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この世界が私の居場所 ~明るく楽しむ異世界生活~  作者: 彩音
第二部 新大陸・学園編
30/56

2-02.制服導入

 ミレイヤ学園。ジュレー大陸北東の国ルハラの王都にあるハンター養成学校。

 王都を4つに分ける北の貴族街・中心地東側の工業地区、西側の商業地区・南の平民街。

 その中心地西側商業地区の貴族地区寄りに位置するその学園の寮。女子寮の一室では今まさに1人の少女が目を血走らせた3人の少女に壁際へと追い詰められ泣きそうな顔になっていた。


「ね、ねぇ・・・。皆、落ち着いてよ」

「ユーリ、ボクは落ち着いてるよ?」

「そうですね。私も落ち着いてます」

「はい。落ち着いてユーリさんを追い詰めていますね」

「なんで! なんで私は追い詰められてるの。意味分からないんだけど」

「「「だって」」」


 本当になんでこんなことになったんだろう。

 ううん、そもそものキッカケはちゃんと覚えてる。

 私が今朝何気なく「この学園制服作ればいいのにね」って口走っちゃったせいだ。

 その後すぐ「まぁ1年だけだと勿体ないよね」って笑って言ったのにそのときはすでに遅かった。


「ユーリの制服姿また見れるの?」

「制服・・・。なるほど、あれば便利ですよね」

「ギルドの受付嬢とかメイドさんみたいなの?」


 3人が妙に乗り気になって騒ぎだしてその中では唯一アメリアが私の言う制服っていうものを知ってるから中心になって2人に教えて・・・。

 内容はそれを着てる私がいかに可愛かったかっていう惚気だったけど。

 それを聞いたラナさんとアンナさんの2人はすっかり制服に魅せられてしまって・・・。

 制服導入を学園長に提案しようって言いだした。

 そこまではいい。別にいらないでしょと思ったりしたけど、まぁいい。

 問題は私に説明をして欲しいって言いだしたことだ。

 理由を聞くと私が制服のデザインとか一番詳しいからって。そうだろうけどさぁ。

 渋ったらアメリアまで一緒になって私に迫ってきて現在に至る。


「ユーリお願い」

「ユーリさん、これは女子全員が望むことだと思います」

「そうそう。女の子は皆、可愛くなりたいんだから」

「でも私が説明するのや・・・」

「「「「ユーリ(さん)が一番詳しいんだからお願い(します)」」」


 うぐぐくぐ。これどうしたらいい? 首を縦に振るまでこの3人引きそうにないんだけど。

 でも勿体なくない? 1年だよ? それを過ぎたら着なくなるってお金の無駄な気が。

 制服、出来次第だけど大銀貨数枚の値段になるだろうし。

 それを買わないといけないって学生は辛いんじゃないかなぁ。貴族は兎も角。

 根っからの平民で貧乏性の私には躊躇いしかない。

 なんとか諦めてくれないかなぁ。

 むぅ。頑張って3人を説得・・・するしか、ないよね!


「あ、あのさ。やっぱり1年だけって勿体ないよ。私達の世界だと最低でも3年は着る物だったからこそ高い値段を出してでも普及してたんだと思うし」

「それなら学園を卒業してもEランク、ないしはDランクの間は未成年女子は制服着用を義務付けるとかそういうことにしちゃえばいいんじゃない?」

「いや、それ学生とどう区別するの。・・・・・・・ってリボンの色とかで分ければいいか」

「アイデアがあるんですね!!」

「うっ・・・・。で、でも。お金の問題が」

「学園とギルドに出してもらうようにすればいける!」

「いや、無理でしょ。最初から破綻してるよ。それ」

「言うだけ言ってみませんか? ダメで元々で」

「んー・・・。じゃあその前に女子にアンケート取るってことで。賛成多数なら私が学園長とギルドマスターにかけあってみるよ」

「言質取ったからね!」

「うん・・・」


 つい約束しちゃったけどお金の問題だもん。否決される・・・よね。きっと。

 賛成されたらどうしよう・・・。学園とギルドだけじゃ無理だよね。マウリの町でやったように王都の衣料店巻き込んでなんとかしてもらうしかないか。やだぁ。面倒くさい。

 否決されろ否決されろ否決されろ。




 3人はそれからすぐ動き出したようだった。

 特別クラスだけではなく他のクラスの女子生徒や女性教師に聞くのは勿論、しまいには「女子が可愛い制服着てたらどう思うか」って男子生徒まで巻き込んだようで数日後、その結果が私に伝えられた。


「賛成多数でユーリさんに学園長さん達を説得してもらうことになりましたよ」


 アンナさんからそれを聞いて眩暈がしてしまった。


「嘘でしょ」


 そう言うとラナさんが何か紙を差し出してくる。

 目を通すとアンケート結果。

 確かに賛成多数。逃れようのない事実が記されていて私は追い詰められた。

 それでも抵抗しようと思ったんだ。

 でもねでもね、アンナさんとラナさんは最終兵器を用意してた。

 そう、アメリア。


「ユーリー・・・」


 大好きな恋人から上目遣い。悲しそうな声で言われて断れるわけないじゃん!!

 ずるい。卑怯。これは私に効きすぎる。

"ぐっ・・・"と何も言えなくなった私の目線のその先で2人がハイタッチしているのが目に映った。

 負けた。完全敗北。とりあえず私はアメリアの頭を抱き締めて思う存分撫でてケモミミもふもふしました。

 その後私は押し倒されてキスされた。

 アンナさんとラナさんはこの光景にすっかり慣れたみたいで少しも動じていなかったです。はい。



 かくして私は戦場に乗り込む――――。



 結論から言うと制服導入は決まった。

 私の話の中で乗り気になってくれたのは学園長と衣料店の人。

 ギルドマスターは乗り気ではなかったけど、学園長達の説得で最後には折れた。 

 正し、これまで1年だった学生期間が2年に伸びた。

 これは卒業後すぐのハンターの死亡率が高いために元々考えられていたことらしい。

 それを今回のことを丁度良いキッカケにして導入するとギルドマスターは悪い顔をして私に言った。


 私がこんな話をしたせいで――――。

 取る人によってはそう取れる内容。顔が青ざめたよね。

 学園長と一緒に学園に戻ってそのことを話すと男子の一部の中からブーイングが起こった。

 当然だと思う。委縮してたら女子が憤怒。ううん、正確には女子と一部ブーイングをしている男子以外の男子も憤怒。口喧嘩に発展して見事ブーイングをしていた男子を静まらせた。

 私はひたすら謝罪した。それで皆に慰められて、勇気づけられて、それが嬉しくてちょっと泣いてしまった。

 なんか生徒達の顔色が変わったのは気のせいだよね?

 唾を飲んだ人もいたけどどういうこと?

 色々あったけど、最終的にすべては無事円満に終わった。




「ユーリユーリユーリ、ごめんね」

「ユーリさん、ごめんなさい」

「ごめんなさい・・・」


 寮に戻ってからアメリア達が謝罪してくる。

 それを受けて微笑む私。


「まぁ全部上手くいったんだしもう気にしてないよ。それに実は私も制服着たかったし」


 本音を言うと3人の目が輝く。

 

「ほんと?」

「うん!」


 聞かれて頷くと嬉しそうな顔。

 うんうん。3人はやっぱりそういう顔の方が似合うよ。

 私もアメリアに似たようなこと言われたことあるけど、今ならその気持ちが分かるなぁ。


「それでね。制服のデザインを考えて欲しいって言われたんだけど、皆で決めない?」

「デザイン!」

「わぁ、楽しそうですね」

「決める決めるー。是非是非」

「じゃあ・・・」


 私達はそれから夜遅くまで制服のデザインについて盛り上がった。

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