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Scene 16. 出会いの予感

 ガトリング砲に徹甲弾を装填して、私はしばらく結界の前に立った。

 レーダーは乱れているが、すぐ目の前になにかが居そうな雰囲気は無かった。

(結界のせいで、センサー類の調子が悪いようだね。気をつけて。)レオは言った。

 私は慎重に穴に近づき、いつでも身を引くことができる体制で上半身を潜らせた。

 結界の先は広い鍾乳洞のような場所だった。感覚的には野球場が2つぐらい入りそうな広さがありそうだった。岩肌が光っているのか、足元は暗いが、奥のほうに向かって明るくなっている。地形は複雑で、隆起している場所がところどころにある。奥に向かって坂のようになっている。

 「レオ、上の様子はどう?」私は尋ねた。

 視界の一部に地上の映像が映し出された。人工物は映っていなかった。その代わり、切り立った崖が見える。幾重もの地層を見せた崖だった。隆起した地層かもしれない。

 レオとミッキー、ローズは私が地上を進む間、同じ方向に移動していた。おおよそ真上の位置に居るはずだった。

 私はガトリング砲を構え、魔獣に警戒しながら奥に進んだ。結界を抜けてからはセンサー類の性能が少し戻ったように思える。さきほどまでのノイズが無い。

 しばらく進むと、視界の右下に映し出されていたレーダーの上にぽつっと赤い点がともった。それが1つから、2つ、3つへと増えた。動きからしてそう早い移動では無さそうだ。魔力は検知できないが、何かの生命体であることは間違い無さそうだった。

 私はレーダーが示す方向を見たが、そちらは登り坂が続いていて、その生命体を視認することはできない。その生命体は私からすれば、右から左に移動している。

 私はごつごつとした岩肌の坂を慎重に登った。

 3つの点が私の正面に差し掛かろうという時だった、その3つを追うように、20ぐらいの点がレーダーに映し出された。急速に3つの点に迫っていく。魔素レーダーの反応からして魔獣に間違いなかった。それらの点は横にひろがりながら、先行している3つの点を取り囲もうとしているようだった。

 足を早めて坂を登りきると、しばらくは平坦地表が続いていた。目の前を蠍のような甲殻の魔獣の群れが数十メール先を素早く移動していた。全長は数メートルはありそうなその群れが進む先には3つの人影のようなものが見えた。

 私はとっさにガトリング砲を構えて魔獣に銃弾を撃ち込んだ。小気味よい音を放ちながらガトリング砲は徹甲弾を放ち、魔獣に吸い込まれる。つぎつぎに魔獣がドロップアイテムに変わっていく。

 角度的に人影に当たりそうな個体には発砲できなかった。ガトリング砲を地表に置き、背負っていた大鎌を抜きつつ、魔獣に向けて走った。

 人影は人型の生命体だった。フードを被っているので顔がわからない。人種などはもちろんわからない。やや細くて背が高いように思う。素材はわからなかったが、胸当てや篭手、脛当てなどの防具を付けている。素肌をさらしている箇所はなかった。

 彼らは逃げ切れないと諦めたのか、走るのをやめて魔獣に向かって立ち止まった。3人が同じように両手を突き出すと、その腕の先に炎の塊が突然に現れ、弾かれたように魔獣に向かって放たれた。炎の塊はつぎつぎと現れ、連続して魔獣へ放たれた。

 大型の蠍のような魔獣は炎の塊を受けてもまったく怯む様子がなかった。炎の塊は魔獣に当たるが、外殻に弾かれてしまい、ダメージを受けている様子が無い。

 魔獣が3人を捉えると思われた瞬間、3人は飛び退った。私ほどの移動速度は無いが、かなり素早い動きだった。転生前の私が知っている人間の動きではない。

「面白くなってきたんだじゃない!」私は叫びながら、魔獣に向かって突進した。

 5体の魔獣を大鎌で狩るのは一瞬だった。魔獣は一撃で倒すことができた。勢い余って、鎌を地面に叩きつけてしまうと、地表を数メートルに渡って地割れのように縦に割れてしまった。駆け回り、飛び、空中で回転しながら、その遠心力を借りて薙ぎ払ったりもした。魔獣の甲殻はかなり硬いはずだったけれど、魔法強化した大鎌の刃先のほうが勝った。

 最後の1体を片付けて、地表に着手した時、そこには3つの人影はなかった。

 闘いの中でも、彼らの動きは視線の端で追っていた。少し離れた場所に壁があり、そこに空いた横穴のようなところに3人とも入っていくのが見えた。

「お礼ぐらい、行ってくれてもいいのにね。ここはそういうパターンじゃないの?」私は小声で呟いた。

 ゆっくりとその横穴に近づき、やや離れたところからライトを当てて、中の様子を伺った。

 穴は腰をかがめたら入れるといった具合の小さな穴だった。人工的なものか自然のものかは区別がつかなかった。

(姫。さすがにその穴には入らないでね。)レオの声がした。

「うーん。行ってみたい。だってさ、あれ、人間だよね。きっと。しかも、あれ、魔法でしょ?いいよ、いいよ。これぞ冒険っていう感じ。」

(それよりも、姫。こちらでも大きな発見があるんだ。先行していたミッキーが都市を見つけた。地下探索はいったん切り上げて、こっちに合流したほうがいいよ。)

「都市?それって誰か住んでそう?」

(うん。映像を送るよ。)

 視界の真ん中にミッキーからの映像が届いた。

「うわ!なにこれ!面白っ!!」

 そこには想像もできなかった風景が映っていた。


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