表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

気まぐれな神が寵愛する箱庭

聖なる鳥籠の守人

作者: すずき あい

今書いているものが終わらないので息抜きがてら考えたものです。

気楽なご都合主義な話…と思ったら、少しばかりシリアスも混じりました。


基本的にはゆるいファンタジー風世界観です。

多分登場人物はみんな幸せに落ち着きます。




「何故、貴様は神殿に侵入し、破壊行動に至った」



牢の中で、暴れないように拘束された青年、いやその顔にはまだ幼さが残り少年と言ってもよさそうな男に、審問官は訪ねた。


ここに来る前に渡された書類には、彼は騎士団の見習いとして街の警邏に当たっていたが、先日突如神殿に侵入、立入り禁止区域にまで入り込んで止めようとした護衛官に取り押さえられたとなっていた。

その際に暴れて神殿の一部の破壊に及んだ為、護衛官達はやむなく反撃をし、彼は重傷を負って牢に放り込まれた…筈だった。


「瀕死と聞いていたから急いで来たのだが、どこで間違ったのかな」


書類には負傷の詳細も記載されていたが、目の前にいる彼は顔の半分程の青痣と片方の瞼が腫れているだけで、他に目立った外傷は見えなかった。


「こちらも仕事だからな。一応確認の為に聞くが、答える気がないなら別にだんまりでも構わん。ただ、その分お前の心証が悪くなって罪が重くなるだけだ。それだけは理解しておくように」


審問官は、無反応のままこちらを一瞥もしようとしない彼に淡々と言い聞かせると、牢の前まで椅子を引っ張って来て腰を下ろした。

この審問官は、神殿関係の罪人の罪を確認する為にここに派遣されて来ていた。ここで身許や罪状を確認し、動機や目的があればそれも聞き出す役目だ。とは言うものの罪人に聞き出そうとしても、答えない場合が半分以上だ。返答がなくても所定の手続きは進めることになっている。


「名はセオドア。孤児院出身で、家族や血縁者は無し」

「……無しじゃない」


彼の態度から答える気はないだろうと思って書類を読み上げると、割とすぐに反応を返して来た。その声はひどく掠れていて、喋る度に顔が痛むのか殆ど口を開けないので聞き取り辛かった。


「素直に喋るなら水でも飲むか?その様子じゃ自分じゃ飲めないだろうしな」

「……いい」

「そうか。…ええと、台帳では血縁は無しになってるが」

「妹と…婚約者が、いた」


審問官は怪訝な顔をして書類を数枚めくった。そして納得行く答えをそこに見つけて、少しだけ憐れんだような表情を彼に向ける。


「ああ、聖女の関係者か。残念ながらお前の台帳は血縁者無しで登録され直している。……なるほど。加護の腕輪をしているからか。命拾いしたな」



---------------------------------------------------------------------------------



この国は聖女信仰が深く根差している。



その場所は、かつて悪しき瘴気が発生する中心部として、人々が暮らして行けない不毛の土地だった。

しかしはるか昔、聖女と呼ばれる女性が友人と手を取り合ってその土地の浄化に成功した。聖女の力を込めた聖石と呼ばれるものを中央に置き、瘴気を吸い込んで害のないものに変えたのだ。


国王はその功績から聖石の置かれた場所に神殿を建て、聖女を信仰の対象として奉った。


やがて、神殿は聖女と同じ聖魔法の使い手の女性を聖女の御子として集め、聖女亡き後聖石に力を込められる才を持った者を次代の聖女とした。


聖女に選ばれた者は、神殿の最奥の聖域と呼ばれる場所で、聖石に力を込めて国の平和を祈る為に生涯を捧げる。そして初代聖女に倣って、生涯を共にしたと言われる友人のように、聖域より出ることの叶わない聖女を慰める役として一人、聖女の御子が補佐官として聖域に同行する決まりとなっていた。


この国は、2人の女性によって平和を保たれているのだ。



---------------------------------------------------------------------------------


3年前、先代の聖女が亡くなった。


次代の聖女は長らく現れず聖石に込められた力も薄くなり、このままでは瘴気が押さえ切れなくなるという噂がまことしやかに囁かれるようになった頃、ようやく次代の聖女が見つかった。


歴代聖女は王族や神官の家系の者が多かったのだが、今代の聖女は孤児の平民であった。その為発見が遅れたとも言われている。

一部の貴族至上主義の者達の間では不満が上がったらしいが、3年間聖石の力を補充できずにいつ瘴気が復活するか分からない薄氷を踏むような日々に疲れ切っていた人々は、概ね平民出身でも聖女を歓迎して迎えた。そして聖女の身分に配慮されたのか、補佐官も聖女の御子の中では珍しい平民出身の者が選ばれたのだった。



---------------------------------------------------------------------------------



「お前さん、一時期随分と妬まれたらしいな。大金も権力も思うままだと聞いていたが」

「…そんなもの、一つもない」


このセオドアは、かつて聖女の兄、そして補佐官の婚約者だった人物だった。今はその記録は国から抹消され、最初から天涯孤独の身となっていた。



基本的に聖女と補佐官は、聖域に入る前に全ての俗世の縁を断ち切ることになっている。

しかし、やはり聖女の関係者は各方面で優遇される。王族や貴族であれば、一族から聖女や補佐官を輩出した血筋ということでより強い縁を得ることが出来たし、人々の尊敬を集めることも容易かった。


そんな中、平民の彼が手にしてしまった聖女の身内という身分は手に余る程の効果をもたらした。毎日のように自称親兄弟や親類縁者を名乗る者が無心に現れ、そうでなければ強引な縁談を押し付けて来る。


「聖女や補佐官の身内には、褒美として護りの加護を付与された装身具を与える、という規定だからな。地位も金ももらえる訳じゃない。もっとも、お前がその立場を利用して裏で色々受け取ってれば違うだろうが」


聖女の身内は、本人が意図していないところで様々なトラブルを呼ぶことがある。それを防ぐ意味も込めて、聖女が直接加護を与えた装身具が与えられるのだ。その加護の効き目は約3年程度と言われているが、その間怪我や病気、人の悪意に端を発する害悪から護られる。その扱いは与えられた者に委ねられ、それをそのまま身に付けて使用しても、売って財産に変えても構わない。永遠の別れとなる身内の幸福を祈る聖女の最後の贈り物なのだ。



セオドアが瀕死の重傷を負っていたというのもおそらく事実なのだろう。しかしそれは妹から貰った加護の腕輪の効力のおかげで、今は軽傷程度まで回復していた。


「それで、神殿に侵入したのは妹と婚約者を奪い返そうとしたって理由でいいか?普通に考えれば無理だと分かりきっているだろう」

「…無理で良かった。少しでもシアの側で死ねるなら、それで構わなかった」


審問官は、感情が一切抜け落ちたようなセオドアの呟きを書類に書き込む。一応聞き取りの内容はどんなことでも報告をしなければならない。



神殿の最奥、聖域に続く場所は王であっても入り込むことは出来ない。勿論護衛官によって守られているのもあるが、聖域に足を踏み入れることが出来るのは聖女と補佐官の2名だけと初代聖女が残した結界がある。この結界は聖石の力の一部を利用しているので、決して破られることはないのだ。食糧や生活必需品などの物は通過できる。が、生きているものは結界を通過することが出来ないのだ。

唯一他の者が結界を通過することが可能になるのは、聖女が亡くなった時だけとされている。



「死にたがりの無謀者、か。それならその加護の腕輪は外しておくべきだったな」

「それだけは、出来ない」

「…そうか」


審問官はその後も淡々と確認を続け、日が暮れる頃に牢を後にした。その頃には、セオドアの顔の痣は完全に消えてなくなっていた。



---------------------------------------------------------------------------------



セオドアは、いつまでも体を拘束されたまま椅子の上に座らせられていた。もうどれだけ水も食べ物も口にしていないだろうか。暗い牢の中では、どのくらい時が過ぎたのか分からなかった。

ただ、加護の腕輪のおかげで彼は生き延びていた。きっと辛さや苦しさも軽減させているのだろう。ただ退屈で、時折ウトウトと微睡んでは短い夢を繰り返し見ていた。



---------------------------------------------------------------------------------



最初は、妹が絡まれているのだと思った。


暮らしている孤児院の買い物を済ませた帰り道、近道をしようと入った路地の先で、一人の少女が身なりの良さそうな同い年くらいの少女達と、その後ろに控える護衛のような男達に囲まれているのが見えた。


セオドアに背を向けていた彼女は、肩の辺りで波打つような金色の髪を緩く束ねていた。そのほっそりとした立ち姿と、髪を束ねていた組紐が妹が気に入っていたものに良く似ていた。

咄嗟に妹だと思ったセオドアは、考えるよりも先に手が動いて篭に入っていた卵とトマトを投げ付けていた。幼い頃から菜園の鳥を追い払ったり、高いところになっている果物を落とす為の石投げの命中率は高かった。おかげで、彼の投げた卵とトマトは、彼女に対峙している少女達の服に違わず命中した。


服にべったりと汚れが付いて悲鳴を上げる少女達の隙を突いて、セオドアは彼女の手を取って一目散に走った。不意打ちだったせいか、護衛風の男達も追いかけては来ず、馴れた裏路地を幾つも曲がってやっと立ち止まる。


「え?あ!ま、間違えた!!」


安全な場所に到着してようやく振り返った彼は、手を掴まれたまま息も絶え絶えになっている少女が妹ではなかったことにやっと気付いたのだった。



それが彼女、フェリシアとの出会いだった。


フェリシアは、セオドアの妹キンバリーと偶然にも同い年の1つ年下で、どちらも豊かに波打つ金の髪をしていた。彼女は平民には珍しく魔力があり、それが聖魔法だったので聖女の御子として神殿で働いていた。

その後キンバリーに紹介したところ二人はあっという間に仲良くなり、並んでいると姉妹のようだと良く言われていた。

しかしセオドアからすると瞳の色も、キンバリー曰くそっくりな緑色だと主張していたが、フェリシアの方がより深みのある落ち着いた色だと思っていたし、派手な顔をした妹よりも切れ長の目で知的な顔立ちのフェリシアの方が美しいと思っていた。


やがてセオドアはキンバリーと共に孤児院を出て、商会で配達の仕事をするようになった。キンバリーも小さいながらも人気のある食堂で看板娘として働くようになり、少し生活に余裕も出て来た頃、セオドアとフェリシアは将来の約束をし合うようになっていた。

神殿で聖女の御子であっても、聖石に力を込める才がなければ辞めることも出来る。フェリシアは既に聖女認定の儀式でその才はないと判明していたので、新居が見つかり次第セオドアの元に嫁ぐ為に神殿を出ることになっていた。


そんな折、たまたまキンバリーの働く食堂に立ち寄った神官が、キンバリーに聖魔法の素質があることに気が付いた。

その頃、先代聖女が亡くなってから3年近くが経とうとしていた為、神殿では聖女の発見が急務であった。


あれよあれよと言う間にキンバリーは聖女認定の儀式を受け、まさかと思っていた聖女であると確定してしまったのだった。



その時の騒ぎは、セオドアははっきりとは覚えていない。ただ周囲から祝福を受けていたような気がしたが、まるで他人事だった。そして気が付けば、キンバリーは否応なく聖女となり、ゆっくりと話すこともないまま追い立てられるように聖域に閉じ込められてしまっていた。


そしてその直後からフェリシアとも連絡が途絶え、必死に神殿に何度も訴えを申し出たセオドアに数ヶ月後、フェリシアが新聖女の補佐官に任命され既に聖域に入ってしまったことだけを告げられたのだった。

平民の聖女に、貴族出身の補佐官では友人として心を慰めることも出来ないだろうと、友人であったフェリシアが補佐官に選ばれた。だがそれは表向きで、キンバリーはフェリシアが自分の兄との結婚を控えていたことを理由に断ったらしいのだが、平民の聖女の補佐官になることを貴族出身の御子達が拒絶した。当時唯一の平民の御子だったフェリシアには、選択の余地はなかったのだ。


気が付けばセオドアは、唯一の肉親も、愛しい妻になる予定だった相手も、全て失っていたのだった。


呆然としたまま半年程が過ぎた頃、セオドアに加護の腕輪が届けられた。聖女の身内への褒美として渡されたそれは、豪華な箱に入ってはいたが何のありがたみもなくただひんやりと冷たいだけだった。その中には一言の手紙すらない。


きちんとした別れも許されないまま奪われた日常。それなのに周囲は聖女の身内であることへの妬みや、おこぼれを貰おうと張り付いて来る見知らぬ人々に囲まれ、セオドアの心が壊れるのに時間は掛からなかった。


セオドアは髪色を変え名前を偽り、騎士団見習いとして神殿内部に入り込む隙を窺った。そしてある時、急な腹痛で警邏に出られなくなった者とこっそり交替してもらい、死を覚悟して聖域を目指して彼は走った。


結果としてすぐに護衛官に捕まり、セオドアは投獄されたのだった。



---------------------------------------------------------------------------------



「いくら死なないからと言って、数日そのまま放置ってのはいくら何でも人道的になってないな」


どのくらい時が経ったのか分からなかったが、気が付くといつか来た審問官が渋い顔で牢の前に佇んでいた。

セオドアはぼんやりとした頭で、その審問官の瞳の色が、妹の色に良く似ているな、と思っていた。


「お前の罪状が決まった。国外追放だ」

「…国外追放…」


声にならず、息だけでセオドアが繰り返す。


「中には神殿への不敬ということで極刑にしろという奴もいたがな。しかしお前が死刑になったことが聖女の耳に絶対に入らないという保証はない。聖女には一点も曇りもなくこの国の安寧を祈って欲しいとの国王陛下からの願いでな。まあ、この国以外でお前の身に何があろうともこの国のせいではないということだ」

「…別に、どうとでもしてくれ」


審問官は牢を開け、セオドアを拘束している鎖の鍵を外した。それはジャラリと重い音を立てて床に落ちた。彼はそんなことも気に留めていないように抵抗はおろか、身じろぎ一つしなかった。


「右手に魔法印を刻む。これでこの国に二度と足を踏み入れることは出来ない。他国で暮らすのも苦労はするだろうが、この国にいるよりは静かに暮らせるだろう」


セオドアの手を取って、フワリと魔法陣が描かれた羊皮紙を乗せる。その魔法陣が光を帯びると吸い込まれるように消え、真っ白になった羊皮紙を外すとその下の手の甲に同じ魔法陣が刻まれていた。


「逃亡の可能性もあるということで、家に戻ることも許さん。これに最低限のものは入ってるから、持って行け」


しばらく歩いてなかったからか、セオドアは椅子から立ち上がっても真っ直ぐに歩けないほどフラフラしている。審問官は、準備されていた肩掛けカバンを彼に強引に被せるように持たせると、そのまま手を引いて牢の外に出た。


外に出ると、まだ夜明け前で東の空がうっすらと明るくなっているだけだった。まだ朝というより夜の方が優勢な時間帯。もう少し経つと、朝市の為に人々が動き出す頃だろう。



「お前は、『()()()()()()』の話を聞いたことはあるか」



「…いや」


しばらく歩いて、セオドアが歩くのに馴れて来たのを見計らって審問官が手を離した頃、低く小さな声で呟いた。


「聖域の向う側と言われる場所は、歴代の聖女と補佐官の墓があると言われている。何処の国にも属さない、何者にも利用されることなく聖女達が安らかに眠る場所、だそうだ」


聖女に認定されれば、補佐官とともに生涯聖域から出ることは許されない。唯一出ることが叶うのは、死後埋葬される為だけだ。


「その場所で墓守をしている者だけが、埋葬の為に聖女や補佐官の最期の姿を見ることが許されているそうだ」

「最期の…姿」


ずっと表情が動かないまま後ろを付いて歩いていたセオドアの瞳が微かに揺れた。審問官は立ち止まってチラリと振り返り、再び歩き出す。



「もしその場所に辿り着いて墓守になることが出来たら…その最期の別れを望むか、残酷なことと取るかは…お前さん次第だ」



国境の門に到着し、審問官は役人に書類を渡した。もうすぐ夜勤が終わる頃なのか、眠そうな顔をした役人は欠伸を堪えた顔を隠しもせずに書類を確認する。特に問題もなかったようで、役人はセオドアの顔をチラリと一瞥だけすると判を押して審問官に書類を戻す。


「じゃあな。ここを出たらもうこの国には入れん。まあ…なんだ。達者でな」

「はい」


セオドアは審問官にペコリと頭を下げると、随分しっかりした足取りで門の外へと歩みを進めて行った。

ほんの僅かであるが垣間見えた彼の目は、牢の中で見た時よりも光が宿っているように思えた。



審問官はその後ろ姿を見送ると、大きな欠伸を一つして門の中へと引き返して行ったのだった。



---------------------------------------------------------------------------------



ゆっくりと目を開けると、ぼんやりと霞んだ視界の中でこの世で一番美しいと思っていた緑色と金色が揺れていた。それと同時に、自分の頬を何か温かいものが流れ落ちる。


「…シア…?」

「セオ!!」


何度か瞬きをするとようやく視界がはっきりして、目の前にフェリシアの顔があった。多い被さるように覗き込んでいるので、前よりも伸びた豊かな髪がセオドアの頬をくすぐる。そしてずっと焦がれて続けていた美しい深い色の緑の瞳から、止めどなく涙が溢れていた。


「…シア…ごめん…」


ずっと夢でもいいから会いたいと思い続けて、ようやくこうして夢の中に出て来てくれたのに泣いている彼女にセオドアの胸は痛んだ。その表情から、理由は分からないが泣かせているのは自分なのだと悟ったセオドアは、自分のものではないくらい重く感じる腕を伸ばしてそっと彼女の頬に触れる。


「やっと目が覚めたか」


不意に、聞き覚えのない老人の声が割り込んで来て、セオドアの意識は急速に浮上した。


「え…?シア…本物!?」

「他になんだって言うのよ、バカね」


頬に添えられたセオドアの手を握りしめながら、フェリシアは泣き笑いの顔になった。その言い方に懐かしさがこみ上げて来て、セオドアの涙で視界が歪む。


「貴方、ここに来た経緯は覚えてる?どこか痛むところはないかしら?」


フェリシアの隣で、盆の上にカップを乗せた老婦人が顔を覗き込んで来た。真っ白な髪を綺麗に纏めた上品な印象の女性で、目元や口元に刻まれた皺が不思議と美しかった。


ゆるりとセオドアが起き上がると、自分が小綺麗な部屋に寝かされていたことが分かった。ベッドも平民が使っているものと大差なかったが、シーツは肌触りの良いものが使われている。豪華絢爛な内装ではなかったが、揃えているものはどれも質の良さそうなものばかりで設えられていた。


「俺、は…『聖域の向う側』の噂を聞いて…何とか、墓守にしてもらおうと…」

「今はそう呼ばれてるのねえ。私達の時代は…聖域の果て、だったかしら?」

「わしは聖女の墓場と聞いていたがな」

「まあ、そのままね」


部屋の中には、未だに半分泣き顔で手を握っているフェリシアと、上品な老婦人と、年齢の割には日に焼けて筋骨隆々な老人がいた。この2人は夫婦なのだろうか。見ると揃いの腕輪をしているし、会話をする距離感も近い。


「改めてようこそ。ここは貴方の言うところの『聖域の向う側』よ」


老婦人はクスクスと笑いながら、盆の上に乗ったカップをセオドアに差し出した。カップの中には薬湯が入っているのか、フワリと独特の匂いが鼻をくすぐった。



---------------------------------------------------------------------------------



セオドアは国を出た後、あちこちの街を回って「聖域の向う側」の話を聞いて回った。しかし集まる話はハッキリしない噂話ばかりで、1年以上掛けてもどこにあるのか全く掴めなかった。



しかし偶然立ち寄った古書店で、聖女に関する書物の中に古い地図が挟まっていたのを発見した。藁にも縋る思いで地図ごと書物を購入し、その地図を調べてみたところ今のものとは異なる部分があることを見つけたのだ。


今よりももっと小さな国とも言えない集落が多かった時代の地図で、現在の聖域と呼ばれる場所も集落の一つであった。しかしよく見ると、今の聖域と形が違っていた。ほんの僅かではあるが、一部が欠けるように国境線が引かれている。


何となく気になって、聖域を擁するセオドアの生まれ育った国が作った地図と、そこと隣接する国が作った地図を手に入れ見比べてみた。すると、聖域に沿って引かれている国境線が各国では僅かにズレて、その部分が空白のようになっていたのだ。



セオドアは、ここが「聖域の向う側」であると確信した。



そこからその場所に辿り着くには大変な困難が伴った。そこを守ろうとする誰かが作り上げたであろう迷宮化した森に阻まれ、幾度となく遭難しかけた。辛うじてまだ腕輪の加護が残っていたので命を落とさずに済んでいたが、そうでなければとっくに森の動物の腹に収まっていただろう。


それでもセオドアは諦めずに何度も聖域の向う側を目指し、ある日崖から足を滑らせて転落した。あちこち怪我をして動けなくなったが、加護の腕輪のおかげでしばらくすれば何とかなる。セオドアはその崖下で回復を待ちながら眠ってしまっていた。


そこを老人に発見され、本来なら放置されるところを、聖女の加護が付いた腕輪をしていたことから特別に連れ帰ってもらえたのだった。



---------------------------------------------------------------------------------



「さあ飲んで。体が楽になるわ」

「ありがとうございます。いただきます」


セオドアは貰った薬湯を一口飲むと、フワリと暖かな力が体の中を巡るような感覚になった。重かった体が一瞬で軽くなるような気がして薬湯を手渡してくれた老婦人をまじまじと見つめた。


「良かったわ、効いたみたいね。元聖女の力でも捨てたものじゃないわね」

「元聖女!?」

「セオ!危ないわ、ちゃんと全部飲んでからにして」


思わずカップを取り落としそうになったセオドアの手を、フェリシアが咄嗟にカップごと包みこむ。


「あ、ああ…すまない、シア。…あの、ここは、その、聖域なんですか?」

「元聖域?聖域の裏口?何て言ったらいいのかしら」


セオドアの問いに、老婦人は何とも可愛らしい様子で微笑む。


「そもそも聖域はね、()()()()()為に作られた場所だったの」



---------------------------------------------------------------------------------



初代聖女が力を込めた聖石は、もとは聖魔法の力を増幅する魔道具の一種だった。その増幅された力で瘴気を浄化するだけでなく、人々の怪我や病を治す治癒の能力もあった。


最初のうちは一度聖石に力を込めれば、数ヶ月はその力を維持できたのだ。だが噂が噂を呼んで、多くの怪我人や病人が聖女の力を頼りに列を成した。その為すぐに聖石の力は空になり、毎日力を込めなければならなくなった。


それでも初代聖女は人々を救う為と嫌な顔一つ見せずに惜しみなく力を使っていたが、やがて休む間もなく真夜中でも次々と力を必要とされるようになり、手に負えなくなるとそこからあぶれた者達から不満が出るようになった。

更にその力にあやかろうと金や権力などが大きく動くようになってしまった。


このままでは余計な争いを産むと危惧した初代聖女の夫と、聖女の親友でもあり夫の妹が協力して聖域を作りそこに聖女を匿い、神殿を建てて聖女を神格化したのだ。


聖域を作り上げた聖女の夫は、聖石を構築する程の腕の良い魔道具師だった。いくつかの神の奇跡と思わせるような現象を起こす魔道具をこっそり設置して、聖女の力を個人が独占しては神より天罰が下る、という演出を行った。そしてそれが功を奏して、無事に初代聖女を聖域に避難させることに成功したのだ。



---------------------------------------------------------------------------------



「聖女の力でなくても医師や治癒魔法を使える者がいるのだから、怪我人や病人はそちらに行ってもらって、聖女の力でしか出来ない瘴気の浄化を専門に行うように棲み分けたのね。その為には徹底した聖女の神格化が必要だった。聖女は神に等しい故に、補佐官以外の人間とは関わってはならない、とね」

「…それは、分かりましたが…では何故ここにシア…補佐官と、貴女が、元聖女様がおられるのでしょうか?」

「いくら他者の悪意から聖女を守る為と言っても、外にも出られず一生補佐官としか会えない空間に閉じ込められるなんて、それってただの拷問じゃない?」

「拷問…それは、そう、ですが」

「だからね、誰にも気付かれないように聖域に裏口を作ったの。歴代の聖女も補佐官も、ここから出て、他国で普通に過ごせるようにね」


瘴気の浄化以外のことに聖石の力を使わなくなったおかげで、力を込めるのは数ヶ月に一度で済むようになった。


「ここの場所の隅に転移の魔道具があってね、他国に幾つかある拠点に簡単に移動できるようになってるの。私も若い頃は海辺の街で働いてて、そこで夫と出会ったりしたのよ」


そう言いながら彼女は隣にいる老人に視線を送った。やはり予想通り2人は夫婦だったようだ。


聖石に力を込める以外に、国から奉納される食糧や生活必需品を受け取る為に数日に一度は聖域に戻らなければならないのだが、それは補佐官と上手く交替して対応することになっていた。ベールを被って結界越しに応対するだけなので、今までバレたことはないと少々自慢げに彼女は言った。


「…と言うことは、妹、キンバリーも自由に外に出ている、と?」

「セオ、キンバリーは最近結婚したのよ」

「はぁっ!?」


フェリシアの衝撃的な発言に、セオドアは思わず目を剥いた。


「そうそう、砂漠の民の結婚式なんて初めてだったけどキンバリーちゃん綺麗だったわねえ」

「ごめんね。この前皆で結婚式に招待されたから行って来たの」

「え、待って。頭がついて行かない」


キンバリーは、転移してあちこちの国を回っていたらしいのだが、国土の大半が砂漠という国に行った際に、そこの族長の次男に一目惚れしたらしい。

セオドアとしては生意気だけれど可愛い妹がいつの間にか結婚していたという事実に頭を抱えた。内心報せて欲しかったとは思った。事情が事情だけに報せたくても出来ないのは理解していたとしても、心情は別物だ。


「あの…元聖女様」

「そんなに畏まらなくていいわ。ローゼで構わないわ」

「ローゼさ…んは、元聖女様なんですよね?俺は何年も前に亡くなったと聞いていましたが」


ローゼ様、と呼ぼうとして、彼女から瞬間的な威圧を感じて呼び直した。


「亡くなったのは補佐官だった親友。確かに聖石に力を込められるのは私だったけどね、実質私達は2人で聖女なのよ」


初代聖女から、聖女か補佐官のどちらかが亡くなったら聖女は終わりだと定められていた。聖石に力を込める作業は、その魔道具との相性もあるのだが、精神的な部分も大きく左右するらしい。初代聖女も、親友を先に亡くしたことが切っ掛けで力を込めることが出来なくなってしまったと言われている。

歴代の聖女達も、補佐官が先に亡くなった場合は力がひどく不安定になってしまったらしい。不安定な力は魔道具に悪影響を及ぼすとして、どちらかが先に亡くなった場合は聖女が亡くなったことにして交代することになっていた。


「彼女のお墓はここにあるから、たまに彼女の夫がお墓参りに来るわ。そのうちに会うかもしれないわね」



---------------------------------------------------------------------------------



セオドアはフェリシアと手を繋いでこの「聖域の向う側」を歩いていた。


それほど広くない土地ではあったが、数件の家と畑があり、そして小高い丘のようになっている場所には幾つもの墓標が見えた。その墓も良く手入れされて、まるで美しい庭園のようにも見えた。


「今はローゼさんと旦那さんだけがここで暮らしているわ。昔は、元補佐官の家族が住んでいたこともあったそうよ。みんな、一度は外で暮らすのだけど、最後はここに戻って来て静かに暮らすのですって」

「そうなんだ。…シアは、これからどうしたい?」

「そうね…私もセオとどこか別の場所で暮らして…どこでもいいわ。セオと、ずっと、一緒にいたい」

「俺もだ」


互いの絡めた指をどちらともなく強く握り締めた。



「もし、俺がここに辿り着けなかったらどうするつもりだった?」

「そりゃあこっちから探しに行くわよ。と言うか、もう結構探してたんだけど?本っ当、あっちこっちウロウロしてたから見つからなくて苦労したわ」

「ごめん…って、でも俺は偶然ここの存在を知っただけで、全然こうなってるなんて知らなかったし!」

「それは悪かったとは思うけど!もうちょっと気付いてくれても良かったと思うのよ!」

「……何のことだ?」


フェリシアは少し拗ねたような表情になって、セオドアの身に付けている加護の腕輪をちょん、と突ついた。


「ここに、キスして」

「は?」

「いいから!この石の部分!」


腕輪には、小さな緑色の石が嵌まっていた。これは紛れもなくかつてセオドアがフェリシアに結婚の約束として贈った腕輪に付いていた宝石だった。彼女の瞳の色に合わせて探しまわってやっと見つけた石だったので、見間違う筈がなかった。この腕輪が贈られて来た時は、まるであちらから完全に縁を切られたような気持ちになって、しばらくは見られなくて箱の中に入れていた程だった。


彼女に言われるままに、セオドアは自分の腕輪に唇を寄せた。すると、カチリと小さな音がして、腕輪の一部が外れた。


「これ…手紙?」


腕輪の中が空洞になっていて、その中に小さく丸められた紙が入っていた。それを取り出して広げると、小さな文字であったがこの場所の説明と地図がフェリシアの癖のない綺麗な文字で綴られていた。


「これ…気付くの難しすぎない?」

「うっ…キンバリーにも言われた…『お兄ちゃんは単純だから、あんまり凝ったことすると気付いてもらえないよ』って…」

「それは…否定できない」

「何か、ゴメン」


聖域に入ってしまう聖女と補佐官は、どうしても再会したい相手一人だけ秘密裏に再会出来る方法を知らせることが出来た。その方法は本人達に任されていたのだが、あまりにも凝り過ぎて伝わらない場合もある。今回はまさにその状態だったのだ。


あまりにもしょげ返っているフェリシアの様子に、セオドアはこれまでの辛かった想いも苦労も何もかもがどうでも良くなって、ただ笑って目の前の彼女をしっかりと抱きしめたのだった。



---------------------------------------------------------------------------------



「お兄ちゃん、今回はこれを送っておいてね!」

「分かった。帰りにギルドに寄って頼んでおくよ」

「今回も干し肉多めで嬉しいわ。ソナ(旦那)が喜ぶのよ」

義弟(ソナ)殿にもよろしく言っておいてくれよ。なかなか珍しい品が多いから、いい値段で売れるそうだ。院長の手紙に書いてあった」


キンバリーに小包を渡されて、交換するように手にしていた紙袋をセオドアが渡す。


砂漠の国に嫁いだキンバリーは、聖石の力を込める作業に影響が出ない程度に婚家で水の浄化を手伝っているそうだ。水が貴重である為に安全性の低い水でも飲用に使わなくてはならない彼の国では、浄化の出来る魔法士はとても大切に扱われている。それにキンバリーは浄化の聖魔法だけでなく、持ち前の明るい人柄で婚家では存分に愛されているようだった。


この渡された小包は、聖域の聖女に奉納される品物とキンバリーの婚家との交換品だ。あまりにも遠い国なのでどの程度の品と交換していいものか未だにハッキリしないが、互いに自国では見たこともない品を珍しがっているのでそう悪いやり取りではないようだ。

この交換品は、隣国からセオドアが孤児院に送っている。孤児院ではそれを寄付として受け取り、バザーなどの売り上げで運営費に充てているそうだ。


人々の寄付金で奉納される品物を、聖女だからと無為に受け取るだけなのは心苦しいとキンバリーが言い出し、フェリシアが自国に還元できないかと考え出した策だ。奉納された品物を近隣国で売ってそれを寄付するのは売買ルートが分かってしまうかもしれない。それで全く国交のないキンバリーの婚家と物々交換して、それを孤児院に寄付することで関節的に還元しているのだ。

今のところこの試みは上手く行っている。もしかしたら今後の聖女達にも引き継がれるかもしれない。



「ああ、あとこれはシアからの。子供達が好きだろうから甘いもの多めだ」

「わあ、ありがと!今度こそ私の口に入りますように!」

「頑張れよ」


砂漠の国は生きることに厳しい環境であるせいか、可能な限り親族が同じ屋敷で暮らす文化であるらしい。その為キンバリーの婚家も、現在15名の幼い子供達がいる。だから甘いものなどはあっという間に食べ尽くされてしまうそうだ。もともと孤児院で沢山の年下の子の面倒を積極的にみていたキンバリーは、子供達に囲まれて暮らすことを喜んでいるようだ。



聖女の役目を終えると、嬉しそうに土産を抱えたキンバリーはすぐに転移して砂漠の国へと戻って行った。


---------------------------------------------------------------------------------



セオドアも別の転移の魔道具を起動させ、フェリシアと暮らしている街へと戻る。そろそろ夕闇の迫る街は、人々が慌ただしく家路に向かっていた。


少し遠回りをして小包を送ってもらう為にギルドに立ち寄る。思っていたよりも混んでいた為、手続きを終えて外に出た頃にはすっかり暗くなっていた。


「セオ」

「シア!待ってたのか?」


ギルドを出たところで、フェリシアが笑いながら手を振っていた。


「帰り道でセオがギルドに入ってくの見えたから一緒に帰ろうと思って。結構時間掛かったのね」

「うん、思ったより混んでた。これから夕食の支度すると遅くなるな。何か食べて帰ろうか」

「じゃあこの前初めて行ったお店にまた行きたいわ!」

「ああ、デザートの種類が多くて悩んでたとこだな」

「さすが分かってる!」


フェリシアは嬉しそうに笑うと、セオドアの腕にしがみついた。その彼女の腕には、セオドアと揃いのデザインの腕輪が光っている。


2人は他愛のない話で幸せそうに笑い合いながら、暖かな光が灯り始めた街中に紛れて行った。その後ろ姿は、何処にでもいそうな仲睦まじい夫婦にしか見えなかった。



---------------------------------------------------------------------------------



「今代も無事に良き相手の元に収まったようです」

「それは重畳だね」


ある国の、城の最奥。

そこはかつて国王を務めた男の私室で、限られた者しか立ち入ることを許されない場所である。



部屋の中でゆったりと安楽椅子に凭れながら、穏やかな顔立ちをした初老の男が報告を聞いていた。少しばかり年輪を刻んだ目元は、笑うと皺が深くなって更に優しい表情になる。かつては男女問わず誰もが振り返って溜息を吐くような美貌を有していたが、長い時の中でゆっくりと柔らかい日向のような安心感のある容姿に変化していた。


「少しばかり短気な者がおりましたのでどうなることかと思いましたが、上手く彼の地へ誘導できました」

「君には苦労を掛けるな」

「初代にお仕えすることが我が一族の喜びです」

「ありがとう」



報告をした男は、かつてセオドアに審問官として国境まで見送った男だった。彼は報告書を安楽椅子の側のテーブルの上に置くと、深く一礼をすると静かに部屋を後にした。



「今代も、君の望むようになったよ。褒めてくれるかい?」


一人になった男は、壁に掛けられた女性の肖像画に話しかける。その肖像画は、この国では最も有名な女性、初代聖女の肖像だ。

男は顔の脇でサラリと揺れる自分の長い髪を耳に掛ける。その為あらわになった耳は、特徴的な尖った形をしていた。



この男は、長命で豊かな知識を持つ種族と言われるハイエルフであり、この国の建国王であり、そして初代聖女の夫であった。



初代聖女は寿命を迎え息を引き取るまで、彼が用意した光に満ちた美しい聖域で穏やかな時間を過ごしていた。そこで彼女は自分達が作り上げた聖女信仰の制度によって続く聖女達が決して不幸にならないように、そして自分のように幸福な人生を送れるように、と遺言を残した。


それ以来、玉座を譲って表に出なくなった彼は、密かに彼女の遺言を守り続けていた。


あと何代の聖女達を見守れるかは分からない。けれど長い時を掛けて自分がいなくなった後も聖女達の幸福を支える為の下地は出来ている。



いつか、長い時の果てに再び愛しい妻に会う時が来たならば、きっと昔のように抱きしめてくれるだろう。



そう確信しながら彼は妻の肖像画を見つめる。動かない筈の彼女が、ほんの少しだけ微笑んだような気がした。




お読みいただきありがとうございました!



おそらくちゃんと物語にはしないと思うので補足的な裏話。


ラストに出て来るハイエルフさんは、妹が生まれつき瘴気を発生させる特異体質だった為に一族から追放され、治療方法を探していた時に小さな集落で治癒師をしていた初代聖女と出会います。

体質が合ったのか妹の瘴気を浄化することに成功しますが、膨大な魔力を消費するため、聖女の負担軽減のために兄が聖魔法を増幅する魔道具聖石を開発。しかし、当時の国王がそれに目を付け妹を排除して聖石を独占しようと目論んだため怒った兄が王位を簒奪。現在の国の建国王となり、聖女と妹を守る為の神殿と聖域のシステムを構築しました。

妹はやはり体質のため長生きは出来ずに若くして亡くなり、ショックから聖女は精神的に不安定に。そのまま国を捨てて引退するつもりでしたが、亡くなった妹の遺骸が朽ちずに瘴気を発生し続けることが発覚し、聖石で浄化し続ける為に聖女は必要な存在となりました。

兄は妻の初代聖女が亡くなった後も、密かに魔道具のメンテナンスを続けながら生きています。もともと初代聖女専用に作られた魔道具なので魔力の強さよりも相性が重要となり、歴代聖女達は完全に魔力が一致していない為に精神的安定がないと正しく聖石が作用しません。そのために彼女達の幸福を守る必要があるのです。


そんな裏設定でした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ