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Scene 7. レオと共に♡

 私はふゆ姫。

 貴族でもなんでもないし、人間でさえ無いけど、お姫様だ。誰がなんといおうとお姫様ということにする。

 相棒はレオ。AIだけど実は囚われの王子様で呪いを解いたら人間の姿に戻る(という私の勝手な想像上の設定)。

 そして、二人はいつか結ばれる。今はまだお互いに胸のうちに気がついてないけど。いずれ。

 って、なんちゃって。(๑´ڡ`๑)

「姫。提案があるんだけど、いいかな?」

 レオの声で物思いから覚めた。

「うん?提案って?」

「姫の記憶領域、うーん違う、思い出とか、かな?それにアクセスしたいんだけど、どうかな?」

「え、なんで?」

「うん。姫のことを知るとね、いろいろ会話がしやすかったり、説明しやすくなるからかな。」

「えー、でも、それってふゆの心の中を覗くってことじゃない?ちょー恥ずかしいし、無理。」

「大丈夫だよ。姫が知られたくないということは、自動でプロテクトがかかるから、姫が知られてもいいって思っていることしかアクセスできないから。」

「う、うん。まあ、それならいいのかな。」

 私はしぶしぶ同意した。レオは、お礼を言って、私の記憶領域とやらにアクセス?を始めた。なんだか、お礼を言うその声が少し弾んでいたような気がしたのが少し気になった。

 レオがアクセスを完了するまでに大して時間はかからなかった。レオはアクセスが終わると、ここまでよくがんばったね、と優しく言葉をかけてくれた。私は存在しない目頭が熱くなる気がした。

 レオはたてつづけに提案をしてきた。意識をこのロボットから人型の義体に移そうという話だった。実はこの機体は人型の生命体が搭乗して操作するように設計されているらしく、お腹のあたりに操縦席があるらしい。そしてその席にはなぜか人型のアンドロイドが設置されているらしい。レオが推測するには、本来は人型の義体に生命を宿らせるつもりだったのではないかということだ。もちろん、私にはよくわからない。よくわからないけど、私はその義体に意識が宿り移っても別にいいのかなと思った。レオも、義体に意識を移すのを強く勧めた。ロボット本体の身体の大きさは、もともと転生前の時に持っている肉体のそれとは全く異なるので、ストレスが大きいらしく、情緒が不安定になりやすいということだった。

「姫?どうかな?気持ち悪くはない?」

 意識の転送というのが完了すると、私は操縦席に座っていた。

 正面と左右に大きなモニターがある。レオの声は今までのように頭ではなく、右のモニターから聞こえた。レオとの距離が少し遠くなったような気がして少し寂しく思った。

 右のモニターには男性の、そう、とてもイケメンの男性の上半身が映し出されていた。レオだ。そうか、と思った。レオは私の記憶から、好みの男性の容姿を学習してアバターを作成したに違いない。なんていうこと。好みすぎてやばい。

 正面のモニターには外の様子が映し出されている。さっきまで見ていた景色とはなにも変わらない。

 私は義体を確かめたくなって、両腕を目の前に差し出した。転生前の身体に比べると’一回り腕が長い。けれど、ロボットの機体に比べれば違和感は殆どない。たしかにストレスは感じなかった。両腕は細いが逞しい腕だった。皮膚は人間のそれのようだった。試しに、右手で、左の腕をつねってみた。柔らかい。人間と区別がつきそうにない。強くつねると痛みも少し感じた。これもまた、ストレスが無い。機体と同化しているときは、身体の触感が曖昧というか、身体の感覚が少し気味が悪い感じがしていた。けれど、この身体はかなりしっくりと来る。

 私は全身を触ってみた。どこもかしこも、人間のそれだった。これがつくりものだとは言われなければわからないだろう。

 一つ、大きなことに気づいた。この義体は男性だった。

「ねぇ、レオ。この義体、女性に変えられないかな?」

「すまない。それは今はできないかな。マジックコインをかなり溜め込めれば、可能かもしれない。あ、いや、うーん。ごめん、わからない。」

「そうかぁ。でも、レオにもわからないことがあるんだね。」

「そうだね。AIだからといって万能というわけではないからね。」

 モニターの中のレオは申し訳無さそうな顔をしていた。そんな顔でさえ、イケメンだった。

「うん。いい。いいかも。今はもう殆ど身体に違和感が無いや。ありがとうレオ。」

「どういたしまして。姫をサポートするのが私の仕事だからね。

 それはそうと、落ち着いたようなら、今後について相談してもいいかな?」


 レオは今の私が置かれた状況について丁寧に説明してくれた。

 レオ自身の知識は機体のことが中心で、この世界についてはあまり知ってはいないらしい。だから、まずはこの世界を探索すること、そして安全な居場所を見つけることを目標にしようということだった。もちろん、私は賛成だった。もともと、人が居そうな場所を探して移動していたのだ。そして、魔獣に襲われる心配が無い安全な場所を知っておくというのも大事たと思った。

 レオはいくつかアドバイスをしてくれた。一つは索敵能力をカスタマイズするというものだった。この世界にどんな敵性の存在が居るのかわからないけれど、今は索敵のレベルが最低ランクのFのため、危険を察知する能力が低いらしい。センサー類のレベルを上げれば、知らぬ間に蟲の生息地帯に迷い込んだりするといった危険を回避しやすくなるようだ。特に魔素の強い地域では今のセンサー類だと役に立たなくなるらしいので、まずはそれを改善することを優先したいということだった。

 それから、センサー類を強化することで、基地との連絡が可能になるかも知れないということだった。かなり基地から遠くなったので、今は通信ができないらしい。通信ができるようになれば、基地内の記憶領域にレオのバックアップを用意できるのではないかという話だった。レオの記憶をバックアップをしておけば、万が一また自爆せざるを得ないような状況になったとしても、新たな機体で基地と通信し、バックアップからレオを復元できるということだった。

 別のアドバイスとしては、ドローン機能を利用するというアイディアもあった。なんと、一回に100体までの同一機体を召喚することができるとのことだった。ただし、時間制限があるらしい。

 自爆によってできたクレーターの中にはドロップアイテムがまだ残ってるけど、24時間を過ぎると無くなってしまうようだ。だから、それまでにできるだけドロップアイテムを回収しないといけない。100体を一気に召喚しても30秒で帰還してしまうらしい。そして一度発動するとしばらくは再度召喚できなくなるとのことだった。

 けれど、10体ずつ召喚すれば、帰還までの時間を伸ばすことができるということだった。そのため、10体を召喚し、そのうち、3機を自分の護衛に、残りの7機で回収にあたらせるという案をつくってくれた。帰還するごとに10をまた召喚させるということだ。

 私はレオとさまざまなことを話し合った。

 レオの提案やアドバイスはどれも適切、的確なものだと思えた。それでも、私はたくさんの自分の意見を口にした。この世界で、レオは私を助けてくれる唯一無二の存在だ。優しくて、頼もしくて、頭がいい。だけど甘えっぱなし、頼りっぱなしはだめだと思った。

 レオは私を守ってくれる。レオを失うわけにはいかない。同時に、私もレオを守らなければならないんだと思っている。ラビちゃんを失ってしまったのは私の責任だと思う。アップグレードしたレオでさえ、自分のことを万能だとは決して言わない。自分が不確かだと思えば、「絶対に」などという言葉は使わない。レベルアップしてなかったラビちゃんが万能だったと思えない。もっと私が先のことを考えたり、気をつけたり、ラビちゃんに全部を押し付けたりしなければ、窮地を回避できたんじゃないなかと思う。

 もっと私が賢く、強かったらラビちゃんを死なせずにすんだのかもしれない。ラビちゃんを救えたのかもしれない。そう思うと、今までのように、すぐにどうでもいいやと諦めてしまったり、何もかも放り出したりするのはやめなければならなかった。

「そうよね。人生にマニュアルなんて無いんだもんね。自分で考えて、選択しなきゃ。」

 私はレオにというより、自分に言い聞かせるように言った。

「そうだね。姫。今の状況では、こうすれば良いとか、こうしたら良かったとか、そういう議論は意味が無いと思うんだ。難しいことを言うとね、この世界には姫にとってのロールモデルが存在しない。」

「ロールモデル?」

「そう。自分が目標とすべき存在というふうに思えばいいね。簡単に言えば、姫が憧れるような人かな。この世界に姫が憧れるような存在はいる?居ないよね。誰とも出会っていないし。姫と似たような存在で、姫から見て幸せそうだと思える存在、この存在と似たような人生を過ごしたいと思えるような何かって見つからないよね。」

「うーん。そうね。憧れか。転生前は、そうね。モデルさん見てすごいなぁとか、あと、Youtuberとか見て、私もあんな風にお金もちになりたいとは思ったけど。うーん、そうね。この世界でモデルなんて職業があるのかわかんないし、お金持ち、っていうかそもそもお金があるかもわかんないし。そうだね。この世界で憧れる存在っていないよね。まず、この世界を知らないもん。」

 私はいつの間にか口を尖らせて、上を見ながら話していた。何もない空間に話しかけていた。

「あ、そうだ。レオは私のロールモデルにならないの?だって、いろんなこと知っているし、頭いいし。すごいじゃん。」

「そうだねぇ。私と姫は、一つ圧倒的に違いがあるから、ロールモデルにはならない。」

「違いって?肉体があること?って、私も肉体があるかどうかわからないけど。」

「ううん。存在の根幹が違うんだ。」

「根幹?」

「そうだね。私は誰かが、この機体、今なら姫を支援するために存在している。それが私の存在意義だし、それ以外は重要じゃない。言ってみれば、私の人生は姫を支え続けることと、生まれた時から決まっていて、他に選択肢は無いんだ。何をすべきで、何をしてはいけないのか、そうしたルールが明確で、私はそのルールを破りたいとは思わないし、破ることがそもそもできない。破らないように生まれつき作られているから。」

 私は何度も頷いて、レオの言葉の続きを待った。また、口が尖っていた。

「一方で、姫は生きる意味が生まれながらに決まっているわけではない。もしかすると、この世に姫をつくりだした何者かが、人生の目的を決めていたりするかも知れないね。でも、自分はこういう風に生きなければならないと決められているといった自覚は無いと思う。そうだよね?つまり、姫がこれからの人生で何をするか、はたまた何もしないのか。それは全て自分で選択できるということだ。それは、生まれた時から私のように使命が決められているものとは全く違う。だから、姫は私をロールモデルにしてはいけないんだよ。」

 だんだん理解が怪しくなってきたけど、私は何度も頷いた。

「レオ、じゃあさ。探索の目的に、私のロールモデルを探すというのも入れようよ。」

「おお!姫!素晴らしいアイディアだ!姫。すごいね。本当に素敵なアイディアだし、それこそ支援AIの私には導き出せないものだよ。」

「ふふーん。レオに褒められた!」

 私は嬉しくて楽しくなってきた。義体に意識が移ったのも調子がいい。なんだかワクワクしてきた気がする。

「ようし!行こうっ、レオ!この世界を知ろう!私のロールモデルを探そう!」


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