てきた切符は、お金を表す数字が違うだけで全くいつもと同じ様に感じた。でも、手に持った瞬間にこれは
「負け犬の切符」
であると感じ、僕を安心させ、又興奮させる。
透明な薄い膜を破るように改札を通りぬけたら、ちょうど普通列車が止まっていた。
でも焦る必要も感じなかったし、僕は乗らなかった。
プラットホームには僕以外には一人もいなくなった。
時刻表を見に行くと、次の列車まで十五分ほど時間があったので、所々塗装がはげ少し汚いベンチに座り、煙草に火をつけ先ほどまでいた町を別に興味はないが見ていた。
看板。商店街。コンビニ。タクシー。住宅。バスロータリーの真ん中に座っている黒い犬が僕に吠えている気がした。
とても小さく吠えるので、注意して聞こうと意識を集中させた。
「切符。みして下さい。」
確かにそう聞こえた。僕はポケットの中から切符を出して、犬の方に向けた。
「表じゃなくて、裏です。
裏をみして下さい。」
いわれたとうりに裏を見せた。
「はい。大丈夫ですねそれでは次の列車にお乗り下さい。」
吠え終わるとほぼ同時に列車が僕のホームに止まった。
終点の場所も載っていないその列車には、ほぼ満員の人が載っていた。
だから僕は興奮して列車に乗った。
Q,以上のことをふまえて答えなさい。この列車はどこに行くでしょう?
A,亜鉛色のプールが無くて、誰もが一度は望む場所で、でも絶望が待ってる。それともあれは希望なのか?
でも僕が望む場所。
簡単な理由。
すべての言葉に含まれる現実。