01.転移の前兆
新連載です。
今日も今の今まではいつもと変わらない1日だった。
朝早く起きて両親のためにご飯を作ってそれから学校。
クラスメイトを主体に先輩と後輩、果ては教師の一部の話し相手・遊び相手になって現在は放課後。
通学路。コンビニで買い食いする連中を冷めた目で横目に見ながら歩き、立ち並ぶコンクリート群を横に最寄りの駅に向かってひたすら歩く。
通学路の一部となっている国道の横断歩道を通過。
そこからまた少し歩いて進行方向に見えてくる神社を右折。
その瞬間、私の足元に青く淡い光が円状に立ち上って私を包み込んだ。
「何っ!?」
なんて思わず叫んでしまったものの、実はこの現象に心当たりがないわけでもなかった。
最近流行りの異世界転生・転移物。
とある事情から世の中から逃げるようにヲタク趣味に没頭している私からすればこの現象はまさしく異世界転移の前触れ。
次に何が起こるか大体理解出来る。
ふと青の輝きの中から周りを見渡してみるがこんな現象が起こっているにも係わらず誰もかれも皆、気にもせずに極々普通に道を歩いている。
これはこの現象に巻き込まれているのが【私】だからというわけではないだろう。
恐らく他の皆にはこの現象は見えていないのだと思う。
だから誰1人としてここで起こっている異常事態をそれと認識せずにいる。
「なんだ! これ」
ここで初めて青の輝きの中に私以外にももう1人、人がいることに気が付いた。
「山村君?」
「青葉さん? これって」
私が山村と呼んだ男性が私に手を伸ばしてくる。
その手が私の肩に触れる前に青の輝きがより一層青く輝き、地面に五芒星が描かれてその周りに何やら難しい模様のような、文字のようなものが浮かぶ。
「・・・・・」
それが完成する前にこの輝きの中から外に出れるか試してみたがダメだった。
手が触れた途端、なんらかの力によって弾かれるのだ。
ダメっぽいね。分かってたけど。
私は潔く流れに身を任せることにした。
やがてすべてが完成する。
思ってた通り、これは光の魔法陣。
五芒星が下から上に浮かび上がってくる。
光の星に触れたところから肉体が粒子のように消えていく。
「うっうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! なんだよ。なんだよ、これ」
煩い。泣いても喚いても何も変わらないんだから大人しく状況を受け入れたらいいのに。
無駄に騒ぐ意味が分からない。体力の無駄。気力の無駄。時間の無駄。全部無駄。
すでに体は腰の辺りまで粒子となって消えた。
この調子でいけば全身が消えるのはすぐだろう。
これから行くであろう世界がどういう世界なのかは知らない。
でも、私は・・・。
頬を一筋の滴が伝う。
この糞みたいな世界から逃れられるなら私は――――。
悠里「異世界転移ひゃっほーーー!」
山村「青葉さん? こっちの世界は嫌だったの?」
悠里「嫌に決まってるじゃん。こっちの世界は糞だよ」
山村「あ、えっと・・・。ところで今後俺の出番あるのかな」
作者「私が忘れなければある!」
山村「ちょっ!!」
作者「地の文一行で悠里と一緒に転移した男がいたがどうやら死んで・・・とか可能性もある」
山村「扱い酷くね!?」
悠里「まぁしょうがないと思う。うん」
山村「青葉さーーーーん」
悠里「次回 エルフ?」
山村「待って! 締めないでーーー」