11月6日:波、雷、握手
「「「なっ!?」」」
戦場ですらほとんど見なかった規模の水魔法が突然襲いかかってくる
「ダンテェ!」
「わかってる!鉄壁!」
手から鉄の壁を作り出し、大波と言える水を受け流す
「金属の魔法……やっぱりアンタが……!」
「待ってくれ!君は何か勘違いを……」
「うるさい!」
そう叫びながら少女は俊敏な動きで鉄壁の左側面へ回り込む、その手には小さな木の棒……
「不味い……!」
魔法は自身の体から生み出す、ただし自分が身につけている服や剣などの持ち物を自分の体として見ることでそこから魔法を生み出すこともできる、つまり……!
「イカズチ!!!」
「岩球!」
少女が放出した雷をトークルの土魔法が受け止める
そして雷が止まると同時に木の棒は耐えきれず崩壊する
「あんまり土魔法は適性高くないんだが……何とかなったな」
「助かったトークル!」
「まだよ!」
そういいながら少女は手の平をこちらへ向ける
「まて!そのまま雷魔法を打てばその衝撃も君に入る!」
「里のみんなはもういない……私は!もう!死んだっていいのよ!」
トークルがその発言を聞くと同時に進み出す
「貴方はこっちにこないでよ!貴方には関係ないから!」
「……」
「だ、黙ってないで止まりなさいよ!や、やだ、こないで!」
黙りながら向かってくるトークルに怯んだ少女は少し後ずさり、体制を崩しかける、そして……
「え……?」
こちらに向けていた手の平を優しく握る
「これで、雷魔法は打てないな?」
「な、なんで……」
「落ち着いたか?」
「なんでアイツを庇うの!アイツは!里を襲ったやつなのに!」
少女の憎悪の籠った悲痛な叫びが響く
「……そうか、襲われたのは何時だ?」
「え……?え、えーっと……1週間とちょっと前……?」
「そうか……おーいダンテ、確かそんぐらいの時ってお前残業祭りだったよな!」
「1週間前ぐらいならお前と資料にらめっこしてたろ、終わったら俺が帰るのが恨めしいって酒持って来て吐きまくってた!」
「だよな!……って訳でアイツは確実に違う、俺が保証する」
「ほ、ほんとに違う……?」
「ああ、アイツはそんなことしない、絶対にだ」
その言葉を聞くと少女は一気に気が抜けたのか、その場にへたり込みトークルに体を預けた