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幕間12.私の居場所

残酷な描写があります。

苦手な方は注意してください。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 盗賊達のアジトに彼らの悲鳴が木霊している。

 そのすぐ後に少女の声「最上級治癒魔法(グレーターヒール)」。

 本来ならば歓迎される行い。少女のことは聖女のように見えるだろう。

 しかし今現在の彼らは少女は悪鬼に見えていた。

 それもその筈。何故なら・・・。



 姉妹に棍棒を渡した私は彼女達にやって欲しいことを説明。

 最初は何故こんなものを? と呆けていた姉妹だったけど、説明が終わると棍棒を握り締めて口元を"ぐにゃり"と歪めた。

 手は万歳の恰好、足は"ピン"と伸ばされ左右に大きく開かれている。

 そんな格好で土魔法により地面に縫われて寝かされている盗賊達の元へ一緒に歩いていく。

 まず最初に誰のを潰したいか(・・・・・)を聞いて、そいつのところまで来たら私は待機。

 姉妹は話し合い、最初にどちらがやるか順番が決まったら確実に当てるようにそいつの脚と脚の間に立って棍棒を振り上げる。最初は姉からのよう。


「や、やめろ。やめてくれ。頼む、頼むよ」


 そんな懇願を姉妹が聞く筈がない。

 きっと彼女達はこう言うだろう。


「「私達がそう言ったとき、貴方達はやめてくれましたか?」」


 いい笑顔だ。棍棒が振り下ろされる。

"ぐちゃ"潰れる音。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 悲鳴を上げる盗賊。

 姉が終わったから次は妹の番。

 大丈夫。そのために私がいるの。


最上級治癒魔法(グレーターヒール)


 代償? 盗賊自身の生命力だよ? 当然じゃん。こんな奴らのために誰が魔力を提供するもんかってね。

 妹さん、治したよぉ。 さあさあさあ、張り切ってどうぞ。


「優れた魔導士さんが使う魔法って凄いね。私は魔法の力にあまり恵まれなかったからさ。今感動してるよ。ふふふっ・・・何度も何度も何度も何度も潰してあげる」

「や、やめろ。やめてくれ・・・。なんでもする。だから」

「なんでもするって言った? 言ったよね? ねっ?」

「言った。言った。だから・・・」

「じゃあ・・・・・手足も潰そうか? もういらないよね、それ」

「ひっ!!」


 妹さん、役者だなぁ。

 最初のあの声はわざとだよね。それから悪条件を引き出させるなんて。女は怒らせたらダメだね。怖い怖い。


「私ね。自分のことよりお姉ちゃんが汚されたことを怒ってるんだぁぁぁ。ねぇ? 私がどれだけ怒ってるか分かる? ねぇぇぇぇぇ?」


 妹さんが棍棒を振り上げる。わざとすれすれのところへ棍棒を叩きつける。


「あっ。外れちゃったぁ。おっかしいなぁ。次は・・・当てるね?」

「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」


 いや、ほんと怖いよ。軽く引くわ。でもそうなってしまうのは当然、か。盗賊は自業自得だね。


"ぶんっ。・・ぶちゃっっっ"

 あ、当たった。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


次は手足か。右と左で姉妹それぞれ分かれるのね。効率重視だね。いけいけー。


 ・・・・次は誰? ・・・・そいつでいいのね? うん、やっちゃっていいよ。

 ・・・・どんどんいこう。・・・・ちょっとは気が晴れた? ・・・・そっか。辛いよね。

 こんなことしかさせてあげられなくてごめんね。その代わりとことん付き合うから。

 魔力には余裕あるから平気だよ。恨み晴らしちゃって。


 姉妹達の狂気が何時間も繰り返される。

 盗賊達は体中から水分を垂れ流してただひたすら赦しを請うだけ。

 気絶なんて私がさせない。

 水魔法で容赦なく顔に水をぶっかけて目覚めさせるか、或いは他の魔法・物理対応でいかなる手段を用いてでも叩き起こす。

 

 五の鐘が鳴り響く。

 さすがに疲れたらしい姉妹は地面に座り込んで泣いて、笑う。

 痛々しい姿。心の傷ばかりは魔法でもどうしようもない。

 私は静かに姉妹から離れ、[[大地の息吹]]の皆さんにケアを頼んで1人山村の元へ。

 他の盗賊達と違い、麻縄で手足を縛られてただ地面に転がされているだけの元クラスメイトの前に私は立つ。


「俺の尋問は青葉さんがするの?」

 

 少し嬉しそう? 悲惨な目に合わなくて済むって思ってるのかな。

 けどそれはどうかなぁ。もしかしたら山村がこの中で一番最悪な結末を迎えるかもだよ?

 だって貴方の前に立ってるのは・・・だから。


 魔力を目に集中させる。

 初めての試みだけど上手くいった。

 よく見える。景色も人もその悪意(・・)も。


「単刀直入に聞くね。他に仲間は?」

「いないよ。これで全部だ。これが昨日なら数名は別の場所にいた。食料を調達に行ってたからね。今日戻ってきたばかりだったんだ。青葉さん達は運がいい・・・のかな? 捕まったわけだしね。どう言っていいのか」

「嘘は言ってないみたいだね。次。他の盗賊と同盟を組んでたりする?」

「殆どの盗賊はそんなことしないよ。手柄が半分になるからね。それに裏切りの可能性がある。仲間内でも完全に信用してないのに同盟なんてあり得ないよ」

「それも嘘じゃないみたいね。次。実は彼女達が犯されるのを見て愉快に思ってた?」

「思うわけないだろ!」

「・・・・・そっか。風刃(カマイタチ)

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! あ、青葉さん、何を?」

「指1本くらいで騒がないで。煩いから。尋問続けるよ?」

「あおばさ・・・」

「質問の応え以外は喋らないで。余計な口聞いたら即罰を与えるから」


 私は山村に幾つもの質問をしていく。

 彼は最終的に左手の指を3本失った。

 

 魔眼を解除。

 これは長い時間は使用出来ないという欠点があるのが分かった。

 使用している間脳にかなりの負荷がかかるようで頭痛がしてくるし、目も痛くなってきてそのせいで思考が段々鈍ってくるからだ。痛いしか考えられなくなる。


「もう少し・・・もう少しはマシな人だって思ってたよ」

「っ。そ、そんなの青葉さんの勝手な思い込み、だよ」

「・・・みたいね」

「ねぇ、青葉さん。俺はどうなるの?」

「ギルドに引き渡すよ。その後は・・・犯罪奴隷として鉱山で数年か一生か。働くことになるんじゃない?」

「そっか。もう会えないね。最後に謝らせて欲しいんだけど」

「謝らせて欲しい? それで赦してってこと? 形だけの謝罪で楽になりたいの? ・・・ふざけるなよ! 謝罪は受け取らない。死ぬまで後悔し続けろ。そして最後のときに空にでも向けて謝って死ね。それでも私は赦さないけどね」

「・・・ぷっ、あはははは。青葉さんって実はそういう人だったんだ? 厳しいなぁ」

「あんな環境で私が自分を出せると思う? 出したら最後、苛めがエスカレートして私はいつか殺されるよ」

「それもそう・・・だね」

「ハァ。お喋りは終わり。もう金輪際喋らないし、顔も見せない。ギルドに行くまでの道中もその後も、ね」

「そっか。さよならだね」

「さようなら」


 山村に背を向けて皆の元へ。

 自殺防止のために木魔法を発動。

 舌を噛めないように蔦で口を抉じ開けてそのまま固める。

 楽になんてさせない。罪から逃がさない。


「ああふぁふぁ・・・」

「詰めが甘いよ」

「んんん、あふぁふんっ・・・」

「今度こそさよなら」

 

 それが私が山村を見た最後だった。

 その後ギルドまでは他の連中と共に連行したけれど、それから彼がどうなったのかは知らない。




 数日後。

 私達は無事キビエ村に辿り着いた。

 盗賊? 連れてきてるよ?

 ゴーレムが引く馬車もどきを作ってその中に全員入れて連れて来てる。

 ちなみに食事は水だけは与えてる。少しくらい食べなくても水さえ飲んでおけば数日は死にはしないって聞いたことあるし大丈夫だよね。本気で飢え死にされそうならそのときに考える。潰した手足は魔法で治した。肝心なところは治してないけどね。どうせ生涯自由を奪われて鉱山で働かされるんだ。使うところなんてもうない。ならいらないでしょ。姉妹もある程度満足したみたいだし、これで手打ち。

 それで彼女達はこの村の出身らしいのでここでお別れ。

 私達はトゥキビを買ったらすぐに出発。次の町を目指す。

 このまま野営と村や町泊りを繰り返しながらノルニア聖国の首都に行ってそこから船に乗って新大陸に行く予定。

[[大地の息吹]]の皆さんもついてきてくれるらしい。

 嬉しい。頼もしい。


 アメリアを膝枕。子守唄を歌ってあげると彼女はすぐに眠りに誘われ抗うことなく夢の世界へと旅立っていった。


「~~~♪」


 歌を続けながら大好きなアメリアの頭を撫でる。

 転移してきてからずっと私と一緒にいてくれているアメリア。

 可愛い寝顔。幸せが溢れる。


 私、転移させられてきて良かった。

 この世界(アイリス)が私の居場所――――。

これにて幕間は完結となります。

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