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結生徒共和国日記  作者: 天王 斗迅
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1話 前兆

 -結生徒共和国 帝都 結城-

 この都市の中心に横井玲子の家はある。家というよりは屋敷といったほうがいいのかもしれない。ここ帝都の中心には結城中学校がありその敷地内にはこの国の様々な行政機関が終結している。その周りには官僚や帝都の学校に通ってる学生の寮や家が建っている。横井の屋敷もその中に立っており中には少なくないメイドが働いている。その屋敷のリビングでソファーに座りながら向かい合って話している二人の少女がいた。この国の国家元首の横井玲子とその妹の華澄である。


「佐野連合国の動きが活発になっているらしいんじゃない?」


紅茶を啜りながら玲子が華澄に話しかける。


「そうなのよ。この頃佐野軍の通信が活発になっているし、軍需工場が一日中フル稼働しているみたいだし。お姉ちゃんはどう思う?」


「そうね、今までの情報を踏まえると・・・そろそろなのかしらね。」


その言葉に華澄はごくりと息をのんだ。


 佐野連合国が活発になっている。


 佐野連合国とは栃木県の佐野市を首都とした生徒国で結城が南関東を領土としているしているのに対し、佐野連合国(以降佐野とする)は北関東、北陸を領土としている。詳しく書くと結城が茨城、千葉、東京、埼玉、神奈川、山梨、静岡、そして栃木の一部を領土としているのに対して、佐野は福島、新潟、群馬、長野、富山、栃木の一部を除いた地域を領土としてる。ちなみにかつて群馬を領地とする「群馬王国」という国があったが、建国されてすぐ佐野によって征服されている。決して小国とは言い難くむしろ油断ならない国家である。

 この国の元首は日出貴狼という人物なのだが、この人、とにかく謎が多い。父親は日本人で母親はドイツ人であることは分かっているのだが、それだけである。出自やその他のプロフィールについてはあまりわかっていない。名前も偽名なのではないのかと思うほどだ。そんな国が近年軍事行動を活発化させている。それは佐野と結城の開戦可能性があり、横井も今まで以上に警戒していた。


「開戦は避けられないの?」


「向こうが一方的に戦線布告してきたらどうしようもないわね。仮に、開戦になったとしたら華澄はどうしたらいいと思う?」


「できれば短期決戦で行きたいわ。戦争が長引けば戦況は膠着する。できれば六か月くらいで決着をつけたい。」


「それは、ずいぶんと短く言ったわね。」


紅茶を啜っていた玲子は目を見開いて驚いていた。


「だからこそ、戦争の期間を縮めるためにも第一潜水艦隊がいるんでしょう?」


華澄が笑顔を見せた。

-第一潜水艦隊-それはこの先の戦争をより被害少なく終結させるための、その切り札である。


「そうね、この戦被害少なく終わらせたいものね。」


二人の願いはいかに・・・




 2014年10月佐野は着実に戦争の準備を進めつつあった。さらに結城と隣接する国境沿いの基地に戦闘機や戦車などを配備していった。また日本海側の港に多数の艦艇を配備し防備を固めていった。この情勢を受けて玲子は「平和宣言」を発表し、こちらに攻撃の意思はないこと、隣国との平和的外交を訴えた。しかし、佐野側はこの宣言を受け入れようとはしなかった。その間にも佐野は次々と軍備を拡張していった。ここに至って玲子もとうとう開戦を想定し、華澄に命じて結城の主力艦艇を大洗港や鹿島港に集結させ軍の主力を国境付近に移動させた。歴史の歯車はますますその回る速度を上げていった。


 開戦は間近であった。


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