11月5日:休暇終わりは手が足りぬ
首都アイロネ、ヴェタス軍中央本部
休暇を終えたラセルは、荷物を片付け廊下を歩いていた
「よっ!」
バシン!
後ろを向く、そこには自分の上官兼軍学校時代の先輩が立っていた
「痛っ……だから後ろから叩くのはやめてくださいよリヒデン中佐!」
「ハッハッハ! 許せ許せ! シドア戦線以来か? ラセル中……いや今は大尉か!」
「全くもう……休暇明けそうそう騒がしいですね中佐」
「いやぁみんな休暇で帰っちまったから流石に寂しくてな! ダンテもセネアのやつもいない中やる事務処理は退屈でよぉ……」
そう肩を落とし、オールバックの後ろ髪を掻きながら話を続けていたリヒデンは、突如手を止め真剣な眼差しになり
「んでまぁそれはそれとして……本題に入ろう」
「なにかあったんです?」
「ああ、戦争終わりだってのに各地で事件が多発してる」
「……例えばどのような?」
「ラメル地域でボヤ含む火事が29件、シリロン周辺で8〜18歳の児童32人程が行方不明、ここアイロネでは軍関係者の不審死が8人だ」
「えっ」
「お前も街を歩く時は気をつけとけ、不審死した奴ら全員一人で路地裏に倒れてたらしいからな」
「いやちょっと待ってください!? そんなこと今日の朝刊にも書いてませんでしたよ!?」
「危機感煽らんように上が情報統制してんだよ、休んでたやつ以外はみんな知ってる」
「はぁ……」
「そうだ、ダンテにも伝えに行くんだが見てないか? アイツもお前と一緒で今日で戻ってくるだろ」
「クスト中佐なら先程荷物をもって自室に戻るの見ましたよ、おそらく着いたばかりかと」
「おっ、サンキュー! んじゃさっきの件、他の休暇取ってた奴らにも伝えといてくれ」
そう言い残し、リヒデンは立ち去って言った
「……まぁとりあえず休暇取ってた人がだれか確認を……ってさっきの話してから1人にしないでくださいよ中佐!」
………
……
…
部屋に荷物を置いて出た矢先、よく見なれた顔が通路に居た
「おっいたいた、よぉダンテ!」
「トークルか」
「いやー寂しかったぜぇ、お前もセネアのやつも里帰りしてるから……」
「……どうした?」
「……それはこっちのセリフだ、何があった?」
「なにって?」
「とぼけんな、お前今俺が里帰りった瞬間唇噛んだろ」
「……」
「なぁ、何があった。もしかしてお前んとこでもなんか事件が……」
事件
心臓が、大きく音を鳴らす、浮かんだのはあの……
「ハッ……ハァッ……」
「おい! どうした!」
「父…さん……母さん……ミリ…ア……」
「クソっ! 水球!」
左手から水の玉を作り、そしてそれを顔に投げる
「がほっ」
冷たい水が顔で弾けて、急速に現実に戻される
「ダンテ、落ち着いたか」
「ああ……すまん」
「大丈夫だ、俺も流石に気遣いが足らなかった」
少し間を空けて、呼吸と心を落ち着かせて、話すことにした
「……家が、襲われた」