10月29日:出発の時
戦争終結から23日後
ヴェタス国 首都アイロネ
そこから東方面へ向かう駅の構内で、話す二人組の姿があった
「いやー助かりました!なにぶんしばらく休養など取っていなかったもので」
「大丈夫さ、たまたま君の帰省タイミングが私と同じと聞いてね、他人事とは思えなかったんだよ」
「本当にありがとうございます!私が申請書を適当に書いてしまっていたのが悪いのですが…」
「はは、戦争終わりだからな、少しの気の緩みは仕方ないさ」
「いえいえ…それにしても、貴殿も東の出身だったのですか?クスト中佐」
そう呼ばれた茶髪の軍人は少しもどかしそうな顔をして
「そうなんだよ、実はイテルの生まれでね」
「イテル…?」
「知らないのも無理はないさ、何せ酒場がひとつしかないほどの田舎だからね」
「そのようなところから…」
「君は東の一大都市、アトリアの出身だろう?せっかくの休暇だ、お互い存分に休むとしよう」
「はい!」
「今度は休暇届の不備を作らないためにもな?ラセル大尉」
「そこはもう突っつかないでくださいよクスト中佐!」
………
……
…
「ふぅ…」
こうゆっくりして汽車に揺られるのも何時ぶりだろうか、前乗ったのは戦争の帰りで人にもたれかかるように寝ていたからな…
ああそうか…初めて軍学校へ向かうために乗ったあのころの…
キャァァー!!!!!
突如列車に叫び声が響く
声の方を向くと直剣を構えて扉を塞ぐ大柄の男が4人と、人質になっている一人の女性が見える
「トレインジャックだ!全員立って手ェ上げろォ!」
右手をポケットに入れ、左手を上げつつ辺りを見渡す、どうやらラセルは別車両に居るようだ
まぁ彼なら大丈夫か…
「おいテメェ、何左手だけ上げてんだ、両の手ェ上げろや」
そういいながら、男が1人近づいてくる
「すみませんね、今右手は骨折してまして、上げようにも上げられないんですよ」
少し怒りを強めながら、男は剣を顔に向ける
「んな事知らねェんだよ、とっとと上げろ」
「そうは言ってもですね…」
「知らねェッてんだろうが!」
ついに激高して剣を振る男、狙いは首だ、案外冷静なのか手馴れているのか
「鉄又」
右腕から二又に別れた鉄が伸びる
「ガッ!?」
男は剣で鉄を思いっきり叩いた反動で剣を手放す
「テメェ何してやがる!」
残り3人のうち1人がこちらに走ってくる
右手は弾丸を握りしめながらポケットから出し、下げた左手には力を込めて…
「鉄銃」