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第13羽

ある日の朝・・・・・


「くかーすぴい~・・・」

「・・・しきりの意味よ」


狭い部屋の真ん中にカーテンでしきりを作ったにも関わらず、ラストの布団の中ですやすや眠るミカエラ。


「まあ、こいつの寝相の悪さなんて小さい頃から慣れてたしな。窓の外へ飛び出さなくなった分マシになったぐらいだ」


子どもの頃寝ぼけて孤児院の窓から飛び立ったミカエラをラストが決死の思いで食い止めることが何度かあった。騒ぎを聞きつけたキリュウが止めてくれなければ二人とも行方不明になっていただろう。勿論ミカエラはそのことを全く覚えていなかった。


「・・・ったく人の気も知らんで」


ラストはミカエラを起こさないよう布団から出て朝食を済ませると、ミカエラの分の朝食を用意し、『ギルドに仕事に行ってくる。洗い物と洗濯と掃除を頼む』と書き置きを残して部屋を出てギルドへ向かった。




「きゃあああああああ!!!どうしたのラストくん!その翼!?」


ギルド中に響き渡る悲鳴。ざわめく冒険者達。


「なんだなんだ?」

「おい、あれって・・」

「錆色・・・だよな?」

「錆びてねえけど・・」


「・・・・・ベルさん、声が大きい」

「あ、ごめん。・・・でもだって!」

「実はかくかくしかじか・・・」


ラストが説明すると、ベルはなんとか納得したようでいつもの調子を取り戻す。


「でも本当に驚いた。まさか黄金の翼にそんな力があったなんて」

「自分でも驚いてますよ。特訓も重ねてなんとか飛べるようにはなったので、簡単な荷運びや採集の依頼を受けたいんですが」

「あ・・・そうね。でもラスト君。ギルドの規定によって初めて街の外へでるときは必ず引率者か、最低でももう1人冒険者と一緒じゃないとダメなのよ」

「そうなんですか・・・」


そう言われてラストはギルド内部を見渡す。冒険者達は目が合いそうになるとそそくさと立ち去ったりばつが悪そうな表情をする。ラストが襲撃してきた悪魔を追い詰めた話はギルド中に出回っており、あの『七翼』の一角でもあり、最上級Aランク冒険者でもある『黄翼』が認めた存在でもある。しかし、ラストの実力を直接目にしていないこと、今まで飛ぶことすらできなかったラストの評価のあまりの上がり具合に冒険者達はかなり戸惑っていた。そのため、以前のように突っかかることはなくなったが、かといって同じ冒険者として認められたわけでもなく、ラストの立ち位置はかなり微妙なものとなっていた。

そんなラストの引率者あるいはともにチームを組もうなんて思う者はこの場にはいなかった。


そう、この場には


「話は聞かせてもらったよ!」


またしてもギルドに響き渡る声。勢いよく開け放たれた扉から飛び出してきたのは


「だ、誰だ!?」

「女の子?」

「ちょっとまて!あれは・・黄金の翼!」


ざわめくギルド内部を突っ切ってラストたちの元へ駆けて行ったのは


「そう!この私!ミカエラちゃんです!」キラッ

「なにしにきた」イラッ

「あ!ラスト、朝御飯ごちそうさまでした。個人的にスープの味付けはもう少し薄目が好みです。それより!」


突如現れたミカエラに対し不機嫌な表情を隠そうともしないラスト。そんなこと気にもせずミカエラは続ける。


「私がラストの引率者・・・ううん、私も冒険者登録してラストとチームを組みます!いいですか受付のお姉さん!」

「え?・・ええとあなたは?」

「私はラストの家族の者です!」

「ええ!?・・・こほん、失礼しました。ですがあなた街の外へ出たことは」

「学生の頃演習や課外授業で何度か!」

「それなら登録すればすぐにでも・・・」

「ちょっと待て」

「なによラスト、今話の途中なんだけど?」


そこへラストが割ってはいる。話に水を差されたミカエラが文句を言う。


「・・・ベルさん、引率をお願いできますか?」

「え?・・ええ?私ですか?別に構いませんが・・」


ベルがちらっと横目で見ると、案の定怒りで頬を膨らませたミカエラがいた。


「だから!あたしが一緒に行くってば!」

「お前、この間あんな危ない目にあったの忘れたのか?街の外には悪魔は勿論、魔物だっているんだぞ!

そんな危ないところにただでさえ狙われやすいお前を連れて行けるわけあるか!」

「私、安全なはずの街の中にいて襲われたんだけど?」


これにはラスト含めギルド職員も黙らざるをえなかった。


「それに、そんな危険な所にラスト一人で行かせられるわけないでしょ。私は心配で心配でたまらないよ。それに約束したじゃん。同じ景色を見ようって」

「・・・・・本気かよ」

「本気と書いてマジだよ。私の力ならラストが怪我した時も治すことができるし。それに私は元々外の世界を旅したかったし!」

「それが本音じゃねえか」

「今はそれが『本音』ってことにしといてあげる」


ミカエラの言うことの意味が分からずに首を傾げるラスト。そんな二人をベルは温かく見守っていた。


「二人ともいいですか?では、ミカエラさんの冒険者登録をしてもかまいませんね?」

「はい!お願いします!」

「危なくなったらすぐに引き返すからな」

「そのときはラストが守ってくれるでしょ?」

「・・・はあ、わかったよ。好きにしろ」

「うん、好きにする!」

「・・・・・はい、これで登録は完了しました。

どうぞ末永くお幸せに」

「ベルさんなんかそれ違くないですか?」





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