10月29日:青緑の景色
首都アイロネから7つ程、イテル村最寄、ナバル駅
あの後ジャック犯を全員捕縛した2人はそのまま進路に沿い、次の駅でありダンテの目的地でもあったナバル駅に到着した
「本当にいいのか?トレインジャックの件を全て丸投げして」
「このままアイロネかアトリアまで行くとなると同じ時間がかかってしまいます、そうしたらクスト中佐の休みが潰れてしまうじゃないですか」
「だがまぁ仕方ないだろう…」
「だから自分が受け持つんです、そもそもアトリアが目的地ですし、今朝の休暇届の借りがあります」
「しかし…」
「大丈夫です!何より中佐は軍学校に入って以降家には戻っていないと聞きました」
「誰から聞いたその情報!?」
「リヒデン中佐です」
軍学校のときから忘れられないアイツのサムズアップが頭に浮かぶ
「トークルの野郎…はぁ…わかったよ、納得する」
「ありがとうございます、クスト中佐」
そう言うとラセル大尉は列車に乗り込み
「それでは中佐、よい休暇を!」
「ああ、よい休暇を、大尉」
そして列車は走り出して行った
………
……
…
「しかし…本当に久しぶりだな…」
一面に広がる青緑の景色、草木の生い茂った草原
紛れもなく懐かしきイテル村へ続く長い道である
そんな道を、1人静かに歩いていく
「…ミリアは元気にしてるかな」
ふと、一人の少女を思い浮かべる、今となっては成長して大人びた頃であろう自分と1歳違いの少女を
「あいつ俺が軍学校行くって行ったら反対してたからなぁ…父さんや母さんは反対だろうとは思ってたけどアイツに反対されたのはちょっと意外だった…」
…浮かぶのは、泣きながら送り出された6年前の記憶
「絶対に帰ってきてね!絶対に…」
「分かってるよ!みんなを守るためにも、みんなを悲しませないためにも俺、絶対生き残って帰ってくるから!」
「約束だよ…」
「ああ、約束だ」
…元気だといいなぁ
程なくして、村は見えてきた
もう収穫時期も終わって、少し活気が見える
「おう!?ダンテ……か!?」
「あ、お久しぶりです、酒場のおじさん」
「帰ってきてたのかぁ!おっきくなったなぁ!」
「ははは、実は今着いたばかりでして」
「おおそうか、止めて悪かったな!早いとこ、親父さん達に顔見せてきな!」
「はい!あそうだ、もうお酒も飲めるようになったんで、また今度行きますね!」
「おっそうかお前さん今年で18歳か!んじゃまた今度来てくれや!」
俺の家は村の農作物を管理するため、少し村の外れにある
この丘を登れば見えてくるだろう