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Scene 13. 義体デビュー!!

 夕暮れのなか、私は魔獣を遠方から射撃で倒す訓練を開始した。

 本体の索敵のレベルが上ったので、かなり広範囲で魔獣を捉えることができる。本体からのマップが、視野の右下に丸く表示されている。魔獣を捉える魔素マップと光学マップを合わせたマップは3Dで表示され、わかりやすい。

 この廃墟都市のところどころに魔獣の群れが住み着いていた。都市に来るまでの草原や荒れ地の魔獣に比べれば小型の魔獣が多い。といっても大半は私より大きい魔物ばかりだ。

 魔獣に見つからないように、障害物に身を隠しながら、足音を立てずに移動する。風下から距離を詰める。風がたまに変わるが、風上に位置取りしないように気をつける。ガトリング砲に付けた照準スコープ ー それは巨大なガトリング砲にお似合いのこれまたごつくて大きい照準スコープだった ー を覗き込み、群れの中でリーダーと思われるような一匹を探す。

 初めての獲物は蟻か蜘蛛のような魔獣だった。立ち上がったら、2メートルぐらいはありそうだ。地下に巣穴があるのか、いくつかの地表の穴からそれらが湧き出ている。

 魔獣の中でもひときわ身体が大きくて、他の個体とは色味が異なる1体に私は狙いを絞った。

 少し高さのある、建物の残骸らしき場所に陣取った。下部に格納された簡易砲座を引き出し、ガトリング砲を構えた。望遠スコープの照準で他よりも身体の大きい1体を十字の中に捉えた。

 速射モードで3発を放った。

 私は着弾するのを見届けずに、簡易砲座を素早く片付け、ガトリング砲をかかえて群れをまわりこむようにして、位置どりを変えるために走り出した。レオから、スナイプは撃った瞬間に位置が敵にばれると考えなさいと言われていた。狙撃後はこまめに移動するようにとアドバイスを貰っていた。

 駆け出した頭の中で、リーダーを倒したようだというレオからの声がした。群れは混乱しているようだった。けれど、その中の一団がこちらに向かってくるのがマップで見て取れた。

 わたしはこちらに向かってくる魔獣の横を距離をおいて駆け抜け、背後にまわった。そして彼らの背後から脇に抱えたガトリング砲を構え、右から左に速射で撃ち流した。こちらに背を向けていた魔獣が次々とマジックコインに変わっていく。

 マジックコインの回収は後回しにして、群れの巣があると思われる複数の穴がある場所へ駆け出した。

 混乱している数十匹の魔獣が見えた。その場をくるくるとただ回っているもの。右に動いたかと思うと左に戻り、また右に動くといった具合に右往左往するもの。

 私は距離を詰めて立ち止まり、両足を大きく開いてガトリング砲を構え、右から、左に、そして左から右へと掃射する。速射するガトリング砲の反動を全身で受け止めて、銃身が跳ね上がらないように抑え込む。この反動がたまらないと思った。いかにも撃っているという気分にさせられる。連続して生じる反動の強大な力を自分で抑え込むというのも気分がいい。ベルト型の弾倉が砲にすべるように吸い込まれ、爆音と共に無数のキラキラと光る空薬莢が舞い上がる。熱くなった銃身から熱気が伝わり、銃身の先から見える景色は陽炎でゆらいでいた。空薬莢が落ち、連続して乾いた金属音を立てる。

 半分以上をマジックコインに変えたところで、私はガトリング砲をその場に置いた。距離をとっての実戦は終わりにして、近接戦闘に移行することにした。

 頭の中で、レオの声で近接戦闘はまだ早いのではないかと聞こえたが、私は陽気に大丈夫と答えた。見る限り、移動速度は遅い。甲殻で覆われた手脚の動きもそれほど早いというわけではない。ミッキーやローズのほうがよほど動きが素早い。

 私は背中に抱えていた大鎌を引き抜き、右手に構えた。軽く右に左に振ってみる。鎌での模擬戦はしていないので扱い方を充分にわかっているわけではない。けれど、ローズの動きを思い返しながら、振り回した。両手でバトンのように目の前でくるくると回してみる。

 大鎌を回していると、ふと小学生の頃のことを思い出した。あの頃はまだうちもお金に余裕が無いなんていうことがなくて、私は体操倶楽部に通わせてもらっていた。その中でも、私は新体操のチームにも所属していた。リボンやグラブ(棍棒)が好きだった。

 追憶にひたりそうになるのを振り払って、私は目の前の群れに突っ込んだ。

「1つ!」

「2つ!」

「3つ!!」

「4つ!!!」

 振り下ろす鎌、薙ぎ払う鎌で魔獣を倒すたびに私は数を数えた。20を数えようかというころ、耳障りなカシャカシャという音がたくさん聞こえた。地表に空いた穴から魔獣が溢れ出してきた。敵の増援だ。

 私は一瞬、動きを止めてしまった。新しい戦局にどうしようかと迷ってしまったからだった。

「姫っ!後ろ!!」ミッキーの大きな声が聞こえた。私ははっとして、とっさに右に跳んだ。

 転がりながら、自分がさきほどまで居た場所に視線を向ける。

 水たまりができていた。緑の液体が地面に拡がり、湯気がでている。すえた匂いがした。何か酸のようなものだろうと思った。義体が酸に強いのか弱いのかわからないけれど、これを浴びないほうが良さそうだ。

「姫さま〜っ!手伝うか〜いっ!!」面白がっているようなミッキーの声だった。

「けっこうですぅ〜っ!!」私は大きく叫んで応えた。

 私は群れから離れて距離を取った。口らしき場所から酸を吐くみたいだ。ちょっと面倒だなと思った。レオに話しかけた。

(レオ。後ろが見えるバックモニターのカスタマイズって無かったっけ?)

(うん。あるね。ただ、手持ちのコインだと足りないね。メタモルフォーゼのカスタマイズでほとんど使い切ってしまったからね。)

(うーん。わかった。でも、うん。先にカスタマイズしちゃう。)

 私はいったん近接戦闘を中断することにして、最初に倒した一団のマジックコインを回収しにもどることにした。駆けながら、地面に横たえていたガトリング砲を拾いつつ、速度を落とさずに駆けた。

 マジックコインを回収して元の場所に戻る。レオに確認すると、コインはもう少し必要ということだった。きっと、さっき倒した魔獣だけでなく、リーダーがドロップしたコインを拾うと良いだろうと思って、戦闘を避けながら全てのマジックコインを走り回ってかき集めた。




 


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