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前世持ちが当たり前にいるから俺の記憶も前世だと思ったら来世だった

作者: 蒼穹月

 前世持ち。

 それは極有り触れた現象。

 この前魔王を斃して国の姫どころか褒美にパーティーメンバーの美女達と結婚した勇者も前世持ち。

 隣国の圧政により民を悪戯に苦しめた愚王を討ち滅ぼしその座に着いて合法ハーレム築いた現王も前世持ち。

 最高位の巫女なのに逆ハー築いた人も前世持ち。


 あれ?前世持ちってみんな好きモノなのかな?


 いやいや、隣の花屋のおねいさんも前世持ちだし、なんなら去年嫁いで行った実姉も、父や母ですら前世持ちだ。


 なんか俺の周り多過ぎじゃない?


 まあいいや。

 取り敢えず何が言いたいかと言うと、俺にも俺以外の記憶がある。

 どんな記憶かっていっても、人に言いふらせられる様なだいそれた記憶じゃない。


 何せお猫様である。


 それも裕福な家庭で衣食住の不自由も無く、ヌクヌクと自由気儘に生きている猫だ。

 何それ寧ろ前世をもう一度体験したいわ。

 と、過ぎた事を何時迄もクヨクヨ悔やんで前世の俺を羨んでいたら。


 記憶変わった。


 え?何それ何が起きたしどういう事誰か説明して。

 お猫様だった俺の記憶が、


 物乞いにナッテタ。


 いやあああああああああああ!!!!!

 何それ何の罰ゲーム神様俺何か悪い事しましたか!?

 変わった記憶に焦ってジタバタもがいても一向に記憶は変わらない。


 前世の記憶って変わるの!?


 パニックに陥りつつも何とか記憶の修正?思い出し直し?出来ないかとそうなる前の記憶を辿ってみる。


 今朝はいつも通り夜明けと共に起きた。

 その時はまだ俺の記憶はお猫様だった。

 朝ご飯を食べていつもの様に門番の仕事に向かった。

 うん。その時もまだお猫様だった。

 その後辺境の街にしては珍しく外部からの人が訪れた。

 この時は仕事モードに集中してたからわからん。でも多分お猫様だった筈。

 その人は見すぼらしく、ガリガリで、何か病原菌でも持っているかの様に蒼白いを通り越して紫色の顔をしていた。この街の法律では、街に不穏を撒く恐れのある外部の者は立ち入らせない事になっている。

 俺は門番として仕事を全うする義務があった。

 街の人達を護る為の最初の砦が俺達だからだ。

 俺は決まりに従ってその人の入国を拒絶した。

 その人は縋り付き懇願して来たし、俺も可哀想には思ったが、俺一人でどうこう出来る問題では無い。

 一度上司に相談したが、答えは「ノー」一択だった。寧ろ態々聞くなと一喝された。辛い。

 どんなに辛くとも仕事は仕事だ。心を鬼にしてその人を拒絶した。

 その人は追い詰められていたのか、形振り構わず門を抜けようと足掻き駆け出した。

 何とか留めようと阻んだが、スルリスルリと抜けていき上手くいかなかった。


 え?俺門番として結構鍛えてるんだけど。この人何者?


 と、疑問に思っても思案する余裕なんて無くて、焦って突き出した手がその人を突き飛ばしてしまった。

 そしてその人は倒れた時に何処か切ってしまったのか、血を流してしまう。

 しまったと思った時には、


 記憶が物乞いにナッテタ。


 ええええええ!?これ原因!?

 何それどういう事?この人やっぱり危ない人で俺に何か変な術でも施したの!?


 思い出して原因に思い至って、殊更混乱を極めた。


 って、先ずはあの人の手当が先だよな!?

 偶然とはいえ、自分が突き飛ばした形になって怪我をしたその人を放って置くなんて出来なくて。慌てて所持していた回復薬とキレイなハンカチを取り出して近寄る。

 背後で上司や同僚が罵声を発して止めようとしているが、門に入らなければ法は破って無いんだ。俺は俺の良心に従って制止を振り切った。

 側に腰を落として怪我の具合を見れば、その人の意識はまだちゃんと有った。けど元々の具合の所為か、怪我の所為かはわからないけど、もう上手く体を起こせなくなっていたみたいだ。

 俺は慌てて、でもヘマをしない様に、ゆっくりその人に回復薬を飲ませてあげた。

 傷口にも回復薬をかけて、汚れはハンカチで拭ってあげる。

 瓶が丸々一本使い切った頃にはその人はもう顔色も良くなっていた。


 良かった。


 そう思った瞬間。

 俺の記憶はお猫様に戻っていた。


 やっぱりこの人が仕返しに呪いでも掛けていたのか。

 その時はそう思っていた。

 けどその人の自己紹介に拠れば、呪いとは無縁の神官様だそうで、その話に慌てて上司が寄越した鑑定士の結果からも本物の神官様だと判明した。

 その人は国で騙されて罪を被せられて這う這うの体で何とか此処まで逃げて来たのだそうだ。

 それじゃあそんな神官様を無碍に扱った神罰なのかと思っていたけど、似た様な事が何度かあって、そこで俺はもしかしたらと気付いた。


 ああ。コレってもしかして来世の記憶なのか?


 と。気付いてから幾度かの実験を試みた。

 その結果。


 如何やら俺のお猫様の記憶は、悪い事をすると悪い来世に代わって、其れを正し良い行いをすると戻るらしい。


 という事がわかった。


 コレが本当に来世の記憶かどうかは実際に来世にならないとわからないだろう。

 でもそれが本当なら悪い来世にはしたくない。というかお猫様になりたい。


 だから今日も俺は善を尽くして天命を待つ。


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