Scene 5. ラビちゃんとの別れ(号泣
私は芙蓉。
今は自分が何者なのかはよくわからない。地表から遥か上空に浮かんでいる存在。身体は人間っぽいけど、半透明みたい。
そして、眼の前には、よくわからない文字が浮かんでいる。
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|Are You Continue ?|
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| YES or NO |
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|1,000,000 units left|
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嘘。わからないっていうのは嘘。たぶんわかる。
あれでしょ、ゲームのコンティニューってやつでしょ。
いや、でも、どういうこと!?
「ラビちゃん!なにこれ!?」
私はラビちゃんを呼んだ。
だけど、応えてくれない。
「ねえ、ラビちゃん!ラビちゃんってば!!」
私は繰り返して呼んだ。
「・・・・・・」
ラビちゃんは返事をしてくれない。
え、どうしたらいいんだろうって思っていたら、変な音が鳴りだして、眼の前の表示が変わった。
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| 30 seconds left. |
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「え、なにこれ!?ちょ、ちょっと待って。」
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| 29 seconds left. |
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「いや、ちょっと待ってって言ってるの!!」
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| 28 seconds left. |
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「えー!意味わかんない!!なんなのよ!ラビちゃん助けてよ!!」
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| 25 seconds left. |
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まずい、時間が無くなる。
うん、これは、もう、しかたないね。よくわかんないけど、もうあれでしょ。ノーって答えたら、もう復活できないってことでしょ。わかってるよ。うん。こんな終わり方はちょっと嫌かも。
だいたい、ノーって答えてどうなるのかもよくわかんないし。やるよ、私やるよ。
カウントダウンが進むと次第にアラームのような音のボリュームが上がってきた。
嫌だな、こういう音。ドキドキして、不安になって、何も考えられなくなる。
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| 11 seconds left. |
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「わかった、わかった!ピーピーうるさいな!イエスだよ。イ・エ・ス!」
叫び終わると、急に何かに吸い込まれるような感覚がした。
一瞬、目の前が真っ暗になった。
次の瞬間、私は地表に戻っていた。さっきまでと同じロボットの機体に宿っている。
眼の前に4匹の蟲がうねうねしていた。え、だめじゃんこれ。やられちゃうじゃん。
私は必死になってその場から離れようとした。身体が重い。全然、思うように動いてくれない。
視界の右隅で数字が点滅していた。10。9。8。。。え、なになに?これ、なんのカウントダウン?
数字が0になったとき、急に周りの音がはっきり聞こえてきた。そうだ、さっきまで、音が小さくて、遠くから聞こえているようだった。
「熱源体!」
ラビちゃんの声が聞こえた瞬間、下からドーンとまた突き上げられた。
また、空中に飛ばされて、地面に落下した。
なんなのよ、これ。
落下した直後に、また幽体離脱していた。
地表を眼下に見下ろして、空中に浮いている。
「なにこれ、、。復活しても即死って。これ、あれじゃん。・・・あのキモい蟲が居る限り復活しても即死なんじゃない。えっ、っていうか、マジ。これって、即死ループってやつじゃん。。」
思わず私は呟いた。
眼の前にはまた、Continue? YES or NO の表示が現れた。どうしようかと悩む。だけど落ち着かない。落ち着けるわけがない。
「待て待て。落ち着けわたし。落ち着け。」
眼の前にある文字を見つめた。
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|Are You Continue ?|
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| YES or NO |
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| 999,999 units left |
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「そうか!999,999!さっきより一つ少なくなってる!少なくなってるよね!?
うん、わかる、わかるよ!これってあれでしょ?残機っていうやつでしょ。そういえば、前に格納庫でステータスを見た時に、残機ってのがあったもん。
さっき、一回コンティニューしたから少なくなってるんじゃない?
あと、999,999回やり直しできるってことなんじゃない!?
すごい!わたし、天才じゃん!」
私は自分の考えを声に出して話した。こうしたほうが、考えがまとまる気がした。
「うん、うん、と、、。復活しても、あの蟲どもが居たら、またやられちゃうよね。あいつら、居なくならないかな。えっと、どうにかならないかな。
やだな。即死ループ、マジうざい。
そうだ、ラビちゃんどうしたんだろう。ここにはラビちゃんが居ないみたい。どうしてだろう。
うーん・・・と、うーん・・・と、そうだ。さっき、復活した時に、なんかカウントダウンしてたよね。カウントダウンしてた時は、なんか音が小さくて・・・・なんか、こう、見覚えがあるような・・・。
あー、わかった!わかった!わたし、やっぱり天才!大天才っ!
あれじゃん、リポーンだよ、リポーン!!リポーン無敵。
復活したら、数秒無敵になって、攻撃とか無効になっちゃやつでしょ!
・・・で、どうしたら、、」
「あ、そうだ時間!!」
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| 6 seconds left. |
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「やばいやばい!イエスッ!イエスッ!イエスッ!イエスイエスイエス!」
言い終わる前にまた何かに吸い込まれるような感覚がして、地表に戻った。
機体に意識が宿った。
右下に15という数字が点滅してる。無敵時間はあと15秒、何ができる!?
「ラビちゃん!ここから脱出したいの!!お願い!!すぐ死んじゃう!!」
ラビちゃんは応えてくれない。どうしてだろう。あと10秒。
「ラビちゃん!どうしたの!?わたし!!ふゆだよっ!わからない??わからないの?ラビちゃん??」
「・・・・・・・・・・・」
「あぁ、どうしよう!どうしたらいいの、また即死ループになっちゃうじゃん!!もうわかんない!!わかんないよっ!!、、あぁ、もう時間がっ!!」
「敵性。感知。主体。混乱。緊急。判断。自爆。モード。移行。5・・・。4・・・。」
らびちゃんがめちゃめちゃ早口で喋りだした。
「えっ、えっ?なにっ?ラビちゃっ・・・」
私の言葉が終わる前に、また身体の力が抜けて、幽体離脱するのを感じた。もう慣れっこだ。
私はまた空中に浮いていた。
浮いていると思った瞬間、眼下に眩しい光が見えた。爆発だとわかった。大きな火の球のようなものが出来て、それを中心に衝撃波が地表を走っているのが見えた。そうだ。前にラビちゃんが核融合炉がどうのこうのって言ってたはずだ。きっと、核爆発なんだ。恐ろしいほどの破壊力だ。
すぐに雲のようなものが浮き上がってくる。真上からだからわからないけど、きのこ雲なんじゃないかと思う。
なんだかよくわからないけど、ラビちゃんが勝手に自爆をしたみたいだ。わけがわからないし、なんか悔しい。悔しくて泣きそう。なんなのこの世界。私にどうしろっていうの?どんなルールなの?どんないじめなの?
思わず、何もかも投げ出したくなって、ノーって言いそうになった。一瞬、何もかも終わりにしたくなった。
ラビちゃんもラビちゃんだった。私の言うことに全然応えてくれない。というか、いつものラビちゃんと違ったようにも思えた。
ちょっと前までは、楽しい毎日だったのに。私はなんだか急に悲しくなって、半透明の自分を抱きしめた。
そうこう考えている間に選択の時間は過ぎて、決断の時は迫っていた。
どんな理由でも、なんでも、自分の思い通りにいかないっていうのは、ほんとだるいし、やる気がなくなる。努力するのが馬鹿らしくなる。何をやってもうまくいかないって、いつもだけど、ほんと嫌。死にたいとか、終わりにしたいと、いつも思ってた。けど、わかってる。私は臆病過ぎて、死ぬのも終わりにするのも怖くてできない。人生に期待して、努力して、裏切られるのは嫌。なんかポジティブ馬鹿みたいな奴は嫌い。だからって、怖くて死ねないし、終わりに出来ないし、でも、誰も私のこの気持ちをわかってくれない。誰も助けてくれない。だから、なんにも期待しないで、何も感じないようにして、面倒なことは避けて、ゲームとか、アニメを見て嫌なことは忘れて日々過ごせばしてたのに。
そうだよ。なんか、勝手に自爆されて気分悪いけど、きっともう、あそこに蟲は居ない。正直、エグい爆発だった。わかんないけど、100メートルとか、200メートルとかじゃない。数キロ、もしかしたら数十キロを一瞬にして消滅させたんだと思う。
すごい爆発だった。爆発とかいうレベルじゃない。あの蟲たちは跡形なく消え去っただろう。
うん、そうだ。今の状況、さっきよりはきっとマシ。
そして私はもう一度、挑戦しようと思った。
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| 3 seconds left. |
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「イエス・・・・」