2.
「ただいま~」
「おかえり、おなかすいただろ」
「うん、お腹ぺこぺこ~。この油の匂いはまさか……?」
「あんバターサンド作ってるからね。先に着替えといで」
「やったー! おばあちゃんのあんバターサンド大好き!」
部活でへとへとになったのも忘れて、ダッシュで制服を着替えてキッチンへ向かった。
「あー、いい匂い」
キッチンは油の匂いが充満していた。食パンのこんがりした様子が食欲をそそる。
「ほぉら、お食べ」
おばあちゃんはお皿に盛られたあんバターサンドを、ことんと私の前に置いた。
「おいしそう! いただきます!」
油から上げたばかりのアツアツの出来立ては持つのが大変だけど、そんなことよりも早くかぶりつきたい。
がぶりとかじれば、ザクッと気持ちのいい歯触りと同時にじゅわっと溶け出る油とバター、遅れてやってくる灼熱のあんこが口の中をめちゃくちゃに熱くしていく。
「あつっ」
二口、三口と食べる手は止まらない。甘くてしょっぱいヘビー級のおいしさは、部活帰りでへとへとの私をみるみる元気にしていく。
「部活は楽しいかい?」
「うん、練習はキツいけど楽しいよ」
「そうかいそうかい」
「あとね、男バスにすごく優しい先輩がいてさ、いつも女バスの私達一年生を励ましてくれるんだ。しかもめっちゃかっこいいの」
「それじゃあなおさら部活が楽しいねえ」
「うん。……でもダイエットとかした方が良いかな?」
そう言いながらも、二個目のあんバターサンドに手を伸ばす私。ごくんと飲み込んだ一個目最後の一口は、じんわりと私の胃袋の中へ落ちて行った。
「何言ってんだい。中学生なんて、まだまだ成長期なんだから気にしなくていいんだよ」
「そうかなぁ」
「そうだよ。うんと食べて、うんと勉強して、うんと運動してるんだろう? それなら大丈夫だよ」
「うん、わかった」
おばあちゃんはにこにこしながら、私があんバターサンドを食べていく姿を眺めている。私には牛乳を注いでくれて、自分はお茶をのんびりすすってにこにこしている。
「ねえ、も一個食べてもいいかな?」
「お夕飯、食べられるかい?」
「うん、食べられる」
「それじゃあ、お食べ」
そうやって取り分けてくれるのがうれしかった。
ダイエットのことが頭の隅をかすめたけど、それはまた今度ってことにしよう。
「おいしい!」
がぶりとかじった一口目は、やっぱりとっても美味しかった。