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この世界が私の居場所 ~明るく楽しむ異世界生活~  作者: 彩音
第二部 新大陸・学園編
37/56

2-09.対魔物想定模擬戦と監禁と

ヤンデレ要素あります。

苦手な方は注意してください。

 衝撃の女子会から数日。

 私達は少なくとも表面上は特に何も変わっていない。

 相変わらず4人。コーネリアを加えて5人。

 その仲間内で行動して学園生活を謳歌している。

 これはラナさんが私のことを好きだと言いつつも今までと特に態度が変わるわけではないのが大きいと思う。もし意識された行動をされると幾ら私でも"ギクシャク"していたことだろう。出来れば今の心地良い関係を壊したくない。卑怯だとか卑劣だとか言われても後ろ指刺されても私は今のままを望みたい。私の恋人はアメリア。他の3人は大切な友達で仲間。そうあって欲しいのだ。




 二の鐘が鳴ってすぐ私達は訓練場に集合して担任の話を聞いていた。

 全員制服と一緒に導入された運動着姿。

 何処の世界でもこういうとき、生徒が教師の話を聞くときの恰好は同じらしい。

 三角座りして上を向いて目の前に立っている教師の話を大人しく聞いている。


「では今日は対魔物を想定した訓練を行ってもらいますね。どうするかって言うとペアを作ってそのペア同士で戦闘を行ってください。剣も魔法もありとしますが殺害は勿論、重症にさせない程度の威力でお願いします。中傷までは医務室の治療員が何とかしますので」


 担任がそこまで言うと全員に緊張感が走る。

 模擬戦と言っても結構本格的な戦闘が想定されている。

 これが将来ハンターを目指す者の学園。

 生徒同士であってもライバルということか。


「では2人一組になってください」


 とかなんとか思っていたら担任から悪魔の掛け声がかかる。

 これ昔は大嫌いだった。だって私は絶対にあぶれていたから。

 あの惨めさが分かるだろうか。最後まで誰とも組めずに良くて担任とのペア。悪くてそのまま放置され続けることの惨めさが。


「ユーリ」


 でも今は違う。声をかけてくれる相手がいる。

 アメリアと。男子が数名。


「ユーリさん、是非俺と模擬戦を」

「いえ、こいつとじゃなくて俺とお願いします」


 いつもは男女別なのだが今回は合同。

 対魔物を想定しているからだろう。

 魔物となれば自分より体躯の大きい者や相性と悪い者と戦うことだって充分にある。

 男女合同なのもそのための一種の訓練。

 でも私はそんなこと無視してアメリアと組もうとして・・・。


「あ、ユーリさんとアメリアさん、ラナさんにアンナさんとコーネリアさんはこちらが指定した相手と戦ってくださいね」


 担任に腰を折られてしまった。


「えぇぇー。ユーリとがいい」


 アメリアの不満そうな顔。可愛い。私もアメリアとがいい。

 しかし私達は離されてしまう。私の相手はラナさん。アメリアの相手はコーネリア。アンナさんだけは男子との戦闘が組み込まれる。


「友達でも容赦しないよ? ユーリ」

「私もね。ラナさん」


 はっきり言おう。嫌な予感しかしない。誰かに仕組まれてるとしか思えない。

 これって面倒になるやつでしょ。何かのゲームだとイベントとして発生したりするやつでしょ。

 やだなぁ。何か邪魔が入ってくれたりしないかなぁ。

 私の思いも虚しく模擬戦は開始される。宣誓はラナさん。


灼熱の息吹(フレアブレス)


 ちょっ!! それって殺傷能力充分な奴だよね。殺害は禁止って言われてた筈だよ? ラナさん。


魔力障壁(マナシールド)


 なんとか防ぐ。正直焦った。火炎放射器の数倍の威力の炎。まともに浴びたら死んでた。


「ラナさん、私じゃなければ死んでたよ!!」

「そのユーリだからって思って。次行くよ。爆発魔法(エクスプロージョン)

「待って待って待って!!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。魔力喰い(マナイート)


 ラナさんの魔法を私の魔力で包み込んで消滅させる。

 正確には結界の中に爆発魔法を閉じ込めてそこで爆発させて終わらせた。

 さっき咄嗟に考え付いた。思いつかなかったら冗談抜きでヤバかった。

 私だけじゃなく周りの生徒達にも被害が出てたんじゃなかろうか。

 ラナさん、もうちょっと考えて欲しい。


「さすがユーリ。出鱈目だね」

爆発魔法(エクスプロージョン)はダメだよ。私が防げなかったら周りにも被害出てたよ?」

「あ~、ごめん。ちょっと熱くなってた。気を付ける」


 うん、そうして。

 ラナさんが次の魔法を放とうと構える。

 その一瞬の隙を私は逃さない。


 無詠唱で風魔法発動。竜巻を起こしてラナさんを追い詰める。


「これくらい! 炎の槍(フレイムランス)


 ラナさんが放った炎の槍は竜巻を通り抜けてその先にいる私へ――――。

 だけど。


水の槍(アクアランス)


 相互消失。

"ほっ"としたのも束の間。

 ラナさんが身一つで竜巻を抜けてきた。

 嘘でしょ!! なんて無茶苦茶な。

 体中傷だらけ。

 それでもラナさんは私に突進してくる。

 すぐに迎撃しようとするけど私の魔法は間に合わなかった。


「私の勝ち――――」

「っ」


 私の目の前で杖を振りかぶるラナさんが見える。

 回避出来ない。体がその場に縫い付けられる。

 スローモーションの世界で杖が私の頭に落ちてきて。

 当たる前にアンナさんが倒したらしい男子が勢い余ってラナさんに直撃。


「え? きゃあっ!!」

「危ない!!」


 ラナさんの勢いを殺すように風魔法をほぼ無意識で使用してその体を支えることに成功。

 したんだけど、事件は起こった。


「「!!」」 


 唇と唇が重なり合ってそのまま私達は床に倒れてしまったのだ。

 ああぁ・・・。アメリアが鬼の形相でラナさんを見てる。

 最悪だぁぁぁぁ。フラグそうまでして頑張らないでくれよぉっ・・・。


-ラナ-

 やってしまった。よりによってアメリアの前で。

 これはまずい。非常にまずい。

 私は死ぬし、ユーリは恐らく何処か人気(ひとけ)のない建物なんかに監禁される。

 私はあのとき、アメリアを挑発したけど別に本気でユーリを奪おうなんて気はないんだ。

 今の関係が気に入っているから。

 どうするどうするどうするどうする?



 こうなったら――――。ヤケだ。


「ユーリ」


 私の頭上からラナさんの悲壮な声が聞こえてくる。

 その声のトーンと視線。なんか全部理解出来た気がする。

 ラナさんはすでに覚悟を決めたのだろう。

 なら私もそれに応じなければならない。

 大丈夫。数日か数ヵ月か自由を失うだけ。

 その期間我慢すればまた空も見えるよ。

 多分。きっと。大丈夫・・・だよね?


 アメリアがこちらに近づいてくる。

 

「ユーリ、何してるの?」


 私か! まずラナさんだと思った。いきなり私にくるとはちょっとびっくり。


「ごめんなさい」


 謝る。とアメリアは私の頭を撫でてくれる。


「うん。ユーリはちゃんと謝れて偉いね」

「アメリア、ラナさんは」

「うん。事故だよね。分かってる。だから何もしないよ? ユーリの気持ちも無駄にしたくないし」


 そっか。良かった。ラナさんは複雑だろうけど気にしないで欲しい。

 私はこれでもアメリアといれると思うと嬉しいし。


「アメリア。私は」

「ラナ、大丈夫。事故だって分かってるから」

「ユーリはどうなるかな?」

「ちょっと用事があって数日部屋には戻らないと思う。学園も休みになるだろうから教師に言っておいてくれる?」

「程々にしてあげてね?」

「ボクはユーリを傷つけたりしないよ?」

「そっか。分かったよ」


 アメリアとラナさんの話し合いが終わる頃、担任やアンナさん達がこちらへ。

 アンナさんは男子を飛ばしてたことをアメリアに謝り、担任は私達に怪我などないかを聞いてくる。

 とりあえず全部の質問などに応えてその場を終わらせた。

 それからその日の授業は普通に全部受けた。

 そして放課後、私は両親の危篤という名目で3日程学園に里帰りする旨を連絡。無事受理された。





 ここは洞窟。でも何処の洞窟か分からない。

 目隠しされてお姫様抱っこで運ばれたから。

 多分ゴブリンキングが住んでた洞窟?

 その洞窟に私は1人きり。入口は大岩で閉鎖されている。

 真っ暗。魔法も使うこと禁止されてるから闇の中耐えないといけない。

"ジャラ"足には足枷。これのせいでろくに動けない。結構辛いな。不自由なのもだけど、何より闇の中で孤独なのが耐えがたい。

 早く来ないかなぁ。アメリア。甘えたい。寂しい。会いたい。


 アメリアは私と違って学園の授業にちゃんと出ている。

 寮の部屋にも戻っているからここに来るのは授業が終わってから少しの間だけ。

 待ち遠しい。彼女が恋しい。


 暫くして洞窟に光が差し込む。

 アメリアが来た合図!! 私は彼女が傍に来てくれるのを待つ。

"コツコツコツコツコツコツコツ"もう少しもう少し。


「ユーリ、いい子にしてた?」

「アメリアーーー」


 抱き着いてキス。アメリアは私を抱き返してくれる。

 好き。大好き。こんなことされたってアメリアが好き。

 ひとしきりアメリアに甘える。ある程度満足したら彼女に尋ねる。


「アメリア、今日はどれくらいいてくれる?」

「一刻くらいかな。あまりいられなくてごめんね? 明日の夕方には迎えにくるから。そしたらまたずっと一緒にいられるから。ユーリは我慢出来るよね?」

「うん」


 そっか。明日には学園に帰れるのか。

 ならこの孤独も耐えられる。頑張れる。

 頑張れるけど。


「ねぇ、アメリア」

「どうしたの? ユーリ」

「アメリアが帰るまで溺愛して欲しい。お願い」

「うん!」


 アメリアは約束通り私をたっぷり甘やかしてくれた。

 そして翌日、私は学園に復帰した。

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