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幕間3-03.休憩を巡る問答と新たなフラグ

 馬車で丸1日と徒歩で鐘一つ分。

 私達は目的地のミスリル鉱山。その麓に到着した。

 ここから鐘一つ分の登山。なのだけど私の体力が果たして持つかどうか結構不安。

 ここまで歩いてくるのも大変だった。

 というのもなんでもないところで躓いてこけそうになったり、少しでも気を抜くと簡単に置いて行かれそうになる私と違って他の皆は歩くっていう行為に慣れてるから、私は置いて行かれないように早歩きで必死に歩かないといけなかったからだ。

 アメリアやコーネリア。[[紅の絆]]の皆はどんくさい私のことを知ってるから何度も私の傍に来てくれては私のことを気遣ってくれた。

 特にアメリアは「ユーリ、ボクがユーリをおんぶするよ?」と言ってくれてたんだけど、なんとなく他の人達にその光景を見られるのが恥ずかしくて、それと少しだけ私もハンターなんだからって見栄を張りたくてやんわりとアメリアのその申し出を断って私は頑張って歩いた。

 それにしてもこの団体のリーダー、Sランクパーティ[[宵の明星]]のデュールって言ったっけ?

 その人はもう少しだけ周りに気を使うべきだと思う。

 私のことじゃなくて、私以外にもここまで結構な強行軍だったせいで疲労している人が数名いる。

 それなのにその人達のことをまるで意に介してない。

 ついてこれないほうが悪いという態度。リーダー向いてないんじゃないかなぁ。

 そのデュールが私達を見て告げる。


「諸君、我々はこのまま山を登り不当に鉱山を占拠している邪族共を討伐しようと思う。なぁに、諸君らにはこのデュール様がいるんだ。大舟に乗ったつもりでいて欲しい」


 えっ? このまま進むと? この人の目は節穴かな? 案の定ちらほら聞こえてくる不満の声。


「おい、お前には疲弊してる連中が見えないのか? 無理せず一旦休憩にすべきだ」

「私もその意見に賛成です。このまま行っても士気が落ち続けてまともな戦いになるとは思えません」


 強行軍に反対する人達の意見は最もだ。

 私もそうするべきだと思う。

 このまま無理に進んでも肝心なときに体力がなくて戦えないんじゃ意味がない。

[[紅の絆]]と[[蒼の泉]]のメンバーからは事を慎重に進めるべきの声が多数。

[[天使達の茶会]]のメンバーは全員中立。

 それに対して[[宵の明星]]の2人はまるで聞く耳を持たない。

 何が何でも今すぐ行って早めの決着を推し進めようとする。


「休憩はない。我々は一刻も早くミスリル鉱山を取り戻さねばならん。陛下のため、民のため、鉱山に巣食う邪族共をさっさと駆逐するのだ」

「そうね。あたしも父さんの意見に賛成。・・・ねぇ、父さん。なんならついてこれる人達だけで行けばいいんじゃない。足手まといはいらないし」


 ア・・・。なんだっけ? 私と喧嘩した人。

 蛙の子は蛙ってことだろうか。この表現ってこんなときにも用いていいんだっけ?

 この状況が全然分かってない。ため息が零れる。

 どうしたものかと思っていたら[[蒼の泉]]の男性メンバーから声。


「行きたいなら行けよ。俺達はマリア達の回復を優先させる。大体女性と男性の歩幅を考えないから女性達の疲労が濃くなるんだろうが! 言っても速度を全然緩めようとしねぇし。あんた達はあれだろ? 俺達のことなんざ元々目に映ってねぇんだろ? 行けよ。行って手柄立ててこいよ。俺達はそんなもんよりパーティメンバーが大事だ。俺達は何を言われてもここに暫く残るぞ」


 へぇ、あの人の方がよっぽどリーダーに向いてる気がするなぁ。

 名前なんだっけ? ヘイニルだったっけ? ついていくならデュールよりこの人がいいな。

 さて、ここまで言われて[[宵の明星]]の2人はどうするかな? と2人を見る。

 これで何かしら思ってくれたらいいのだけど。という私の願いは届かないらしい。


「ふんっ。弱者はいらん。そこで好きなだけ休んでいたらいい。我々は行くぞ」

「はい、父さん」


 捨てセリフのようなものを吐くと2人は私達に背を向けてさっさと鉱山に向け歩きだした。


「貴方達はどうするの?」


 残った[[天使達の茶会]]のメンバーに問うてみる。

 それぞれ顔を見合わせるメンバー達。


「俺達は別にどっち派ってわけじゃないが、あのまま2人で行かせて万が一ってこともあるかもしれねぇ。そうなったら目覚めが悪いからな。俺達も着いていくよ。こんなでも少しは助けになるだろ」

「そっか」

「おぅ。まぁああれだ。ゆっくり休んでてくれ。だが疲れが取れたら早く来てくれよ。俺達はまだ死にたくねぇからな」


"ワハハハハ"ってこの人達少し残念な人達だけど悪い人達じゃないんだよね。

 万が一があると目覚めが悪い。か。それなら私もそうかな。

[[宵の明星]]の2人は正直呆れてどうでもいいけど、この人達には死んで欲しくない。

"ちらっ"と[[紅の絆]]の皆を見る。アイコンタクトで伝わる私の考え。


「じゃあ行ってくるな」

「あ! ちょっと待ってください」

「ん? なんだい。ユーリちゃん。もしかして茶会に付き合ってくれるとか?」

「はい。全部終わったらお茶会しましょう。だから皆さん、生きて帰って来てください」

「なーんてな。そんなわけ。・・・・・・・え? 今お茶会しましょうって言った?」

「ええ、言いましたよ。[[紅の絆]]全員でお付き合いします。ただし、接待ではないですよ? 普通にお茶会に付き合うだけですからね?」

「お、おう・・・。これ夢じゃねぇよな」


 夢じゃないよ。

 え~っと、泣く程嬉しいことかなぁ。

 男6人が全員男泣きしてる。

 別に男は泣くな! なんて言わないけど、泣き方に若干引く。

 お茶会に付き合うって言ったの早まったかな。

 ううん、それくらいいいよね。

 喜んでもらえるなら女性冥利に尽きる・・・でしょう。


「ユーリちゃん、ありがとう」

「「「「「ありがとう、ありがとう」」」」」


「ひっ!」


 男性6人に囲まれてそのうちの1人に両手を握られて目の前で鼻水と涙流しながらお礼を言われる私の図。

 想像してみて欲しい。

 悲鳴を上げてしまったのは仕方ないと思う。

 その後[[天使達の茶会]]のメンバーは私を怖がらせた罪でアメリアに叩きのめされても皆、笑顔で出かけて行った。

 残った私達は思い思いの場所に座って一旦休憩。

 私はアメリアに寄りかかってのんびりしながらふと思う。


 こういうときって・・・。


「後から追いついたパーティの目の前にあるのは悲惨な光景だった。なーんて。・・・・ひっ! ユーリ、顔怖いっ」

「ラナ、私言ってるよね?」

「な、何を?」

「フラグ立てるなって」

「え、でもまさかそんなぁ。先行したのSランクハンターだよ?」

「だからそういう・・・」

 

 ハァ。やな予感。

 早めに休憩切り上げた方がよさそう、ねっ。

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