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この世界が私の居場所 ~明るく楽しむ異世界生活~  作者: 彩音
第一部 始まり。そして旅立ち。
12/56

12.旅立ち前 その1

少々残酷な描写があります。

苦手な方は注意してください。

 シンシア師匠が提示した10日間。そのうち今日までに4日が過ぎた。

 その間行われていることは結構なスパルタで戦闘用魔法と杖を使っての戦闘の練習。

 私の場合生活魔法は問題ないようで気になるのは戦闘用魔法だそう。

 そのためしごかれてる。

 ゴーレム相手に実践。このゴーレムがゴーレムのくせに動きが速いの。

 私のヲタク知識にあるゴーレムって鈍重で硬いだけの自動人形(オートマタ)だった筈。

 それが全然違う。機敏すぎて魔法の構築が間に合わない。魔法ってどんな魔法を使うか、それから過程と結果のイメージを考えないといけないからのにどうしても攻撃までにタイムラグが発生する。

 魔導士の弱点。だから普通は時間を稼ぐために前衛が魔導士を守るのだけど・・・。

 前衛なし。ゴーレムの攻撃前に魔法攻撃を間に合わせろってシンシア師匠の無茶苦茶な注文。

 それが出来るようになるまで旅には出させないという。

 頑張った。頑張ったけどまだノルマは達成出来てない。今日も私は地面に転がっている。

 ゴーレムが迫ってくる。逃げないと攻撃されるのに体が動かない。


「ハァ、ハァ・・・ハァ・・・ぜーぜー・・・」


 荒い息。そんな中聞こえるゴーレムの足音。


"ザッザッザッ"

 ついに目前にまで迫られた。ゴーレムは私を見据えて容赦なくお腹に拳を落としてくる。


「げほっ」


 重い一撃。今朝食べたもの全部吐いた。

 意識が飛びそうになる。目がちかちかする。そんな目にゴーレムが二発目を放とうとしているのが見える。

 それを打たれたらもう動けなくなる。これまでの経験からそれを知ってる。

 

「っ」


 拳が私を捉える前に反射的に横に転がってそれを交わす。

 一瞬の隙。


上級治癒魔法(ハイヒール)


 内臓を治して立ち上がる。

 杖を持ってゴーレムの次の攻撃を待つ。

 

「――――」


 やっぱり早い。すぐさま体制を立て直して殴りかかってきた。

 お腹を狙っての右の拳。見切って杖で受ける。

 安心したのも束の間。顔に左の拳が迫っていることに気付かなかった。


「!!」


 殴られて体が吹っ飛ぶ。二転、三転。まるで風に吹かれた木の葉のように地面を転がる。


「げほっげほっ、げぇぇぇぇぇぇっ」


 それでも立ち上がろうとするも背中に衝撃。

 ゴーレムに踏みつけられてしまったらしい。


「このっ・・・・・・・」


 頭の中で魔法を作る。

 しかしそれより早くゴーレムに蹴り飛ばされ、私はまたまた空を飛ぶ。

 木に体を強く打ち付け、私の意識はそこで途絶えた。

 今日も負けた――――。




 夕刻に意識は浮上した。

 怪我などはいつものようにシンシア師匠が治してくれている。

 悔しい。勝てないこともだけど、シンシア師匠の期待に応えられないのが悔しい。


洗浄魔法(クリーン)


 身を綺麗にして寝かされていたベットから立ち上がる。

 

「ユーリ」


 アメリアの心配そうな顔。


「大丈夫だよ」


 微笑み、そう答えて私は台所に向かう。

 数日前、手料理を作ってから料理担当は私になった。

 料理を作るのは好き。だからどんなに消耗してても私が作る。


 今日使う食材はアメリアが微塵にしてくれたオーク肉とホロホロ鳥のミンチ、それとネギことグリーンオニーオン。調味料として塩、コショウ。

 念のため食材にも洗浄魔法(クリーン)をかける。食あたり怖いしね。

 準備が出来たら水魔法で氷と水を作り出し、ボウルにそれを入れる。

 その上に別のボウルを乗せてその中にお肉と調味料を入れてよく捏ねる。

 死ぬほど手が冷たく感じるけど、そこは気合で我慢!

 お肉にねばりが出るまで捏ねたらまた水魔法を使って冷やして寝かせる。

 その間にグリーンオニーオンの白い部分をフライパンに入る長さに包丁で切る。

 鍋に水魔法で作った水を入れて沸騰したら先程切ったグリーンオニーオンをそのお湯に潜らせる。

 ある程度冷めたら中を押すと簡単に皮が剥けるのでこれを必要な分だけ何度か繰り返して量産する。

 それも出来たらグリーンオニーオンの片端をアラクネという名の魔族が作り出したらしい糸で結んで結ばれてない側から先に寝かせて置いたお肉をそれに詰める。

 このとき皮を破いてしまわないように気を付けること。後は焼くだけ。

 ソーセージもどきの出来上がり。


「ソーセージもどき。かんせーーい」


 見た目良くお皿に盛りつけて黒パンも用意。

 フォークなど用意が済んだらアメリアとシンシア師匠を呼ぶ。


「夕食出来たよー」

「あいよ」

「はーい」


 やってくる2人。

 シンシア師匠は朗らかに微笑んでいて、アメリアは尻尾を千切れんばかりに振っている。

 2人共それぞれリアクションが違うけど、喜んでくれてる・楽しみにしてくれてるのは分かる。

 この様子を見るのが嬉しい。


 席について「「「いただきます」」」。

 この食前の「いただきます」と食後の「ごちそうさまでした」の言葉は私が教えた。

 私が言ってたことが気になったらしくて聞かれたから。

 命をいただくこと、或いは生産者・作ってくれた人に対して感謝の気持ちを込めて言う言葉だって伝えたら2人共何か思うところがあったらしくて一緒に言ってくれるようになった。

 これ地味に心がポカポカする。一緒に言ってくれることに幸せ感じる。


「これはなかなか美味しいじゃないか」


 シンシア師匠はゆっくり美しい作法で。


「ユーリ、今日も美味しい。おかわりある?」


 アメリアはガツガツと。でもとても美味しそうに。


 皆で食べるご飯は美味しい。

 今日の夕食も好評だった。




 食事とお風呂を終えて睡眠前。

 ベットの上。寝転がりつつ、私はここ数日悩んでいるとある事柄について今日もまた悩んでいた。

 というのもこういう世界で定番な次元収納箱 (アイテムボックス)

 なんとか再現出来ないかなぁと考えているのだ。

 

「うーん」


 スマホをちまちま弄りながら考える。

 今はもう、少し遠くて懐かしい地球で撮った写真達。

 ちなみにスマホの電池問題についてはシンシア師匠に相談した結果、リチウム電池を錬金術でミスリルに変えて魔力で充電可能にしてもらうことで解決した。

 充電は雷魔法が使えるアメリアがしてくれる。

 そのアメリアは私に寄り添って一緒に写真を見ている。

 こっちの世界にはない地球の景色。興味深そうに見ているのが可愛い。


「これがユーリが生きてた世界?」

「そうだよ」

「建物おっきい。ご飯も美味しそう。でも灰色多いね。それにこの人達皆窮屈そう。ユーリも笑ってないね・・・。こんなに豊かそうな世界なのにどうして?」

「それは・・・」


 言われて口篭もる。

 私の場合は勿論、虐待や虐めにあっていたからだ。

 その他の人達は疲れてるんだろう。地球・近代日本は豊かすぎて逆に疲れる国だった。

 人と人との距離が近くて遠くて、顔色を窺って生きなくちゃいけなくて、貧富の差がそこそこあって。など。理由は色々。人それぞれ。


「豊かすぎだったから、かな」


 そう言った私の声色に何か感じたのだろうか。

 アメリアは私の頭を撫で、それから顔を両手で引き寄せて自分の胸に押し当てる。


「ちょ、苦しいよ。アメリア」

「ユーリ。ボクは絶対ユーリを裏切らないから。傍にいるから」

「・・・・・」

「もう、1人じゃないよ。大丈夫、大丈夫だよ」


 ああ、もう。なんでこう私の気持ちが分かるかなぁ。この子は。


「アメリア・・・」

「なぁに?」

「ありがとう」


 涙が零れる。

 私はこの日、アメリアの胸の中、まるでアメリアに守られ・包まれるようにしてぐっすりと眠った。

 段々アメリアに依存させられてるような気がする。気のせいかな。






「ユーリ。ユーリはボクのもの。もっともっとボクに甘えて。そして・・・」

※ご飯参考 某百合漫画

作者も作りましたが美味しかったです!!

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