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1.

「ただいまぁ」


「おかえり。手洗っといで、おやつがあるからね」


 あきこちゃんとけんかしていやな気持ちでいっぱい。だけどおばあちゃんから『おやつがあるよ』っていわれたから、ちょっとだけ気持ちがうきうきになる。


「もうすぐできるからね」


 台所にいくと、おばあちゃんはまっ白のかっぽう着をすっぽりとかぶっていて、大きなちゅうかなべでなにかを作っているところだった。じゅわじゅわという音とにおいが、おなかをぐぅーっとならした。


「それ、なあに?」


「あんバターサンドだよ」


 おばあちゃんの後ろからそおっとのぞきこむと、たっぷりの油の中に三角になった食パンがういていた。それをさいばしでくるりと引っくり返すと、こんがりときつね色になった食パンに早がわりした。


「おいしそうだね」


「おいしいよ」


 おばあちゃんはこんがりとしたあんバターサンドをさいばしで持ち上げて、キッチンペーパーをしいたバットの上に乗せた。食パンの表面をぶくぶくさせていた油は、すぐにキッチンペーパーにすい取られて、見えなくなった。


「ほぉら、お食べ」


 ことんと机の上におかれたあんバターサンドは、顔を近づけるとあつあつのねっ気と油のにおいにまじってあまくていいにおいがした。


「熱いから気をつけるんだよ」


「いただきます」


 そっと持つとあつあつのねつがわたしのゆびをやけどさせようとしてるみたいだった。


「あち、あちっ」


 ふうふうしながら一口かじると、口の中もあつあつになった。


 じゅわっとした油と、ザクザクしたパンの耳と、あっつあつになったあんこと、あんこにしみたバターが口の中ではふはふとダンスをおどっているみたいだ。


「おいしいね」


 おばあちゃんがコップについでくれた牛にゅうを飲むと、さっきまでのあつあつがきれいになくなってとてもおいしい。


「そうかい、それはよかったよ」


 あまくてあつくておいしいな。


 ザクザクといっしょうけんめい食べていると、さっきあきこちゃんとけんかしたのがなんだか悲しくなってきた。


「おばあちゃん、あのね」


 半分くらい食べたあんバターサンドをお皿の上において話した。


「今日ね、あきこちゃんとけんかしちゃったの」


「あら、そうだったのかい」


「きらいっていっちゃった」


 明日、あきこちゃんと遊べないのはいやだった。


「ごめんねっていったら、ゆるしてくれるかな」


「そうだね。あきこちゃんと友達でいたいなら仲直りしなくちゃね」


「うん」


「大丈夫だよ。友達なんだから、けんかすることだってあるさ」


「そうかな」


「そうさ。きっとあきこちゃんも、仲直りしたいって思ってくれてるよ」


「……うん」


 あんバターサンドをかじると、まだあつあつで、あまくてしょっぱくて、元気がたまっていくみたいだった。

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