茶に救われる親たち
津田宗柏 堺 1522年
「2歳だそうだ」
「2歳だそうですね」
「抱っこって言ってた」
「抱っこって言ってましたね」
「噂には聞いていましたが、なかなかね、目にするまではね」
「驚きましたね」
「面を上げたら赤子が上座にって、なかなか無いですからね」
「なかなかないですよね」
「可愛いから余計にね、言葉の強さとの差があり過ぎて」
「話しを聞き逃しそうになりますよね」
「今年産まれるうちの子も殿下くらいに……なりませんね」
「何てったって、神憑りですからね」
「結城屋さん、空気読めなかったですね」
「あの圧でしたのにね、3代目は身上を潰しますね」
「しかしね、1万貫もよく貯めましたね」
「ちょ、何で全額うちが出す体で話してるんですか。 割り勘ですよ、割り勘」
「1人当たり340貫ですね」
「そうなりますね。 でも会合衆で9千貫で、残りを小店に出して貰う感じですかね」
「お茶、良いですね」
「ホッとしますね」
「殿下が起きられた様ですね」
「お茶でもお出しして、いい感じでお話しをしたいですね」
「2歳ですよね」
「2歳ですね」
「抱っこって言ってましたね」
「言ってましたね」
「白身魚がお好きな様ですね」
「店の者を使いに出しませんと、もし、誰か使いに行って来ておくれ」
「お金の匂いがプンプンしましたね」
「婿に欲しいくらいですね」
「まだいろいろ出て来そうでしたよね」
「雰囲気有りましたね」
「天王寺屋さんが、あの時に即答で1万貫出すと言ってくれて良かったですよ」
「良かったですよね」
「あの年で、親王様で、持ちつ持たれつをご理解いただいてるって」
「尊いですよね」
「尊いですね」
「離乳食って何ですかね」
「用意させませんとね」
「離乳食でしたね」
「食べてましたね」
「殿下と話しながら食べてると、つい酒を注ぎそうになりますね」
「なってましたね、2回」
「抱っこって言ってましたね」
「言ってましたね」
「お茶って良いですね」
「やっぱりお茶ですね」




