丸投げ
慧仁親王 京都大原 1522年
嫌な事が頭を過ぎる。あれ?甘えちゃったけど、これで中の人が俺より年下だったら悶え死に出来るな。考えない様にしよう。
姉様は食事をしながらも、俺の勧めた鯵の干物をしきりに褒めてくれた。ホント、良い人だ。
「尚子、今日は泊まってく。手配してちょうだい。慧仁、そんなに頑張らなくて良いよ。昼寝の時間でしょ」
食事中から舟を漕いでる俺は、恥ずかしけどお言葉に甘える事にする。
「済まない、身体が言う事を聞いてくれなくて。1刻くらい昼寝をさせて貰う」
「その間、領内を見させて……って、もう寝てるか、ふふ」
〜・〜
あれ、何か体が軽いぞ。幼児だって体が凝り固まるもんだったんだな〜。目もパッチリだ。
「ん?起きた?ねぇ、それってボウガン?借りて良い?」
「良いよ、撃ってみる?」
「うんうん、撃ってみたい」
「弥七!ちょっと姉様を手伝ってあげて」
「え〜、自分で出来るよ」
「いやいやいや、弦引くのヤバいよ」
まあ、言い合ってても仕方ないので、庭に出て試す事になった。姉様は何度か弦を引いてみたが、諦めた様だ。
「ホントだ、弦が硬いね。1回なら引けるだろうけど、連射は出来ないね。火縄銃的な三段撃ちとかなら行けるかな」
「三段撃ちか〜、良いね。」
「狩りにも使えそうだね。私もワンピースボウを作って貰おうかしら。木製なら出来そうね」
「ワンピースボウ?」
「アーチェリーの弓よ。こう見えてもアーチェリー部だったのよ」
ズコッ*
鎧の真ん中に当たったんだけど、ぜんぜん意外じゃなくなってた。四半刻くらいだろうか、納得したのか、ボウガンを返して来た。
と、それを見計らったかの様に作兵衛が声をかけてきた。
「ご指示のものが出来ました。どうぞ母屋の方にでも」
作兵衛の案内で母屋に向かい、通された部屋でお茶を飲んでいると、
「こちらになります」
運ばれて来たのは、うずらの素揚げと、
「親子丼!!」
「うんうん、親子丼だよ。しかも、雉の親子丼。ふふふ」
美味しい、美味しいよ姉様!夢中で親子丼頬張る。
「美味しいでしょ……でもね、作兵衛に聞いたんだけど、椎茸栽培はしてないんだって?テンプレなのに」
「あっ!」
「えっ?」
「えっ!出来るんですか?」
忘れてた。椎茸栽培はテンプレじゃないか!
「私は、たぶん慧仁もあやふやな知識しか無いと思うの。だから成功まで時間がか有ると思うわ」
「そうだね、やってみないと出来るかも分からない」
「戦乱の世が続く副因として、小氷河期による慢性的な作物の不作が言われてたわよね」
「うんうん、そんな話を聞いた事がある」
「ひ、姫巫女様……」
「ああ、言継、私も神懸りなのよ、内緒よ」
「な、な、内緒って」
「そんな事はどうでも良いのよ。問題は20年もしない内に起こる大飢饉よ。それまでに食べられる物は何でも作って欲しいの。だからね、慧仁頑張って、ガンバ」
「姉様、いくらなんでも丸投げって……頑張るけど」
「まあ、後で知識のすり合わせをしよう、分かった?」
「はい」
「まあ、その前に食べ終えちゃおう、ね」
何か、味しない……。
姫巫女の戦国平定物語〜弟も転生者だったなんてご都合主義もいい所
https://kakuyomu.jp/works/16816700426978225347
のカクヨム不定期連載を始めました。
この物語のスピンオフです。
自分で書いていて何ですが、聖良女王が大好き過ぎなんです。
本編切り抜きからオリジナルエピソードまで、姫巫女目線で書きました。
どうぞ宜しくお願いします。




