表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六つの神通  作者: 内田龍太郎
6/8

習慣


 匂坂が座禅を終えると、朝がやってきた。多摩市で迎える初めての朝。朝妻の姿は、とっくの昔に消えている。十五分かけて、入念なストレッチを行った後、匂坂は多摩の駅に戻った。

 風呂に入るためである。

 駅前には二十年前から店を構える老舗の健康ランドがある。匂坂は地方情報誌から、健康ランドの存在を知っていた。じっくり一時間、湯船につかる。風呂から上がり、真新しい下着に着替えた匂坂は、ノートを開き、一週間の予定を箇条書きにしてまとめる。内容は以下の通り。


一、犯人を捕まえる

    ↓

   そのために

    ↓

 ・情報収集する

 ・現場で座禅

 ・武器をまとめる

 ・もう一人の受験者を探す


 「その日のうちにしなければいけない仕事を書き出すと、有意義な一日が送れる」

 これは匂坂佑司の父の言葉だ。あまりにも真っ当すぎる助言だが、続く言葉は『非凡』とまでは行かないが、中々皮肉が効いている。

「大人の九割は実践できない」

 匂坂は一割の方だった。

 正確に言うと、一割に『なった』。中学生の時、父の言葉を聞いて以来、毎日欠かすことなく、その日の目標を記入し、就寝前には成し遂げた項目を黒く塗りつぶしていた。他人に自分の努力をひけらかすのは恥と考えているこの男は、誰にも――もちろん、父親も例外でない――知られることなく、千枚以上のメモ帳を書きつぶしているのである。

 リストを見つめること一分。「情報収集する」に大きく丸をつけると、匂坂は健康ランドを後にした。

 向かったのは図書館だ。朝妻と待ち合わせした公共施設である。蔵書の規模は十数万冊。地方市にしては中々の規模である。ただし、今回の目的は書物ではない。

 匂坂はまっすぐにカウンターへ向かうと、司書の女性に尋ねた。

「新聞はどこにありますか?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ