俺だって拝謁するの初めてだもの、テンパリもするよ
慧仁 京 仙洞御所 1521年 師走
「知ってる天井だ、俺の部屋か?」
さすが転生者。禁裏から転移魔法か!
な、訳ないか。
きっと雅綱が運んでくれたんだろうな。ありがたや、ありがたや。
しかし、さすが今上天皇、オーラがハンパなかった。おもう様もああ成れるんだろうか?
まあ、地位が人を作るって言うから、心配要らないか。
お爺様のオーラに当てられてテンパっちゃって、献策間違っちゃった。ん〜、どうしよう。
「殿下、起きてらっしゃいますか?」
「雅綱か?入ってまいれ。」
スッと襖が開き雅綱としかが入ってくる。
「夕餉をお持ち致しました。」
ハイハイ、お粥さんですね。いただきます。
俺の幸せ時間は半分に減らされていた。いわゆる離乳だね。
昏睡状態に見せかけていた時は、母乳だけは受けつけていたので毎食母乳だった。
(お腹も減るし、飲まない訳いかないからね、下心じゃないよ、ないんだからね)
「ところで雅綱、またおもう様に手紙を出したいのだが、代筆を頼む」
先程の献策で重大な間違えが有ったので時間を作って欲しいって事を良い感じに書いてもらった。
翌朝、朝の幸せ時間を終えてゴロゴロしていると、おもう様がやって来た。
おもう様が暇な訳じゃなく、俺がおもう様の所に行くにはハイハイだからね。優しいから来てくれた。
でも、ハイハイのスピードなら、結構いい線いってる、インターハイレベル。
ってか、自分を客観的に見ると映画ベイビートークなんだなってつくづく思った。
「おもう様!」
そのハイハイで近寄って、おもう様の左足にしがみつく。
我ながらあざといとは思うが、人肌にしがみつくって安らぐんだよね。おもう様もニヤニヤだ。
ね、win-winの関係でしょ。誰も傷つかない。
「おもう様!昨日の献策に重大な間違いが有ったのですが、どうしよう、陛下に怒られてしまいます。」
「分かった、分かった、相変わらず見た目と話す内容との差が激しいのう。用件を聞くからとりあえず座ろうか、しか、茶を持て」
「おもう様!近々、征夷大将軍の任命が有るって話じゃないですか!」
「おう、よく気づいたなあ」ニヤニヤ
「では、新将軍が若年って事を理由に反対して、即位の礼を取り仕切った褒美を兼ねて、高国に太政大臣就任を打診すれば済む話って事ですよね。ね。」
「うぬ、陛下は解ってて、上手くやってくれてる。心配するな。」
「あ〜、心配して損しちゃいました。では代わりと言っては何ですがもう二つ、お願い事があるります。」
「何だ、立ち直り早いな、ホホホホホ」
「一つは、大原が受け入れてくれるのなら、春頃に大原に移住したいのですが、お許しを頂きたく思います。」
「ん〜、寂しくもあるが、お前が申し出ると言う事は、今後に関して必要なんだろう。」
「御意」
「ならば許そう。」
「ありがとうございます。もう一つは、15・6歳の公家を面接して頂き、健康で頑丈そうな男子を50人選んで私につけて頂けませんでしょうか。」
「構わぬが、如何する?」
「槍術・剣術を身に付けさせ、佐渡への移住の際には連れて行きます。身分は問いません。窮してる公家の次男以降は如何でしょうか。最終的には20人残れば良いくらいに鍛え上げます。私が大原に移り次第、順次その者達をお送り下さい。」
「分かった、任せておけ。お前が泣きそうな顔でしがみついて来るなんて、良いものが見れた。」ニヤニヤ
なんだかんだ、しばしの親子の会話をして、おもう様は仕事があると楽しそうに帰って行った。
「殿下、お呼びと伺いました。」
キター!!
戦国時代の史料を読んでいたら、1521年師走に義晴が征夷大将軍に就任したのに気がついて、慌てて書き直しました。
結果オーライになってると良いな。