幕間03.腹黒ユーリと子供の演技と
畑の数え方が分かりませんでした。
「枚」であってますかね?
マウリの町を出て今日で10日。そのうち2日程の野営を得た私達。
心機一転。私達は数日前に新しい町・タウルの町に辿り着き、今度こそ冒険者登録。
青銅ランク冒険者として活動を始めた。
ちなみにシンシア師匠の紹介状は使わなかった。
使えば多分、もう少し上のランクから始められたのかもしれないけれど、ここのギルドの人達は誠実で冒険者達も王柄な態度を取るような人がいなかったから私達も普通に始めることにしたのだ。
苛々させられるような人は大嫌いだからそういう人達には使えるものは使うし、ときには暴力を使うことも吝かではないけど、そうじゃない人達の前で権力とか使いたくない。
誠実さに応えたいっていうとちょっと臭いかな?
でもそう思うんだ。だから、ね。
あ! 後、商業ギルドにも登録した。
というのもマウリの町で私がプロデュースしたことになってる下着類の売り上げの利益2割をもらうことになってるんだけど、その受け取り方法を毎月振込にしたいって店員さんに言われてね。なんでも商業ギルドに口座登録すると商業ギルドがある地域なら何処でもお金が受け取れるそう。
まさかこの世界に近代地球みたいなシステムがあるとは思わなかった。だから毎月マウリの町に行って受け取らないとダメなのかと思ってた。正直どうしようか悩んでたんだよね。便利な仕組みあってほんとに助かったよ。
それでこの下着類はマウリの町から徐々に他の町にも広がって来てる。
この町にもそれが来てた。元締めはマウリの町のあのお店。派生先は元締めのお店に毎月売り上げの中から幾らか払う契約になってるらしい。そういう全部が足された中から2割が私達の懐に入ってくるわけだ。
もしかしてこれって私達働かなくても良くない? 下着類大好評みたい。
その証拠に振り込まれてたお金見て驚きに飛び上がってしまった。
高級な宿に数ヵ月は泊まれるよ。
まぁ、節約のためにそんな宿には泊まらないけどね。普通で良いんだよ。普通で。
そんなわけで私達の旅生活は順調そのもの。
今日も冒険者ギルドで依頼を受け、目的地に向かう。
青銅ランクの依頼内容は薬草の採集とか町の人達のお使いとか町の清掃とかそんなのばっかりだ。
魔物の討伐とか盗賊の捕縛とか冒険者が冒険者らしい依頼を受けれるようになるのは銀ランクから。
それまでは新人で見習いでしかない。ギルドでもそういう扱いをされる。
誰もが通る道。中には飛び級してる冒険者もいるけど、そんな人達は全体の2~3%くらいだろう。それが多いのか少ないのかは判断に困るけど。
「町のお使いとか地味だから早くランクを上げたいって冒険者多いよね」
アメリアの言葉に私は頷く。
そう、多いのだ。ギルドでも新人冒険者の愚痴をよく聞く。
私達も同意を求められたことあるけど、それには首を横に振った。
私は案外この地味な依頼好きなのだ。
アメリアにスノー達も私が楽しそうだからか同じように楽しんでやってくれる。
ドブさらいとか汚れ仕事を受けても文句を言わない。
「臭い、臭いーーー」
って悲鳴は上げるけど。
アメリアって狼系だもんね。
私の何倍も嗅覚が優れてるもんね。
ごめん。ドブさらいはもう二度と受けない。
今回は畑仕事があったのでそれを受けた。
これは前にも受けたことがある。
場合によってはおこぼれがもらえる可能性があるからこれがあったら優先して受けるようにしているのだ。
お金と食材は幾らあっても邪魔にならないからね。もらえるならもらうよ!
依頼人の畑に辿り着く。数枚の畑。
その畑に実っているのは様々な野菜の他に黄金の稲穂。
黄金の稲穂・お米。この世界、お米は田んぼじゃなくて畑で出来るのだ。
ススキをイメージして欲しいかな。あんな感じで畑の土に実ってる。
最初見たときはさすがに違和感があって混乱したけど、とりあえず食べてみたら味はまさしくお米。
その場で農家さんと交渉して買えるだけ買った。
倉庫にあった古米もあるだけ譲ってもらった。
お米安いのだ。2㎏が銅貨数枚で買える。
理由はお米は人の食べ物じゃなくて家畜の餌って考えられてるから。異世界物あるあるだね。
そのせいで大量購入する私を農家さんは心底不思議そうな顔をして見てた。
「そんなにどうするんだい?」
って聞かれて「勿論食べます!」って鼻息荒く言ったら「えっ!?」って言われて次の瞬間には何か可哀想なものを見る目で見られて依頼後に夕ご飯奢ってもらったのは懐かしい想い出。孤児だとでも思われた? ご飯美味しかったです。訂正しなかったのかって? うん! そうしたらまたお米安く譲ってもらえそうだから。
はいはい、腹黒腹黒。
「「こんにちはー」」
アメリアと一緒に元気よく挨拶。
「おお、嬢ちゃん達かい。今回も頼むよ」
「「はい!」」
農家さん、なんだか嬉しそう?
そんな農家さんに畑仕事とは何をするのか聞くと収穫の手伝いだそう。
沢山収穫出来たら野菜やら米やら少しくれると言うのでテンションが上がる。
またまた夕ご飯も奢ってくれるらしい。太っ腹だ! 私達は早速作業を開始する。
スノーとシエルもいつものようにスライムジェルを手にしてお手伝い。
前回もやってたので見慣れたらしい農家さんはニコニコ微笑ましいものを見るようにその光景を眺めている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
もくもくと。一刻経過。私は早くもペースが落ちてくる。
この体、体力なさすぎて辛い。宿で軽い運動などして筋力、体力をつけようとしてるんだけど変わらない。
アメリアには小食すぎるからって言われ続けてる。そう言われても食べれないんだ!
「ハァ~」
腰痛い。ぐぐっと伸ばして深呼吸。
視線を感じて、そちらを見るとアメリア達の心配そうな顔。
「ユーリ」
『『ご主人様』』
いや、そんな。大丈夫だよ? そこまで重症とかじゃないから。
「大丈夫だよ」
笑顔で言ってもアメリア達は納得しない。
こっちに来てお姫様抱っこ。畑の隅にある木の下。木陰に連れて行かれて座らされる。
「ユーリはここにいて」
『『いて』』
「私は大丈・・・」
「いいから!」
『『から!』』
「はい」
仲間達が過保護すぎる件。
って農家さんも心配そうに見てる。
皆、心配性すぎない? 私を甘やかしすぎだと思う。
その後、私は座ってるだけだった。
体力回復したから戻ろうと思っても動いたらアメリア達と農家さんにも睨まれるんだもん。
動けなかったよ。威圧怖かった。
「今日もありがとね」
夕方。五の鐘が鳴って作業終わり。約束通り野菜などをもらった。
さすがに私ほぼ何もしてないし、断ろうとしたけど、どうしてもって押し切られた。
その代わり農家さんのお嫁さんのお茶飲み相手兼着せ替え人形になった。
「娘が出来たみたいで嬉しい」って泣きながら笑われたら少しくらい疲れてても着せ替え人形くらい務めるよ。
子供欲しかったけど恵まれなかったらしい。
それを聞いて私とアメリアは翌日の朝までこの農家さんの姉妹な娘を演じた。
私も性格的な意味で親には恵まれなかったから、普通の両親ってこんな感じなのかなって温かく幸せな気持ちになった。
一緒にご飯食べて一緒に寝て。翌朝はまた来て欲しいと何度も頼まれて泣き別れして。
私達は評価・最高ランクで仕事を終えた。




