幕間11.輸送の仕方とバカップル
前回の反動が出ました(笑)
仕方ないね。
盗賊達は全部で20人。
1人の例外もなく捕縛した。
これから楽しい楽しいごうも・・・。もとい尋問の時間。
いや~、アジトは壊滅させたけど他に仲間がいるかもしれないしね?
例えば今現在ここにいなくて何処かに潜んで獲物がかかるのを待ってるとか。
例えば基本的に盗賊やら山賊やら殺人鬼やらは村や町に入れないようになってるけど、それは大きな村や町の話で小さい村なんかはそこまで厳重に警備してないし、そもそも盗賊達と密な関係にある村もあるってヲタク知識で見たことある。
となればその村にいるかもしれない。買い物とか酒場で豪遊とか花を買ってるとかあり得なくもない。普通の村や町だったとしても機密情報以外の適当な情報を売る程度なら犯罪にはならない筈だからそういうものを売っているのもいるかもしれない。
そんなのは盗賊の仲間とみなしていいよね――――。
他に考えられるのは盗賊団と盗賊団が同盟組んでるとか。あるならもう片側も潰しておきたい。疑い出したらキリがないけど、ここで適当に済ませて逃すよりマシと信じてる。
後は犯罪を犯して人々から奪ったりしたであろう物品の在り処も吐き出させないとね。
そのうち何割かが私達の報酬に追加されるし、取られて困ってる人がいるなら返せるものなら返してあげたい。
ふと嫌な事実が頭をよぎる。こいつらどうやってギルドまで連行するのか。
なるべく多くの報酬を受け取るにはギルドまで生きたまま連れて行かないといけない。
しかしそのためには労力と乗り物と一応食事と水がいる。
「・・・まず木魔法と錬金術で馬車の土台を作ってそれから土魔法で檻を作る。それをどうやって運ばせる? 20人もの人数を引く馬。ゴーレムでも作るかな。魔石あったっけ。動力源は必須だよね」
うわぁ、面倒くさい。なんでこっちがそこまで労力を使わないといけないの?
それに食事。あげたくない。どうするの。私の持ち物はあげないよ!? 適当に魔物狩ってその肉を?
ハァァァァァァァ、殺す方が楽じゃないかなぁ。
犯罪者を殺しても犯罪者にはならないよね? ならない筈だけど万が一そう認定されたら村にも町にも入れなくなる。それは困る。
あ! ギルドって村にはないんじゃ・・・。えっ? じゃあ町まで行かないとダメ?
トゥキビがぁぁぁぁぁぁ。確保したい。絶対欲しい。そこにあるのにみすみす逃すなんて冗談じゃない。盗賊よりトゥキビだよ。なんなら僅かばかりの報酬よりトゥキビだよ。トゥキビ。
「ユーリ」
アメリアに名前を呼ばれる。
「なぁに?」
呼んだ理由を聞くと「目が据わってるよ」とのこと。
いけないけない。アメリアに嫌われる。私は顔を揉んで無理矢理笑顔を作る。
「これで大丈夫?」
「ボクはどんなユーリでも絶対嫌わないけど、笑ってるユーリが一番好きだなぁ」
くっ。・・・アメリア。なんて殺し文句。それと笑顔が眩しい。
笑ってるだけじゃ何も解決しないけど、しかめっ面してたらダメだよね。
「じゃあアメリアが私を笑顔にさせて?」
無茶ぶりだなぁと思いつつ言ってみる。
それでもきっとアメリアならきっと何とかしてくれると思うから。
どんな風にそうしてくれるのか興味があるから。
「うん、分かった。任せて」
アメリアは"びしっ"と親指を立ててウィンクしたかと思うと数歩歩いて私の前に立つ。
「ユーリ」
「?」
強く抱き締められて撫でられる。頬にキスが落とされる。
お得意のスキンシップ。だけどいつもより強く抱き締められてる分、何がとは言わないけど押し付けられてる。柔らかい。いい匂い。ああ・・・これは人をダメにするやつだね。これに勝てるわけない。完敗だよ。
私もアメリアを抱き締め返す。
彼女の鎖骨付近に顔を埋める。
「笑顔になった?」
「・・・うん」
「ほんと? 顔見せて?」
「やだ。今絶対変な顔してる」
「変な顔見たい」
「やーだ」
「見るー」
「アメリアーーー!!」
嫌だって言ってるのに体を引き離されて顎を右手で持たれる。
上にあげられて顔を見られてしまう。
「真っ赤。ユーリ可愛い」
「・・・っ。だから見られたくなかったのに」
「可愛い可愛い」
「もう、分かったから」
恥ずかしい。どんどん頬が熱くなっていってる気がする。
顔隠したい。のにアメリアが左右の頬を手で包んで隠させてくれない。
「・・・・・」
何? 何か言いたそう?
「あのねユーリ。言いにくいんだけど・・・」
なんだろう。私の顔見ながら真面目な顔。きっと深刻なこと・・・だよね。何か相談とか?
「森守人って耳が長いでしょう? ユーリって本当に照れた時は耳まで真っ赤になるから。だから実は隠してもバレてるんだよ」
「・・・えっ? それほんと?」
「うん! ほんと?」
「私、今まで何度も赤くなってきたよね。アメリアは何も言わなかったときもあったよね。それって分かっててわざと言わなかったってこと?」
「えっと・・・うん。黙っててごめんね」
「あ、ううん。アメリアは悪くないから。落ち込まないで?」
「許してくれるの?」
「うん。でもでもでもでも・・・」
まじかぁぁぁぁぁぁぁぁ。恥ずかしい。穴があったら入りたい。
あ、掘るか。土魔法で落とし穴を。
「ユーリ、落ち着いて?」
「うん、ごめん。つい。森守人って不便なんだね。感情隠せないとは」
「可愛いよ。ボクのこと好きなんだなぁって分かるし」
「・・・好き。好きってこういうことなの?」
「ユーリ。自惚れるけどユーリは何気に絶対ボクのこと大好きだと思う。ボクのことばっかり気にかけてくれるし、ボクのことよく見てくれてるし、触りあいとか抵抗しないし、むしろユーリってボクに触るのも触られるのも好きだよね。好きってそういうことだよ?」
「そうなんだ?」
胸に手を当ててさっきのアメリアの言葉を思案してみる。
アメリアは私を見つけてくれた。
見つけた私の傍にいてくれる。
私はアメリアが・・・好き。うん、好き。大好き。
ああ、凍ってたところが溶けて、解けていく気分。
代わりに温もりが溢れてくる。
「アメリア」
「ユーリ」
「あんたらさ」
2人の世界に入ろうとしたらリゼさんに間に割って入られた。
そして私はラナさんに。アメリアはアンナさんに捕縛される。
「いつ終わるか見てたんだけどね。いつまでたっても終わりそうにないじゃないか。強制的に止めさせてもらったよ。しかし砂糖が口から出そうだよ。何か苦いものが食べたい気分だね」
「「同感です」」
そう言えばここは外だった。皆がいるんだった。
私、恋したり物事に集中すると周りが見えなくなるタイプだったんだなぁ。
じ、自重・・・。自重。あれ? 前もこれ考えたことあるような気がする。
こ、今度こそほんとに自重ーーーーーーー。
「「申し訳ありませんでした」」
私とアメリアは土下座で皆に謝った。
アメリアは渋々だったけど、私がやるって言ったら付き合ってくれた。
知ってたけどさ。アメリアも大概私のこと大好きだよね。
今度また2人きりになったら・・・。
ゴホンッ。ダメダメ。すぐそっちに思考を持っていくのはほんとダメ。
"パーンっ"と自分の頬を自分で叩いて。
「遅くなったけど、盗賊達のごうも・・・こほんっ。尋問始めましょうか」
「ごうも?」
「いえ、なんでもありません」
「そうかい。尋問の用意は出来てるよ」
「はーい」
んじゃ。私達が助けた女性。姉と妹さんの2人に棍棒を渡して・・・。




