手土産
慧仁親王 堺 1522年
昨日は夕餉を摂ると寝てしまった。グッスリと寝てしまった。その所為か今朝はパッチリと目が覚めた。紫乃の腕枕で寝てしまった様だった。紫乃は宗柏が用意してくれた侍女で、26歳位の深田えいみ似で未亡人だそうだ。何故腕枕だったのかと言うと、ただの添い寝である。2歳児だから仕方ないじゃないか。起きようか、どうしようかモゾモゾしていると、紫乃も目を覚ました様だ。
「あ、お目覚めですか?白湯でもお持ち致しますか?」
「うぬ、頼む」
紫乃はベッドから降りて、白湯の用意をしに行く。『新婚かよ!』と突っ込みつつ、ゴロゴロしながら待つ事にした。
紫乃に添い寝を頼むと行雅などは、『年相応な所があって安心します』とか言っているが、確かに転生前にしても後にしても、違った意味で年相応ではある。顔合わせの時、紫乃に『こんな幼児は気持ち悪くないか?』と聞いてみたのだが、『私は子を授からなかったので、殿下のお世話が出来て幸せです』と言ってくれた。『俺が幸せにしてやる』とは言えないから、給金をはずんでやる事にした。
暫くして紫乃が白湯を運んで来たので、両手を出して抱っこのポーズをすると、
「ふふふ、甘えん坊さんね」
と言って、俺を抱っこして子供椅子に座らせてくれた。『甘〜い!』
白湯を飲みながら、紫乃に宮島旅行の話をすると、ニコニコと話を聴いてくれた。ああ、ヤバい。どストライクだよ。絶対に紫乃を幸せにしてくれそうな、良い男を紹介してやるからな。そんなこんなしてる内に、皆が起き出して、館内が騒がしくなって来た。
「朝餉は鯵の干物と海苔と握り飯、それに味噌汁を付けてくれ」
「承知しました。では、朝餉の用意をして参ります」
〜・〜
朝食を終えて、紫乃の膝枕でゴロゴロしていると、言継が宗柏ととと屋の来訪を伝えに来た。
「堺館完成おめでとう御座います。こちら、完成祝いの目録と、砂糖羊羹をご用意致しました。お口に合えば幸いです」
え、羊羹なんて、この時代に有るの?
「お口に合えばって、合うよ!合う、合う!」
飛びつく様に、羊羹に駆け寄り、
「紫乃!羊羹を切って、お茶を持って来てくれ」
血相を変えた俺を見て、とと屋はちょっと引き気味に、
「堺館完成おめでとう御座います。完成祝いの目録と、『まがり』なる菓子に御座います」
まがり?手に取って包みを開けると、そこには棒状のドーナツが有った。ドーナツ、与兵衛、宗伯と目をやると、与兵衛も宗伯もニヤニヤと頷く。
「ごめん、与兵衛。ちょっと食後にこれは無理だ。羊の刻あたりに頂くよ。嫌いじゃ無いんだよ。寧ろ好きなんだけど、ごめんね」
俺が後で食べると言うと、泣きそうな顔でこちらを見るので、一生懸命にフォローしていると、羊羹が運ばれて来る。令和の羊羹と違います、ざんね〜ん。とか無くて、あの羊羹では無いけど、甘さ抑えめの蒸し羊羹が運ばれて来た。確かに甘い羊羹だ。あ〜幸せ、頬っぺたが落ちそう。
「羊羹は誰に頼めば手に入るんだ?いや、砂糖だ、砂糖。砂糖は誰に頼めば」
「私にお声がけ下さればご用意致します。お気に入り頂けましたか?」
「お気に入り頂けましたよ。気に入った」
この時代ではサトウキビは栽培されていないと思っていたので、砂糖なんて有るとは想像もしていなかった。そうか、輸入が有ったか。もう、頭の中はプリンで締められてた。
姫巫女の戦国平定物語〜弟も転生者だったなんてご都合主義もいい所
https://kakuyomu.jp/works/16816700426978225347
のカクヨム不定期連載を始めました。
この物語のスピンオフです。
自分で書いていて何ですが、聖良女王が大好き過ぎなんです。
本編切り抜きからオリジナルエピソードまで、姫巫女目線で書きました。
どうぞ宜しくお願いします。




