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一話 九死に一生

初めて書きますm(_ _)m

厳しい意見も含めて、様々な感想をお待ちしています。


二話以降はある程度プロットを書き溜めてから投稿する予定です。

生まれた時から畜生の子と言われて育ってきた。


普通の人間よりちょっと大きい三角の耳と、モフモフの尻尾は自分では気に入っているけれど、どうやらこの見た目は大衆受けしないらしい。


誰もかれも、みんな俺を一瞥した者はそそくさと逃げ去っていった。

別に悲しいとも腹立たしいとも思わなかったし、物心ついた時からずっとそうなのだから、世の中そういうものなんだろう。




俺がこうして差別的な目で見られているのは、生まれた経緯によるものだった。

母親は人間だが父親はどこの誰かも分からん魔物で、俺は俗に言う獣人、ってやつらしい。

母親はそこそこ名が売れた冒険者だったようで、腕も立ち器量もある人格者だったみたいだが、その最期は無残なものだった。


いくつかの仲間たちとパーティーを組んで、上級の依頼をこなしに行ったものの、街の外壁近くで四肢が欠損した状態で発見されたという。

最早人と呼べるかも怪しい肉の塊を食い破り、腹から転げ落ちた忌み子が俺……ということらしいが、何せ十年も前のことだからよく覚えていない。

生まれた時の記憶はサッパリだが、まあ俺が逆の立場でもそんな生まれ方した子供を良い目では見られないだろうな。




母親は平民の生まれながら、王族お抱えの親衛隊も舌を巻くほどの絶大な実力を持っていたようだ。

それも全て当人の努力によるものだが、死んでしまっては元も子もない。

生きて帰ることさえできていれば婚約者が待っていたのに、あと一歩というところで命を落としてしまった。

まあもし生きていたら俺が産まれることもなかったんだろうけど。怪物に死姦されて出来た子供、なんて肩書きはあまりに厳しすぎる。別に俺は生まれなくても良かったよ。

母親も化け物の子なんて願い下げだろうし、便宜上の父親だって自分のザーメンのその後なんて気にもしてないだろう。




まあそんなこんなで、生まれた瞬間から人にドン引きされて生きていくことが確定した俺は、いつの間にかどんどんグレていくことになる。

こんなもん自慢話にもなりはしないが、三歳で包丁を振り回し、五歳で財布から金を抜いた。八歳で脅迫と強盗を行い、十歳となった今は違法な物品の取引で生計を立てている。




言い訳するつもりはない。もっと賢く、正しく生きる方法もあるんだろう。だけど俺にはそれが分からなかった。

道徳や倫理に従って善行を積むことに、意味があるとは思えない。申し訳ないけど、見返りを求めずに正しく生きる余裕なんてない。

いつだって手っ取り早く利益が出るのは悪いことだったから。俺は俺が楽に生きるために、人から嫌われることをして当座の飯を確保した。

どう生きたって好かれることはないんだから、悪事に手を染めることに抵抗はなかった。



毎日が楽しかったわけでも、辛かったわけでもない。ただただ、必死だった。でも必死でいられるのは幸せなことだったのかも。自分の生まれとか、周りからの評価とか、そんなものを気にしないで済むからな。




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俺は今、(はりつけ)にされていた。十字架の様に足と手を垂直に伸ばし、縛り付けられた背中の木材はささくれだっていてノコギリの様だった。


ヘマをした。もっと金が欲しいと思って、二重スパイ紛いのことをした。

高値で売れる依存性のある回復薬を、対立組織が陣取る禁じられたエリアで売りさばき、なおかつそこで知った内情に高値を付けてまた別の組織に吹っ掛けた。


命が紙吹雪のように散っていく違法組織だからこそ、規律や義理は他の何より優先される。その全てを無視して自分だけの利益を求めた俺は、例え十歳の子供であろうと容赦なく処刑の対象となった。


たかが子供の獣人ごとき、魔術で簡単に消し炭にできるだろうに、そうしない。

それはルールを守らなかった者に与える罰だからだろう。楽には死なせず、出来るだけ長く生かし、苦しめてから殺害する。


自分の運命は悟っていた。痛いのは嫌だが、どうせロクな死に方はしないだろうと自分でも思っていた。それが早かったのか、遅かったのか。あるのはその違いだけ。




「なぜ裏切った」




全身をローブで覆い隠し、徹底的に素性を隠した大柄な男が、ナイフをこちらの首に突き付けて問いかける。


なぜ、と言われても。俺は物心ついた時から本音なんて一度も話したことがない、裏切ったんじゃなくて、最初から信用していなかったんだよ、と、伝えようとしてやめた。思えばこの時が本音を語る最後のチャンスだったようにも思えるが、それを吐露する相手はこいつじゃない気がした。


ずっと人から嫌われ続けた俺は、最期までウソに塗り固められた生涯を送って、その幕を閉じる。




―――そのはずだった。

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