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六つの神通  作者: 内田龍太郎
3/8

団地

 団地が二人を囲んでいた。等間隔に並んだコンクリート仕立ての建物群は、匂坂に威圧感を与えてくる。

「人がいませんね」

「もう廃墟になってるからな。ニュータウン計画で70年代から親子連れが移り住んできたんだけど、子育てが終わってオサラバ。来月には取り壊しが始まる。知ってた? ここは当時『夢の町』って呼ばれてたんだってさ。言ってみれば、今の豊洲辺りに近いイメージかな」

「どっちかっていうと、悪夢を見そうですけど」

 陽の落ちかけた団地は不気味さを増している。明かりの少ない建物はまだ見ていられるが、非常灯も付いていない建物は直視に堪えない。寝たきりの植物人間に似ている。死んでいるわけではない。かといって、生きているとも言えない。明かりのつくことのない住まいは、起き上がることのない人間と同じ。

「まあ、悪夢は間違いなく見るだろうね。感じるでしょ?」

 朝妻の問いに匂坂は目を瞑って答えた。

「五……いや、七人……死因は……焼死?」

「そうだね。火事だ。ただし、人数は八人。赤ん坊が抜けてる」

 匂坂は意識を集中させる。かすだが、赤ん坊の声が届く。

「すみません」

「いやいや、優秀、優秀。使ったのは〝天眼〟?」

「〝天耳〟です」

「なるほどね。まあ、これはほんの小手調べ。あんたにはこれから一週間、この町に留まり、この事件の犯人を取っ捕まえてもらう。無事、達成できたら合格。あんたは晴れて祓い師の仲間入り」

「捕まえるだけでいいんですか?」

「成仏させる気? できるならやれば? 言っとくけど、犠牲者にはあんたと同じく祓い師の見習いもいたんだからね」

 匂坂はため息をついた。

「死ぬかもしれない試験ってのはマジだったのか」

「OJTだ、OJT。この程度の悪霊にやられるようじゃ、どっちみち見込みはないよ」

「分かりました」

 匂坂は地面にあぐらをかいて座り込んだ。

「何してんの?」朝妻が尋ねた。

「『探す』んです」

「ごめん、集中する前にもう一つだけ。失格の条件だけど、一週間以内に見つけられなかったら、もちろん失敗ってのは言うまでもないんだけど、もう一個条件があるの」

「何ですか」

「この試験、実はもう一人参加者がいるんだよね。そいつに先越されてもアウトだから」

「……そいつの名前は?」


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