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えんじょい・CM

勢いで書きなぐった


俺の名前は岩永亮。


つい最近までは売れない俳優だったが、マネージャーからCMの依頼が舞い込んだ今楽屋に来ている。


このチャンスはなんとしてもものにしたい。

今回のCMで一つ俺の役者魂を見せ付けて、まぁ一気にとは言ないから徐々に徐々に上がっていきたい俺にとってこのチャンスは死んでも放さない!!

放したくない!!


「じゃ打ち合わせしますね。」


というわけで大して広くもないこの楽屋に今回のCMの担当者っぽい人からCMの予定を聞くこととなった。


ふ……下積みだけはしてきた俺だ。


砂を噛むような経験だってしてきた。


どんなCMだろう一発ノーミスで決めてやる。



「はい。じゃあ岩永さんにやってもらう今回のCMはペットフードのCMですね。」


「はぁ。」


ふん、ペットフードとはな。

これでは犬主体の撮影になってしまうではないか!!

まぁ犬以上に見た人を引き付けるような演技をすればよいな。


「それでですね、岩永さんにはこれを付けて犬役として出てもらいます。」


そう言って担当者さんが机の上に置いたのは俗に言う犬耳と犬の尻尾だった。




ふむふむ




犬役ねぇ




「え?」


思わず頷いちった。

犬、とな?


「こ、これを付けろと?」


「はい。」


「犬役として?」


「はい。」



ちょっとマネージャーさん聞いてないンすけど俺!?


「あ、勿論犬になりきるために服などは一切着ませんので。付けるのは犬耳と犬の尻尾だけです。」


「裸じゃないですか!?なんで服ないンですか!?」


「はぁ……まぁ予算の関係というか……」


「予算ないの!?」


「はい……国家の……」


「国営CM!?」


急に話がでかくなったなオイ!?


「じゃあ股間とかどうするんですか!?色々マズいでしょう裸は!?」


「あ、そこは上手く撮影しますんで。」


なんかヌードの撮影みたいな話になってきたな。


「大体、この尻尾どうやって付けるんですか?裸じゃ無理ですよ?」


「あ、それはケツの穴に突っ込んでください。」


「ケツゥ!?」


しまった、思わず大声出してしまった。

これケツの穴にさすんですか!?

相当無理ありますよ?


「よくほぐしてから入れるんで多分いけますよ。」


「誰がほぐすんですか!?」


事と場合によっちゃあ、破談しますよ。


「その手のプロです。」


「新宿二丁目の香りがプンプンしてきました。」


「で、ですね。この犬耳なんですが……」


スゲーな、堂々無視かよ。

この人が担当者さんじゃなかったら確実に殴ってるぞ。


「カチューシャタイプの犬耳ではないので、頭に打ち込むかたちとなりますね。」


「打ち込む!?」


あ、新しすぎる!!

確かによく見たらこの犬耳、付け根に鉤爪みたいな金属がありますね。


見るからに痛そうなのが。


「頭蓋骨に直接打ち込むタイプのと、脳みそに差し込んで引っ掛かる骨針タイプのと二種類あるんですが。」


何そうエグいことサラッと言っちゃってんのこの人!!



「なんで犬耳がこんなのに……?」


「予算の関係で……」


嘘つけや!!

二種類用意する余裕あったら少しは普通のにまわさんかい!!


「で撮影内容なんですが」


「ちょちょちょ!!ちょっと待ってください!!なんでもう出る流れなんですか!?まだ承諾してないですよ!?」


こんな頭に犬耳打ち込まれるような仕事、下積み時代にもなかったわ!!


「いえでも、代わりの役者さんもいないですし……それにこのCM出れれば結構有名になれますよ?」


「そ、そうなんですか?」


「まぁ……生きてれば…………なんですけどね。」


「え?今何て!?」


「それで撮影内容なんですけどが……」


今この人絶対不幸なこと言ったよ!!

俺と目合わせようとしないもん!!



しかし乗りかかった船だし、最後まで聞いてみよう。

聞くだけなら損はない。


「内容はですね、岩永さんと二匹の犬で新商品のペットフードを奪い合ってください。」


まず確実にゴールデンの時間帯では流せないCM確定。


「それで岩永さんがそれを食べてこう言うんですよ。『ドナルドがハンバーガーを好きなくらいに、岩永もペットフードが大好きなんだ。』って。」


「言っていいんですかそれ?」


マクドナルドにケンカ売ってませんかね?

ピエロ紛いのアレと戦うのはイヤだよマジで。



「注意点ですがペットフードは死ぬほどマズいので、撮影終わるまで吐かないで下さいね。」


「そんなにですか!?」


吐くくらいマズいって犬はそれに近付くの!?

近付けるの!?


「勿論犬が近付かない可能性もあるので、岩永さんには犬を惹きつけるバターを塗ってもらいます。先陣切ってください。」


「なんか犬の目標がペットフードから僕に代わってませんかね?」


文字通り俺はバター犬になるのか。

そして俺がこのCMで惹きつけるのは人ではなくて犬とはね。

悲しくなってきたよ。



すごくね。



「あ!?ところで犬って何が来るんですか!?」

今までの話の流れからしてスゴいの来ちゃいそうなんだけど!?


「チワワとミニチュアダックスフンドです。」


この勝負もらった!!


いや別に犬と争うつもりはないけど、チワワとミニチュアダックスフンドよ?


負けたら人間失格っすわ。


「じゃそろそろ撮影入りますんで。行きましょう。」


「え!?犬耳と尻尾は!?」


「裸なら問題ないです。」


そこが重要なの!?

裸が大事なのね!?

よくわかりました!!





取り敢えず撮影の現場まで来たのだが、関係者も結構集まっている。

どうやら俺待ちのようだった。


「じゃ紹介しますね。チワワくんとミニチュアダックスフンドくんです。」


紹介された先にいたのは二匹のドーベルマン。

涎垂らしながらバイクの空フカシみたいにグルグル唸ってます。


「ドーベルマンの『チワワくん』『ミニチュアダックスフンドくん』です。」


「ンなバカな!!」


なんで!?

名前がチワワとミニチュアダックスフンドで、犬種がドーベルマンなんて!!


詐欺にも程があるぞ!!


しかもなんだよ!?名前にミニチュアダックスフンドって、犬ナメてんのかコラ!?


「君が岩永くんか。大丈夫。その犬はよほどのことがない限り襲わないよ!!」


監督らしき人がそう声をかけてきた。

僕はそのドーベルマンを惹きつけるためバター犬になるよう言われたんですがね!?


どうですかねその事については?


「大丈夫さ。十分あの子たちを惹きつけてくださいね。」


満面の笑みで担当者さんはそう言ってきた。


惹きつける前にひきつけ起こしそうなんですけど……


「あ、それと噛まれないよう十分注意してくださいね?チワワくんとミニチュアダックスフンドくん、まだ狂犬病予防接種受けてないから。」



帰っていいすかね?


真面目にやろうよ。

命掛かってんだから。

やる俺の方もどうかと思うけどさぁ


「それと、二匹とも今が発情期なんで掘られないように気を付けてください。」


さっき話してたその手のプロってチワワくんとミニチュアダックスフンドくんのことだったの!?


「そろそろ撮影はいりまーす。成功しても失敗してもチャンスは一回なんで気張ってきましょー!!」


何でチャンス一回なんだ?

不吉な予感がバリバリしますが?

いざ撮影の時に、担当者さんが耳元でボソリと呟いた。



「最後にもう一つ、あの二匹、もう五日もご飯食べてないんですよ。」


「俺餌確定じゃん!!」




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