3-01.トロール
第三部スタートです。
-1年後-
月日がそれだけ経てばそれなりに色々な出来事が起こった。
まず私達はハンターランクBになった。初心者を卒業して中堅ハンターだ。
実のところギルドしてはさっさとAランクに上げたいみたい。
でもそれはこちらで断ってる。というのもAランクに上がると少々面倒くさいことになるから。
何故ならAランクは国の雇われハンターとなって国に縛られるようになるのだ。
その分待遇は良くなるけど。でも私達としては自由でありたいって思ってる。
だって世界を旅したいし。その為にはAランクの称号なんて邪魔でしかない。
そんな私達だからハンターランクは一生Bかもって思ってる。昇格試験受ける気ないからね。
それで他にはアンナさんとラナさんの2人が私達[[紅の絆]]のメンバーになった。
うん、今までずっと2人は[[大地の息吹]]のままだったんだ。
<私達はこっちの大陸でもそのパーティ名を登録してた>
パーティを変えちゃうとリゼさんが本当に亡くなったんだって実感することになるからって。
気持ちは分かるから私達は特に何も言ったりはしなかった。
というか私も同じ気持ち感じてたし。
だけど私達のパーティに変わるその前日、リゼさんのお墓参りに行った2人はおかしな現象に見舞われたみたいで。それはいつかの私が私の母親の霊らしき光と会った時と似てて。2人はリゼさんの霊に会ったらしい。
「いい加減に前を向きな」って叱られたって2人は泣き、笑いながらそう言っていた。
そして2人は決意して私達のパーティに加わった。
リゼさん、私も会いたかったな。今度お墓参り行ったら会えるかな。あのときは遠慮してたんだ。
2人で話したい事もあるだろうって思って。
事実2人はリゼさんと再会する前も後も沢山話したらしい。
リゼさんに言われても迷って当然だよね。
2人が抜けると今の[[大地の息吹]]はこの世界から消えてしまうのだから。
パーティ名の重複はそうならないようギルドで管理されている。
同じ名前を申告してもその場であっさり弾かれる。
けれどそれが解散や全滅となった場合には1年の刻を得たら取得が可能になって早い者勝ちで決まる。
[[大地の息吹]]ももしかしたら・・・。
2人はそんなリスクを負っても[[紅の絆]]に移転することを選択した。
その決意を無駄にしたくない。リゼさんもきっと見守っていることだろう。
責任重大だ。頑張ろう。アンナさん、ラナさん、これからもよろしくね。
後、大きなことと言えば魔族の襲来で休園せざるを得なくなっていた学園が復興を遂げてまた新しく始まった。
経営陣なんかは前々からいた人は殆ど亡くなってしまったために事実上一新されてのスタート。
学園に再び通うのは以前で言う特別クラスの面々は全員すでにハンターとなっているので普通科に振り分けられていた生徒達。私も何故か臨時講師として招かれた。受けるか悩んだけど、一応話を聞くだけ聞いてみようと行ったまでは良かったのだけど・・・。
◇
ここからが現在となる。
私は新しい学園長から提示された臨時講師就業要項に一通り目を通した後、深くため息をついた。
一言で言ってこれは【奴隷】になれと言っている条件だ。
とても就業と言える代物ではない。
授業だけでなく生徒達の放課後の付き合いからその他のアフターケアに至るまで全部こちらにやらせようとする案件。それでも給金が良いならまだ分かる。しかし給金は雀の涙。更に平日に仕事が終わらず休日に持ち込むことになった場合、それは自己責任で学園は一切お金を出すつもりはないときてる。
先程【奴隷】と言ったが【奴隷】のほうがまだまともな環境で働いている。
ああ、言葉に語弊があるかなぁ。
奴隷には二種類の存在がいて、それが犯罪奴隷と借金奴隷。
犯罪奴隷とは文字通り法を犯して犯罪者となった者が法の番人などに捕まるなりなんなりして裁きの末に奴隷となった者達のこと。
以前私が捕らえた山村達もこれになっている。犯罪奴隷はその刑期を終えるまでか或いは死ぬまで危険、汚い、キツい。3Kが当たり前の場所で働かされる。刑期を終えるまでと言ったが実際はその前に死ぬことが多い。何故なら犯罪奴隷に人権はないから。
一方借金奴隷はこれも文字通り国や町・村、ギルド・金貸しなどに借金を作って返せなくなり、その末に奴隷となった者達のこと。
ただこれは親が借金を作ったにもかかわらず子供がそれを背負わされるなどといった一面もあるためか人権がまったく保障されてないわけでもない。と言ってもそんなの表向きはいうだけで実際は借金奴隷を買った雇い主次第なのだけど。
ここまで言っておいてなんだけど、実は他にも奴隷と呼ばれる人達がいる。
それまでは普通に暮らしていたのにある日突然奴隷とされた人達のことだ。
盗賊や山賊に襲われてそうなった人とか、亜人というだけで掴まってそうされた人とか、口減らしの憂き目にあった人とか、奴隷から生まれたたために生まれついての奴隷という人達もいる。
この国ではそういうのは禁止されているのだけど、騎士などが見つけ次第摘発して奴隷を解放したりしているのだけど、悲しいかな。イタチゴッコになっているのが現状だ。基本的には王都以外の場所で。
さて、この中では学園長から提示された内容で就業する者はある日突然奴隷にされた者達に近いかな。
ん~、自分の意志でなるのだからちょっと違うか。
ああ、しかし見れば見る程これは酷い。
借金奴隷であれば<雇い主次第ではあるけど>それでももう少し人として扱われるぞ。
私は学園長を見る。
脂ぎった少々間の抜けた顔と脂肪脂肪脂肪なメタボな体。
トロールによく似ている・・・。
彼は微妙な顔をしているであろう私を見て"ニコニコ"してる。
「どうですかな? 引き受けてもらえますか?」
何故これで引き受けてもらえるって思ったんだろう?
何故それを微塵も疑ってないんだろう?
分からない。この・・・人だよね? もしかしてトロール? の頭の中どうなってるんだろう。
理解出来ない。そうだ、分からないから聞いてみよう。でもこのトロール言葉理解出来るかな? 意思疎通出来なかったらどうしよう。・・・物は試しかな。よし! 行くよ。
「あの、これでどうして引き受けてもらえると思ったんですか?」
しまった。つい直球で聞いてしまった。
トロール。もうトロールでいいよね。トロールはそんな私の質問にも顔色を変えるようなことは無い。
いや、ますます笑みを深めてうんうんと頷く。
なんか1人で納得したっぽい? 自分だけで納得してないで私にも説明して欲しいのだけど。
「ふむ。そうですか、破格すぎましたかな。これでも悩みに悩んだんですよ。ハンター風情、しかも亜人の女な貴女にこれほどの金額を出すのはいかがなものかと。しかし私は寛大なのでこの金額を提示させていただいたという次第です。では明日から早速よろしくお願いしますね」
「え?」
あれ? おかしいな。やっぱりトロールと意思疎通は無理だったか。
ハンター風情とか。ここはハンター養成学園だよね? それでトロールはそこの学園長なんだよね?
なのにハンター風情って意味分からないな。後、亜人もいっぱいいるよ? この学園。女性教師だっているし。それに私、何より契約します! とは言ってないよね。なんで働くこと決まってるの?
混乱しているとトロールは私を上から下まで値踏みするように見る。
気持ち悪い。背筋が凍ったぞ、今。ほんとのほんとにトロールなんじゃないだろうか。
女性の敵。殺ったほうがいいかな。
「ふむ、その格好はいただけませんな。女性ハンターはもっと肌を出すようにしないと。そうしたら男性ハンターのやる気に繋がるのですから」
それはつまり女性ハンターはハンターではなく男性ハンターのための・・・・・・であると言いたいのだろうか。この学園、女性いなくなりそうだな。国だか王都だか知らないけど、なんで上の人はこのトロールを学園長にしようなんて考えたんだろう。
は! トロールなのか? トロールが人に化けてるのか? よし! 刈ろう。
「風刃」
トロールの数本だけ生え残っていた髪の毛を残らず刈った。
怒りを買った私は当然学園から叩き出されたのであった。




