隔世之感
9年越しの太陽がすごく眩しい
「おい。5人とも突っ立ってる暇なんてねぇ。急いで乗り込め」
『は、はい!』
乗った車はガスが入ってこない特殊な装甲車
車が進むにつれ、見えてくるものは悲しい現実だった
亡くなった人々を埋葬なんて、できるはずもなく白骨化した骨がそこら中に散らばっている
首から下げたペンダントを強く握る
「こんな状況で、生存者なんていんのかよ」
朝陽の言葉に皆が唾を呑み込む
この状況を見て、誰もが生存者は居ないのではないのかと考えてしまったからだ
「馬鹿野郎。お前らがそんなこと思ってどうする。今も助けを待って必死に生きてる人もいるんだ。しっかりしろ、何のために今まで訓練してきたんだ。助けたい人がいるんだろ。だったらただ、信じろ」
隊長の言葉に頷く
そうだ。俺は、絶対に父さんと妹を見つけるんだ
しばらく進むと、車が停止した
「色葉、確認しろ」
「了解です。隊長」
色葉は、機械の扱いに優れていて、物体の温度や大きさをドローンで図り、周辺にいる人や物を調べる事ができる
「1キロ圏内に、人の反応はありませんが、鉄など資源は確認出来ます」
「よしっ、外に出る準備をしろ。色葉は場所を誘導、接近反応あれば随時教えてくれ」
『はい』
軽量の斜めがけカバンと通信機を耳につけ、車をおりる
嘗ては賑やかだったであろう町が荒れ果ててしまっている
「準備はいいな?油断したら死ぬと思え」
『はい』
今も尚、有毒ガスは消えていない
そんな中、天才発明家と呼ばれるミチルにより、シールドが開発された
腕に着けたブレスレットの中央のボタンを押すと、全身がシールドに覆われ有毒ガスや放射性物質から身を守るのだ
だが、敵の攻撃を受けブレスレットが破壊される事件が起きた
そのため、ガスマスクの所持が必須とされ、空気を通さない特殊素材の黒色のつなぎ服が指定された
「今回は二手に分かれる。俺と海人と星空、永遠と朝陽。何かあったらすぐに言え。地上だけでなく、上空も注意しろ」
『はい』
「武運を祈る」
俺と朝陽は右の一軒家へ入る
「こちら永遠。色葉入ったぞ」
「了解。1階のキッチンと2階の1番奥の部屋。地図を送信した。赤点を目指して」
「了解」
俺たちが耳に着けている通信機は、中央にボタンを押すと通話でき、側面のボタンを押すと映像が映し出される仕組みになっている
慎重にドア開ける。中は荒れた様子もなく、普通の家…テロなんて起きなければ幸せな暮らしがおくれていただろうに
拳を握る
「永遠…とわ?おいっ、とわ!」
「…っ、どうした?」
「キッチン着いたぞ。大丈夫か?」
「ごめん。大丈夫」
そうだ。今は、仕事だ。余計なことは考えるな
「こちら朝陽。キッチンに着いた」
「棚を開けて、金属類を回収。1人で持てないものは無視して。2階がメインだから」
「了解」
棚を開ける。鍋やフライパンなどカバンから取り出した袋に詰める
「2階行くか」
玄関に回収したものを入れた袋を一旦置き、2階に上がる
「ここだ」
「気をつけろ」
朝陽の入る合図に合わせ扉を開く
「…っ」
目の前には小さな骨と大きな骨がベットに横たわっている
子供を抱きしめながら亡くなったんだと分かる
隣の朝陽を見ると、ベットを見つめている
「朝陽」
「あぁ、すまねぇ」
「こちら永遠。2階に着いた」
「了解。パソコンの本体を改造してマザーボードだけ回収」
「了解」
工具で分解し、マザーボードを取り出した瞬間
外から爆発音が聞こえる
「ガタガタッ。永遠!朝陽!中断だ、今すぐ戻ってこい」
朝陽と目を合わせ頷き合うと、急いで車まで走る
目の前には、隊長に支えられている海人
「回収した物を上に乗せろ。急げ、もたもたすんな」
俺と朝陽は急いで装甲車の上に回収した物を乗せた
椅子に座ると同時に隊長が車を動かす
「ごめんなさい…海人」
横になった海人に星空が手当てをしている
「泣くな。謝るな。敵に位置バレてんだぞ。警戒しろ。色葉。お前は敵がいないか見張れ。遠回りして帰るぞ」
「はい」
「敵からの追跡がない。ここまで来れば安全だ。海人は大丈夫そうか?」
隊長は車を自動運転に切り替え、俺らの方へ歩いてくる
「はい。僕は大丈夫です」
「爆弾か?」
「はい…あの時…」
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「俺はこっちを見るから、海人と星空にはリビングを任せる」
「了解しました」
隊長からの指示があった、その直後だった
星空の足元で小さな膨らみが、赤く点滅しているのに気がついた
「そらぁーーー」
嫌な予感がして、叫んだ
星空が振り向くと同時に、僕は星空を突き飛ばし、爆発に巻き込まれた
体中が痛い…でも、星空を守ることができた
「おいっ、!何があった?いや、今はここを離れるぞ」
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「お前、庇ったのか?馬鹿野郎」
隊長の声が室内に響く
「僕は…星空を守れればそれでいいんだ。唯一の家族で、大切な双子の妹だから」
「海人、守る事は悪いことじゃねぇ。だがな、海人が居なくなって、残された星空はどうなるんだよ。自分を大切にしろ。そして星空、もっと鍛えろ。強くなれ、守られるだけになるな。二人で助け合え」
「はい…隊長」
「全員聞け、こんな事は日常茶飯事だ。いつ誰が死ぬか分からねぇ。油断するな、そういつも言っている意味がわかるだろ。怖いなら、辞めちまえ。まだ、敵と会ってすらいねぇー事を忘れるなよ」
隊長の言葉が胸に刺さる
地下都市へ戻ってきた俺たちは、皆心にそれぞれの思いを秘めたまま解散した