2-04.嫉妬して、素直になって、愛し愛されて
学園の女子達に制服が行き渡ってから3日後。
今日1時限目は訓練場で魔法実技の授業。
「揺らめく紅。偉大なる深紅の精霊サラマンダーよ。その力を世界に、我が前に示せ。炎の槍」
前々から思ってた。
何その厨二病臭くて長い言葉って! って。
別にさ、魔法名を言うくらいはいいと思うよ。覚えやすいし。イメージ固まりやすいし。それは単語登録みたいなもの。私も言ってるし。「風刃」とか。
でもその前の長いの必要? 絶対無駄だと思う。だって魔法って出来るだけ過程と結果をイメージしてそのイメージをそのまま解き放つようにこれもイメージして実際に解き放つことで魔力は形を得て力を得る。
それなのに長々とセリフ吐いてたらそれに気を取られてイメージが薄まるし、最悪霧散するのでは? って思うんだ。
見てる限り実際に霧散してる人もいる。
その人達に対して先生達は大真面目な顔をして「詠唱に魔力を篭めるんです」って訳の分からないことを言うものだから更に意味が分からない。確かに【言霊】っていう言葉もあるけどさ、何か、何か違う。
あっちの大陸では詠唱使う人っていなかったように思う。
いたのかな? こうやって間近で人を観察することってなかったから気付かなかったのかも?
う~ん、どうなんだろう? 少なくともアンナさんとラナさんは魔法名くらいしか口にしないよね。
そんな2人はこの状況どう思ってるんだろ? 顔を向けてみると物凄く微妙な顔。私も同じ顔をしているんだろう。目が合うと2人は苦笑いする。私も苦笑い。
「ねぇ、詠唱っていると思う?」
最早聞くまでもないけど聞いてみる。
「いえ、わざわざ効果を打ち消してるようなものですね」
「本来の十分の一くらいしか威力発揮出来てないんじゃないかなって思う」
「そうだよねぇ・・・」
喋っていると呼ばれたので魔法を放つためのサークルの中に立つ。
ラナさんと2人。手を広げて触れ合わないくらいの距離で隣同士。
「・・・・・」
「・・・・・」
視線を合わせて頷きあう。
試験でも見せているけど今一度。
「魔力球弾」
「炎の爆弾」
オリハルコン製の的を破壊。
見届けて距離を詰めてハイタッチ。
何故かアメリアも寄って来たのでアメリアともハイタッチ。
仲間外れにしたくないからアンナさんを手招きしてアンナさんともハイタッチ。
それからクラスメイト達を見ると皆、感心している様子。
「やっぱり凄いです」とか「4人はすぐにでもAランクになれそうですわね」とかそんなことを顔を見合わせながら話をしている。
違う。見て欲しかったのは威力じゃない。
伝わらなかったようなので止む無く説明することにする。
「あの~、皆さんはどうして詠唱なんて無駄なことを真面目な顔をしてしているんですか?」
「「「「「え!?」」」」」
聞けば魔導書にもそう書いてあるし、それがこの大陸での当たり前とのことだった。
その魔導書とやらを読ませてもらうと小難しいことをゴチャゴチャ書いてある割にハッキリ言って中身がない。役に立ちそうなことは全体の一割にも満たない。他は全部別にあってもなくてもいいようなことばかり。頭痛がした。例えるならアクを取り除いた料理に取り除いたアクを再び加えましょうって言ってるようなものだ。美味しく仕上げようとしてた料理をわざと不味くする理由って何? 何処ぞのエセ料理評論家がアクは取り除かないほうが美味しいって嘘知識を広めたんだよね。これ。アクは取り除かないと雑味が混じって美味しくなくなるんだぞ。手間だけどそれが大事なんだ。美味しくするひと手間なんだ。惜しむなよぅっ。
「アクはいらない」
「アク?」
おっと。口に出てしまっていたらしい。
笑って誤魔化して本来の魔法について口にする。
「本当は必要ないものが必要である。って書いてあるね。これじゃあ間違えた知識が広まるわけだ」
ラナさん? せっかく軌道修正したのに私を訝し気に見るのはやめて。
何? 日頃の仕返しのつもり? あれはラナさんがフラグを立てるから悪いんだよ!!
そのフラグ現在まで100%回収されてるからね? 折れたことないからね。
回収率100%ってなかなかいないよ。良く今まで生き残ってこれたよね。
仲間に恵まれたんだね。[[大地の息吹]]。
あ! 今は私達も仲間か。ラナさんに会えて嬉しいよ。
でもフラグ立ては自重して? 平和に過ごしたいんだよ。分かってー。
私は心の中で叫びながら魔導書を閉じる。
状況を見守っていたクラスメイトに微笑み宣言する。
「今からこの魔導書のことは忘れてください」
「「「「「えぇぇぇぇぇ!!!!!!!??」」」」」
阿鼻叫喚の嵐。
私はラナさんと共にあっちの大陸での魔法概念をクラスメイト達に説いた。
それがやらかしとは思いもせずに。
魔法の実技授業が終わったら雑学。
三の鐘が鳴り、一刻の休憩時間を得、午後からは剣技の実技。
男女分かれての模擬戦。
午前の授業のときと同じように今度はアメリアが男子と同じように剣を振るう女子達に違和感を覚えたようで彼女達に男性と女性の体の違いの説明と体の動かし方を説明した後、実演をして見せて練習の際は手取り足取り教えてあげている。
それを見て最初は私が教えたことしっかり覚えてたんだなぁとか実演してるんだなぁとか感慨深いものがあるなぁとか私は暢気にそう思っていた。
けれど暫くそれが続くと段々面白くない気持ちが強くなってきた。
アメリアが他の子に触れるのが気に入らない。
アメリアに触れられる子が気に入らない。
醜い【嫉妬】。いつから私はこんな嫌な子になっていたのだろう。
アメリアを独占したいって考えるようになっていたのだろう。
ううん、それ以前にアメリアはどんな場面でも私だけを思ってくれるって盲目的にそう思ってた。
それはアメリア自身にも問題はあると思う。「ユーリはボクのもの」ってよく言うから。
けれどやっぱり私だ。私は言葉や態度にアメリア程恋人を独占したいって気持ちを表してこなかった。
それが間違いだったって今の状況でよく分かる。
いや、別に恋人を取られそうな修羅場とかそういうんじゃないんだけどさ。
単に私が気に入らないだけなんだけどさ。
凄く・・・嫌だ。アメリアが他の子に笑いかけてるのが、他の子がそれで笑みを返すのが。
そこって私のポジションだよね? 「盗らないでよっ!!」って叫びそうになる。
ああ・・・。涙が。思い込みでこんなの格好悪い。止めなきゃ。・・・どうしよ、止まらない。
誰かに気付かれる前に医務室行こう。気分が悪いって言ったら休ませてくれる筈。
「・・・・・」
「!」
うわっ! アメリアと目が合った。そのせいでクラスメイトの数人とも目が合った。
まずいまずいまずいまずいまずいまずい。涙止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ。
アメリア、"ギョッ"とした顔してるし。こっち来た。嬉しい。
・・・ってそうじゃない。くそぉ。拭いても拭いても止まらない。袖汚れたなぁ。後で洗浄魔法かけなくちゃ。
「ユーリ、どうしたの?」
ほら、心配かけてる。
不安でいっぱいって顔してる。
そんな顔も可愛いなぁ。
でも理由なんて言えるわけないよね。
他の誰に嫌われてもアメリアにだけは嫌われたくない。
「ごめんね。なんでもない」
「なんでもなく泣くわけないじゃん!! ユーリ」
「ほんとになんでもないの。ちょっと昔を思い出してただけだから」
「嘘だよね?」
「えっ?」
「ユーリ、嘘つくときはよく目逸らすもん。さっき逸らしたから嘘だよね」
あらら、私ってそんな癖あったのか。
照れたら耳まで赤くなるらしいし、嘘ついたら目を逸らす。
隠し事出来なさすぎじゃない? 困った。どうしよう。
「・・・ちょっと医務室行ってくる」
葛藤の末、情けない私は逃亡することを選んだ。
けど・・・。
「ボクも行く。・・・先生、ユーリが調子悪いみたいだから医務室連れて行ってきます」
「え、ええ」
「アメリア、私は!!」
「煩い! 幾らユーリでも反論は許さない。違う。ユーリだから許さない」
「なっ」
何それ。頭に血が上る。アメリアは私の眷属で私が主人なのにその言い草はないと思う。
「何よ。それっ!! 私はアメリアの」
「恋人だよね」
「っ」
アメリアにお姫様抱っこされる。
走り出すアメリア。
駆けながら彼女は話す。
私への思いを。
「ボクはユーリが好き。大好き。ユーリのためなら父様と同じように神様に牙を剥いてもいいってくらい好き。世界が邪魔するならボクは世界を壊す。世界中の誰よりユーリが好き。ユーリはボクのもの。誰にも渡さない。例えユーリがボクから逃げようとしてもボクはユーリを逃がさない。・・・・・もしかしてユーリはボクのこと嫌いになったの?」
「違う!! それは絶対にない」
最後の即反論出来た。良かった。ううん、当たり前か。私がアメリアを嫌いになるわけないもん。
アメリア、最後のセリフ言うときちょっと辛そうだったのに今は嬉しそう。
そっか。ちゃんと言わないとダメ・・・だよね。
「アメリア、全部話すから人が来なさそうなとこに運んでくれる? 屋上とか」
「分かったー」
屋上は冗談だったんだけど、アメリアは私を抱えたまま壁を蹴ってジャンプ。それを何度か繰り返して屋上に着地した。
いや、どんな身体能力!! ずっと一緒にいるけどまだびっくりすることあるなんて。ちょっと怖かった。悲鳴上げそうになった。耐えたけど。
「悲鳴上げないように口押さえてるユーリ可愛かった」
アメリアが意地悪な顔。わざとか!! そうか仕返しか。何か言いたいけど言えないよね。
「ユーリ、何も言わないの?」
ニヤニヤした顔して。憎たら可愛いっ。
「アメリア。ごめんね」
「えっ?」
えっ? って。何! 悪いのは私なんだから謝って当然でしょう。
「えっ? って何?」
「だってなんでユーリが謝るの?」
「それは・・・」
私はアメリアに全部話した。
アメリアが私以外の子に触れていたこと、笑いかけていたことに嫉妬したこと。
他の子がアメリアに触れたこと、笑い返したことに嫉妬したこと。
ついでにこれまでアメリアに気持ちをあまり言わなかったことを謝った。
「えっと、つまりユーリはボクのことを相変わらず大好きすぎるっていう?」
「そうだよ」
「ユーリ、残酷だよ。今の環境だとユーリを押し倒せないのに」
「4人部屋だもんね」
「むーーー・・・」
口を尖らせるアメリアに抱き着いた。
大好きな恋人の首筋にキス。
アメリアに寄りつこうとする悪い虫はこれを見て欲しい。
アメリアは私のだから。
「痕残した?」
「うん」
「ボクもユーリにする」
「うん、お願い」
「素直なユーリ可愛い」
「大好きだよ。アメリア」
「・・・・・」
「何? その顔」
「だってびっくりした」
「言ったでしょ。アメリアに気持ちをあまり伝えてこなかったこと後悔してるって。だからこれからは言うことにしたの」
「そっかぁ。ユーリが可愛すぎて眩暈がする」
「えっ? ごめんね? 大丈夫?」
「大丈夫じゃない。蛇の生殺しは無理」
「アメリア?」
「今日は宿泊まるから。これは決定だから!」
「え? うん」
「うん」
アメリアはまた駆けだす。
外出許可を取ってその日私達は王都の宿に泊まった。
理由があって少しだけ高級な宿にした。
宿であったこと?
お互い好き好き言い合ってキスいっぱいして後は・・・。




