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雷鳴の巨像、雲海の試練

 三つの鍵を手に入れたサルベージ・ワンは、重力波の乱れを突き進み、巨大なガス惑星「ジュピター・プライム」の衛星軌道へと到達した。目の前に広がるのは、終わりなき雷雲の海である。第四の鍵は、この分厚い雲層の下、超高圧環境の中に隠された浮遊都市「ストーム・ヘイブン」に眠っている。


「視界が悪すぎる。アイリス、大気の摩擦で船体の温度が急上昇しているぞ! このままじゃ雲の下へ降りる前に溶けちまう!」


 カイ・レンは、真っ赤に加熱された計器板を睨みつけながら、必死に操縦桿を抑え込んだ。周囲では、数十キロメートルにも及ぶ巨大な放電現象が、龍のように空を駆け巡っている。一撃でも直撃すれば、船の電子機器は一瞬で焼き切れるだろう。


『マスター、全エネルギーを前方シールドに集中させてください。雷撃のエネルギーを逆に吸収し、推進力に転換するパスを構築しました。私の演算速度を最大まで引き上げます。一瞬の判断ミスも許されません』


 アイリスの姿は、周囲の電磁波の影響を受けて激しく波打っていた。しかし、その瞳には強い意志の光が宿っている。彼女は船のセンサーを拡張し、カイの脳に直接、乱気流の先にある安全な航路を投影した。


 突如、雲の中から巨大な影が浮上した。それは先遣者が残した自動防衛システム、全長数キロメートルに及ぶ天空の巨像「レヴァイアサン」だった。その巨体から放たれるのは、星の核を揺るがすほどの超高周波の咆哮。それは音波ではなく、精神を直接破壊する情報の圧力だった。


「あいつが番人か……。アイリス、あんな化け物をどうやって突破する!」


『正攻法では不可能です。ですが、あの巨像の動力源は第四の鍵そのものです。マスター、私の意識を一時的に船から切り離し、あの巨像の制御中枢へ直接ダイブします。その間、船は手動操縦になります。三十秒間、持ちこたえてください』


「無茶だ! アイリス、戻ってこれなくなるぞ!」


『私を信じて。あなたは、私のマスターですから』


 アイリスのホログラムが消滅すると同時に、船内は静寂に包まれた。カイは歯を食いしばり、巨大な巨像が振り下ろす雷の腕を間一髪で回避した。船体は悲鳴を上げ、火花が飛び散る。一秒が永遠のように長く感じられる中、カイはアイリスの名前を叫び続けた。


 その時、レヴァイアサンの動きがピタリと止まった。全身を覆っていた稲妻が青から金へと色を変え、巨像の胸部が静かに開き始めた。中から溢れ出したのは、雷そのものを物質化したような、激しく明滅する第四の鍵「サンダー・コア」だった。


『……今です……回収を!』


 アイリスの声が、通信機のノイズの中から微かに聞こえた。カイはマニュピレーターを最大速度で射出し、輝くコアを掴み取った。コアが船内に収容された瞬間、巨大なレヴァイアサンは雲の中に沈み込むように崩壊し、嵐は嘘のように静まり返った。


 アイリスのホログラムが、力なく操縦席の隣に戻ってきた。彼女の髪は白く輝き、その存在感は以前よりも透明に近くなっていた。


「アイリス! 大丈夫か?」


『……データの深層部が一部損壊しましたが……主要機能は無事です。これで、四つ。残る鍵はあと一つ……宇宙の中心、イベント・ホライゾンの向こう側です』


 カイは、手に入れたばかりの熱いコアを見つめた。四つの鍵が船内で共鳴し、奇妙な歌を奏でている。それは救済の歌か、それとも破滅へのカウントダウンか。カイは震える指で、最後の座標を入力した。


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