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Scene 3. うわっは、AIはサイコーですT^T

 私は芙蓉ふゆ。厭世っていうの?ちょっと前まで自分の人生に興味が無くなった女子高生(だった)。

 ある日、目が覚めたら、機械生命体だった。

 私はまた頭が混乱していた。

 自分がロボットとして転生したこの世界。今、居る世界はロボットアニメのような近未来SFの世界観だと思ってたけど、どうやら違ってたみたい。なんか魔法があるみたい。

 あんまり深く考えても仕方なさそうだから、一つずつ覚えていこう。

「ラビちゃんさ。マジックコインがあれば、その、ホバー機能っていうのを付けられるんだよね。」

「回答。イエス。」

「じゃぁ、さあ。マジックコインはどうしたら貯めれるの?」

「説明。マジックコイン。魔物のドロップアイテム。」

 ほー、、魔物、ね。そうきたか。この世界は、魔法があるし、やっぱり魔物が居るのね。

「提案。前方20キロに魔獣。群れ。攻撃可能。」

 視界の左上の四角い領域の映像が切り替わり、川辺で群れているクマのような生き物が映し出された。

 へー、こういう生き物(魔物?魔獣?)が居るんだね。

「攻撃可能って、どうするの?」

「提案。頭部ガトリング砲。」

 視界に緑のスクリーンが出現して、前から見た人型の機体の図と、後ろから見た姿が映った。機体の前方、頭の部分が点滅している。どうやら、人間で言うと、眉毛あたりの場所に、左右それぞれガトリング砲とやらが埋め込まれているみたい。

「ねぇ、これ、射程1キロってあるけど、ここからじゃ届かないんじゃないの?」

 ラビちゃんにそう聞くと、目の前に3Dの地形マップが拡がった。魔物の群れの位置と、そこから1キロ以内にある丘の上の地点が点滅していた。なるほど、丘の上から狙えってことね。攻撃する場所は、崖の上にあって、魔物が向かってきても、登れそうには無いぐらいの高さがあって、安全そうに見えた。

 川辺でのんびりしてるクマさんたちは特に凶悪そうにも見えないし、なんか攻撃するのは申し訳ないけど、ホバー機能のカスタマイズしてみたいし、ちょっとやってみようかと思った。


 私は基地を出て、丘に向かった。歩くたびにガシーン、ガシーンっていう音がするけど、基地内に居るときとは違う。土の上を歩くからか、さほど大きな音はしなかった。それでも機体の胸ぐらいまで伸びている木を倒したり、森の中の小動物をびっくりさせたり、驚いた鳥の群れが急に飛びだったりと、いろいろ騒がしかった。

 クマさんたちはこちらに気づかないようだった。私が居る方角が風下だから、音が届かないのかもしれない。それでも遠回りをしながら、気づかれないように攻撃ポイントまで進んだ。

 相変わらず、手脚の動作は自分の気持より遅れているけど、だんだん気にはならなくなってきた。というか、途中からラビちゃんに自動操縦という機能があるのを聞いたので、それを利用した。何もしなくても、勝手に身体が動いて進んでくれる。

 自動操縦とはいえ、多少は静かに移動してと指示したので、結構時間がかかって丘の上に到着した。

 私はゆっくりと木々の間から頭部を出し、クマさんの群れを眺めた。

 水浴びしたり、日向ぼっこしている。なんか、こんな可愛い子たちを攻撃するなんて気が引ける。たぶん、私の知っているクマの3倍ぐらいは大きい。たぶん、立ち上がったら7、8メートルはありそうな気がする。それでも、今の自分よりは小さい、というか、腰のあたりぐらいまでの高さしかないんだろうと思う。

 人間の頃なら恐ろしすぎる大きさだけど、自分がロボットになってみると、なんだかちっちゃくて可愛らしい気もしなくはない。ペットにしたら楽しいかも知れない。

「報告。射程距離内に到着。」

「うん?ああ。そうね。可愛そうだけど、攻撃しちゃおうか。マジックコイン欲しいしね。」

 だんだん、自分がロボットになってから、人間の頃とは感情が違ってきたように思った。以前なら、こんなこと気軽に思えなかったと思うけど。

「提案。自動追尾掃討。魔獣をマーキング。自動殲滅。」

「ああ、うん。それでいいよ。それ、やっちゃって。」

 私が応えてから一呼吸して、顔の前からガトリング砲ってやつのでっかい音が鳴り出した。ガガガガガガっ!!!という音が大きすぎて耳が(耳があればだけど)痛いぐらい。視界に砲座の煙が立ち込めて、視界が悪くなる。

 私は思わず目をつぶった。まっくら闇の中、目の前で続く発砲音だけが聞こえた。クマさんたちがどうなっているかはよくわからない。

 だいぶ長く感じたけど、数十秒ぐらいでガガガガガという音は終わり、ガトリング砲が空回りするキュイーンっていう音が聞こえた。そして、それも数秒で止まった。

「報告。魔獣43体の掃討完了。推奨。ドロップアイテム獲得。」

「獲得ってなに?どうするの?」

「説明。魔獣討伐。肉体消失。ドロップアイテム変化。」

 ドロップアイテム変化?ってなんだろうって思いながら、望遠でクマさんたちが居たところを見た。そこらじゅう、土がえぐられたような大きなくぼみが出来ていて、その上に光るなにかが宙に浮いていた。これが、ドロップアイテムなんだろう。わざわざそこまで行かないといけないのがちょっと面倒だなと思いつつ、私は崖を降りることにした。といっても、もう味をしめたので、自動操縦を指示した。ついでにドロップアイテムの獲得も自動で行うように指示した。ラビちゃんに任せるとなんでもやってくれて楽ちんだ。

 私の身体は勝手に動き、ドロップアイテムを拾って集めた。獲得するたびに、チャリンチャリンっていう音が聞こえた。

「報告。ドロップアイテム。獲得。マジックコイン2,150獲得。」

「おー、すごいじゃん。2,150コイン!!ホバー機能のカスタマイズしちゃおうよ。」

「報告。否。必要。4,000マジックコイン。」

「あ、そうなんだ。じゃぁ、あともう一回でカスタマイズできるね。じゃあさ、今みたいな魔獣の群れがまた居ないかな?」

「報告。ガトリング砲弾不足。提案。ガトリング弾補給。1500マジックコイン。」

「え、なになに?砲弾不足なの?ちょ、1500コインって高くない?じゃあ、実質650コインの獲得ってことじゃん。と、なると、えーと、あと5回か6回?魔獣の群れを倒さないとだめじゃん。」

「提案。弾丸節約。手動操銃。節約半分。」

「えー、、手動!?ちょ、面倒そうじゃない。いいよいいよ、自動で。もういいからさ、自動で探して、自動で殲滅、自動で砲弾補充しちゃって。4,000コイン集まるまではそれでいいからさ。」

「了解。」

「あ、あとさ、川沿いに進みながらで適当にやってちょうだい。」

 私はラビちゃんに指示すると、あとは気楽に景色を眺めた。勝手に身体が動く。こんな楽なことはない。ただ待っていれば、勝手にコインが貯まって機体をカスタマイズできるんだ。時間は、そう、別にいくらでもある。学校とか、行かなきゃいけないところはないし、塾も無いし、部活だって無い。というか、やるべきことなんて一つも無い。今はとにかく人が居そうなところを気長に探そうと思った。

 ヒマだなぁと思ったから、たまにラビちゃんに聞いて、機体カスタマイズのメニュー一覧を眺めた。よくわからないものがたくさんあったけど、とにかくマジックコインとやらが貯まれば、いろいろできるらしい。

 身体はロボットだから、疲れるとか、腰が痛いとか、だるいとかは無かった。眠気も無かった。

 快適、快適。異世界転生順調!!

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