表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦史研究学科の異端教師  作者: 楊泰隆Jr.
1/25

世界大戦

書いていた小説が一区切りしたので整理して連続で投稿したいと思います。

 日本主観の世界大戦開始前夜から終戦後までの年表。

 統一歴1919年、人間の持つ魔力が発見される。

 統一歴1929年、『清帝国』が魔力を軍事転用し、魔導戦士が誕生する。

 統一歴1932年、清帝国が全世界に宣戦布告。旧時代の装備を寄せ付けない圧倒的な力を持つ魔導戦士がアジア、中東、ヨーロッパに侵攻する。勢いは止まらず、最大版図は『モンゴル帝国』を超える。

 統一歴1936年、日本、九州、沖縄を喪失。

 統一歴1938年、清帝国は国名を『世界帝国』と改め、世界の支配者であることを各国に宣言した。

 統一歴1939年、世界各国は『世界同盟』を結成して、帝国に対抗すると同時に魔導戦士技術の共有を開始した。

 統一歴1940年、日本が『下関の戦い』で帝国軍に初勝利する。

 統一歴1941年、山本重二三を総司令官にした日本魔導戦士軍が『九州奪還戦』を開始する。

 統一歴1944年、九州奪還戦終結。九州を解放する。

 統一歴1945年、九州防衛戦、沖縄奪還戦、東南アジア解放戦、北海道防衛戦が展開される。

  同年、沖縄に帝国軍の大軍が襲来し、日本軍は転戦する。民間人の救出に成功。

 統一歴1946年、各戦線が膠着する。

 統一歴1950年、戦争の泥沼化。世界帝国と世界同盟は停戦協定を結んで、世界大戦は終結。終戦後、世界帝国と世界同盟には多数の魔導戦士と魔導戦士を養成する魔導戦士軍士官学校が残された。

 統一歴1954年、世界帝国と世界同盟に『魔導戦士抑制軍縮条約』が締結された。 



 1945年、沖縄、とある研究施設。

 僅かな光が差す牢屋の中に少女は居た。一緒に居た子供たちはもういない。少女が最後の一人だった。


 もう嫌だ…………


 薬物の投与で肉体も精神もボロボロだった。

 注射を打たれすぎて、腕は変色していた。


 もう殺して…………


 六才の少女はそんなことを願った。

 今日も扉が開く。

 嫌だ、と叫びたかったが、声が出ない。

 嫌だ、と泣きたくても涙が出ない。

 嫌だ、と逃げたくても体が動かない。

 

 死ぬまで苦しむんだ…………

 

 わずかに残っていた意識でそう思った。

 しかし、その日は違った。

 少女の前に女性兵士が現れた。

「ブン君が言っていた生存者って君のことね。可哀想にこんなになるまで…………ごめんね、もっと早く助けにこれなくてごめんね。もっと多くの人を救えなくてごめんね」

 日本語だった。日本軍の兵士だった。

 女性兵士は少女の為に泣いた。抱き締めた。鈍くなっていた少女の感覚でも分かるくらい暖かかった。

「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………!」

 もう出ないと思っていた声が出た。

 もう出ないと思っていた涙が出た。

 もう動かなかったはずの腕が動いて、兵士さんに抱きついた。

 少女は命を拾うことが出来た。

 しかし、これで安心をできたわけではなかった。

 沖縄戦の状況は良くなかった。

 帝国軍の猛攻が開始されて、民間人は兵士に守られて、沖縄から逃げた。

 この撤退戦は奇跡と言われ、民間人の犠牲者は一人もいなかった。

 助けられた少女も何とか日本の本土へたどり着く。



 少女は自分を救ってくれた兵士のことを入院していた病院の先生に聞いた。

 病院の先生は『大和冴香中尉』だと答えた。

 大和冴香は後に『英雄』と称えられる。

 しかし、少女がさらに『三人』のことについて尋ねると先生は返答に困った。

 少女の言った三人とは、いつも大和冴香と一緒にいた三人のことだ。

 先生は少女に「分からない」と答えた。

 沖縄戦後「沖縄から民間人を連れて帰還した英雄」として称えられたのは大和冴香だけだった。

 少女が三人のうち一人を知ったのは終戦後だった。

 大和冴香が出した沖縄戦に関する手記で『我那覇信重』さんという『薔薇の義勇連隊』の女連隊長のことを書き記したからだ。

 しかし、手記にもあとの二人のこと、男性一人、女性一人のことは書かれていなかった。

「あれは私の勘違いなのかな?」

 十六才になった助けられた少女、『眞境名里香』はボロボロになるまで読み返した大和冴香の手記を捲りながらそんなことを呟く。

「そんなはずないよね…………私、覚えているよ。それに…………」

 ある日、理香はいつも辛そうな表情をしている男性の兵士に「これ」と言って、支給されたチョコレートを渡したことを覚えていた。

 しかし、男性の兵士は「ごめん、私は甘い物が嫌いなんだ」と言い、関わろうとしなかった。

 確か「ブン君」と呼ばれていた気がする。

「ヤバッ、もう時間じゃん」

 理香は鞄を掴んで寮を出た。

 理香は現在、群馬県渋川支部の魔軍士官学校に通う士官候補生だ。

 将来の目的は軍人になって、故郷を取り戻ること。沖縄を取り戻すこと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ