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虚無の王  作者: 上月海斗
第一章 『終焉』と異世界
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種族と世界情勢

いつも読んで下さりありがとうございます。

「まずはこれをみて」


 広い空間に木霊する声。


 ホワイトボードに張られた一枚の図式をエルノアが指さす。エルノアが仕事を振り分けた後、二人は勉強の場所を会議室へと移し、只今絶賛お勉強中なのだ。最初、翔流はこの世界の文字が読めるのか不安に陥ったが最初にもらったカードリッジの効果によりそれは杞憂に終わっていた。


「この世界には大きく分けて四つの種族がいるっていうのはハルから聞いてるわよね」

「ああ。神族、魔族、龍族、禍族だよな。神素を身体に宿したのが神族で、魔素を身体に宿したのが魔族。そしてその両方を持っているのが龍族と禍族なんだよな」

「そう、その通り。でもね、正確にいえばこの世界に存在する種族は実は五種類なの。神族って言うのは元々神素をもった二つの種族から構成されているの。その二つの種族と言うのは精霊とマトレ族。この二つの種族はお互いに足りない物を共有し合い発展してきた。精霊は術を、マトレ族は文明を。だから、一口に神族とっても二つの種族をさす事になるのよ」

「へえ」


 言われた事をノートにメモしていく翔流。


「神族は見た目こそは変わらないけど、精霊とマトレ族には大きな違いがあるの。精霊はマトレ族に比べて長寿なのよ。マトレ族の寿命が八十年だったとして、精霊はその三十倍は生きるわ」

「三十倍……二四〇〇年かよ」


 想像もできない年数だ。


「ちなみにアレスは精霊王と呼ばれいて、精霊を統べる家計に生まれたの。だからアレスも、長寿で今年六五〇歳になるわ」

「へえ。じゃあ、ハルは? あいつも精霊なのか?」 

「いえ、ハルはマトレ族と精霊の掛け合わせよ。残念な事に彼は長寿にならなかったの。その代わり、この世界で一番神素を多く持つ存在になったわ」

「へえ」


 スラスラとペンを走らせていく翔流。とりあえず幼馴染は普通の寿命だったらしい。


「詳しい話はハル本人に聞いてみなさい。きっと教えてくれるから。次に魔族の説明ね。魔族はその名の通り魔素を身体に宿している種族ね。翔流君も今は魔族の扱いになるわ。魔族はその身体の一部がマトレ族や精霊とは違うの」

「うん。それは何となくわかる」


 カーンを見てもそれは分かる事だった。あの岩の様な手先と耳。あれは明らかに人とは違う。


「千芹ちゃんは多分あっちの世界で生まれたから変異しなかったのね。でも、しっかり魔王としての証を持って生まれた。この世界では紅い髪と紅い眼を持った人間は魔王と守護兵しか居なかったのよ。つまり、この世界で紅い髪と紅い眼を持ってるのは、翔流君と千芹ちゃんの二人だけって事になるわ」

「……だからか」


 自分の正体を明かした訳でもないのに全員が翔流の事を魔族と認識していた。翔流はそれが不思議でしょうがなかったのである。


「魔族の寿命はせいぜい四〇〇年ね程度。マトレ族よりは全然長寿だけどね」

「……あ、そんなんだ」

「ええ。だけど千芹ちゃんは別格じゃないかしら?」

「え?」

「魔族の寿命は身体の魔素によって変わるの。魔素が多ければ多いほど身体の細胞が活性化されて長寿になるはずよ。正直どのくらい生きるかなんて想像もつかないわね」

「じゃあ、俺も死ななければ相当長生きだった?」

「う~ん、それはなんとも言えないわね。翔流君はカーンが来なければ覚醒しなかったわけだし」

「……なるほどね」

「でも、安心していいわよ。龍族も相当長生きだから」

「え?」 

「龍族の寿命は平均で一〇〇〇歳は生きるわ」

「一〇〇〇歳って。じゃあ、エルノアさん今いくつなの?」


 自分の寿命にかかわってくる事なのだ。自然と言葉が強くなる。


「あんまりレディに向ける会話じゃないわね。でもいいわ、私は一九二歳よ」

「……一九二歳って若いのか?」

「う~ん、私の年齢をマトレ族で置き換えれば一九歳ぐらいよ。彼らの一歳が私達の一〇歳と同じ感覚だから」


 長生きにもほどがあると突っ込みたいところだが、突っ込んだところでその寿命が変わるわけでもないので止めておく。


「じゃあ、その流れで龍族の説明をしてあげる。まず、龍族の特徴はこの角かしら」


 エルノアはそう言って自分の頭の角を指差した。


「私達の祖先は龍だったと言われているの。この角がその名残だと言われているわ。そして膨大な魔素と神素を身体に持つオリジナルの種族が私達龍族よ」

「オリジナルって、禍族も神素と魔力を持ってるんじゃないのか?」

「あ~。じゃあ、禍族の説明も一緒にしてしまいましょう。禍族と言うのはね、マトレ族によって作られた種族なの」

「作られた種族?」

「多分そっちの世界にもあったんじゃないかしら。クローン技術よ」

「クローン?」 

「ええ。禍族とは龍族をベースにマトレ族が作り出したクローンが自立し作り上げた種族よ。名前の由来は禍人まがつびとから来てるって言われているわね」

「へえ」

「彼らは私達龍族に比べて、寿命も持っている魔素、神素の量も少ないのよ。よく言えばハイブリット、悪く言えば中途半端な種族ね」

「なるほどね」

「まあ、種族についてはこんな感じかしらね」


 エルノアはそう言って次に一枚の地図をホワイトボードに張り付けた。


「それを踏まえた上で次は地理ね。これから翔流君にはいろいろ学んでもらうけど、まずはイグニリアスがどんな所なのかを学んでもらうわ」

「はあ」

「まず、イグニリアスには四つの大陸と、十の国で構成されているの」


 地図を指差し説明していくエルノア。


「その世界を構成している大陸はルード大陸、ルカン大陸、ネノレ大陸、キドウ大陸の四つよ。アズラベルがあるのはこのルカン大陸ね」


 そう言ってエルノアは一番大きな菱形の大陸を指差した。


「このルカン大陸には、四つの国が存在しているの。私達が今いるアズラベル国。千芹ちゃんがいるダーゼルム国、私の故郷のテイル国、禍族の住むビグラーツ国の四つね。ルード大陸にはレンミア国とフェルゼ国の二国。ネノレ大陸にはレルガーソ国とフィリッツ国、それとマキニア国の三国。キドウ大陸はキドウ国の一国で成り立っているの」

「……はあ」

「めんどくさいと思うかもしれないけど、この世界で生きていく上で必要最低限の知識よ」


 確かにその通りである。見知らぬ土地でまず一番欲しいものと言えばその土地の知識だ。ただハルに任せておけばいいという話でもないのだ。自分でも出来る限りの事はしたい、その為にはまず、必要最低限の知識は絶対なのだ。


「まずは、私達が居るルカン大陸から説明しましょうか。いま私達がいるアズラベル国領土。それはここからここまで」


 そう言って地図を青いペンで塗っていく。菱形の上の部分が青に染まる。菱形の中にいびつな円錐の形が出来上がった。


「アズラベルはこの大陸で一番大きな国でね。ルカン大陸の五分の二が領土なの」


 そして残った部分を赤と黄と緑で塗りつぶしていく。菱形の下の部分から円錐のちょうど中心で針の様に位置する赤い領土。緑と黄の領土がその針が他の領土を囲むように記されていく。


「赤がダーゼルム国。黄がテイル国。緑がビグラーツ国の領土ね」

「へえ」


 こう見るとアズラベルと言う国は本当に大きい。戦争も優勢に進めているのと言うのもわかる気がする。


「それで、その領土内にそれぞれ街があるって感じね。ちなみに、私達がいるアズラベルの首都クーラルはここね」


 円錐のちょうど真ん中あたりに打たれた点。その点はどの国からも均等に離れていた。


「このクーラルはアズラベル全軍の司令塔と考えてもいいわね。だからどの国からも攻撃しにくい中心に作られているの」

「へぇ」

「どう? ちょっとは理解できた?」

「なんとなくは」


 少なくとも自分がどこにいて、何処を目指すかぐらいは理解できる。


「じゃあ、次は他の大陸についての説明ね。他の大陸はどの大陸もルカン大陸よりも小さく、種族ごとに分かれているのが特徴ね。ルード大陸にあるレンミア国とフェルゼ国は神族。そして、この二国はアズラベルと同盟を結んでいるわ。次にネノレ大陸のレルガーソ国とフィリッツ国、マキニア国は魔族。この三国はダーゼルムと同盟を結んでいるわ。最後にキドウ大陸にあるキドウ国は禍族の領地となっているわ。まあ、この国に関しては完全独立国家で内外の情報もシャットアウトって言う国だから、翔流君が係わる事はないでしょうね。まあ、地理と情勢に関してはこんなものかしら。っとそろそろお昼ね。何か質問はある?」

「ああ、あると言えばある」

「なにかしら」

「さっき同盟国の話をしたけど、他の大陸の同盟国はどうしているんだ? その国も加勢しているのか?」


 ふとした疑問だった。元々は神族と魔族の戦争なのだ。他の国だって戦争していてもおかしくない。


「いいえ。同じ種族で同盟こそ組んでいるものの、他の大陸にある国は戦争には参加していないわ」

「同じ種族か戦っているのに? なんで?」

「簡単よ。誰が好き好んで戦争に参加するのかしら? 同盟こそ結ぶものの基本他の国は、傍観者よ。だから今戦っているのは純粋にアズラベルとダーゼルムって事になるわ」

「ふぅん。なんか素っ気ねぇのな。同じ種族なのに」

「どの国も自分の国を防衛する事に必死なのよ。それにね、この世界には危険指定生物の存在もあるわ」

「危険指定生物?」

「神獣と魔獣の存在ね。一言で言ってしまえば有害モンスターよ」

「マジかよ」

「そいつらを駆除するのに冒険者なんて職業もあるぐらいよ。まあ、大体の国は駆除にも軍隊を使う事が多いけどね」

「なるほどね。確かにそんなのがいるんじゃ、おいそれと軍なんて支援できねぇわな」

「そういう事。さて、他に聞きたい事は?」

「特には」

「そう。じゃあ、食堂に行きましょうか。案内してあげるわ」

「了解」 


 立ち上がるのと同時に軽く身体を伸ばす。


「さあ、行きましょう」

「はいはい」


 会議室を後にする二人。この国の事、種族の事、その他にも覚える事がたくさんありそうだ。翔流はエルノアに気づかれない様に溜息をそっと漏らした。


いつも読んで下さり、ありがとうございます。

感想、御意見、誤字脱字報告など、ありましたらご一報いただけるとありがたいです。


それと私事で大変申し訳ないのですがアップをする前に一度文章の確認等を入れたいのでいつもは正午にアップしていましたが、次回からは午後六時とさせていただきます。


次回は四月十五日、午後六時にアップします

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