ドキドキしちゃいました。
「……ん。あれ? わたしどうしてたんだっけ」
気付いたら朝になってました。もちろん、ウサギのままです。それにしても何だか視界が狭い気がする。縦と横の線が交互に見える? なにこれ? まるでカゴみたい…ハッ!? わたしカゴに入ってる!? な、なんで…どうして。
「アナタは誰? どうしてウチのカゴに入ってるの? わざわざ捕まりに来たのかな」
気付いたらわたしのことをじっと見つめているエルフさんが…って、あれ? 女性のエルフ…しかも美人さんだ~。昨日のイケメンエルフはどこにいるのかな。
「あの~昨日のエルフさんに助けてもらったはずなんですけど~…何故かカゴの中に入ってて…お姉さんは何か知ってますかぁ?」
「あぁ~アレは夜のわたし。昼は女に戻るんだけど、夜の記憶がなくてね。カゴに入れられちゃったんだね。ごめん。でも、自由に出て行っていいよ。カゴにカギなんてかけてないし」
ギィィィ…ホントだ。空いてる。じゃ、じゃあ遠慮なく…
「アナタ、ルルさんだっけ。わたし、夜は男に戻るからうんと遠くへ逃げてね。また捕まるよ」
「は、はい。でもこの中にいた方が安全かもしれないです…ここにいていいですか? 男のエルフさんと仲良くなってわたしは戻りたいんです!」
「うーん…あいつは性格悪いし束縛野郎だからなぁ…変な意味でドキドキするかも」
「でもでも、わたし何としてもウサギ人生を抜け出したいんです。その為にはドキドキするような恋をしないと」
「ドキドキ、ね。それならルルさん、目を閉じて…」
「は、はいっ! 閉じました」
パチンッ! 美人のエルフさんが指を鳴らした。そして、沈黙。もしもーし? エルフさん?
恐る恐る目を開けたわたしの目の前には巨大な獣がいて、今すぐにでも食べられそうになっていた。ええええ? な、何で、どうして…し、心臓がバクバクしてる…わたし、死んじゃうの? ウサギのままなんてあんまりだよ~~心臓がバクバクドキドキしたまま獣の大きな口がわたしを飲み込もうとした…
「……あぁぁ…短いウサギ人生だったなぁ~~」
暗転――
「真っ暗闇だ…死んじゃったのかなわたし。アイドルにもなれず恋も出来ず…はぁぁ……」
パチン。
目の前が明るくなった。
「ん? 電気もつけずに何してるんだ? るるこ君。帰ってたならきちんと報告に来てもらわないと」
「あれ? 社長? って、わたし戻ってる! ど、どうして? 何で?」
「恋をしたから人間に戻ってこれたんだろ? ドキドキするような恋を」
「確かにドキドキしましたけど…も、もしかしてその辺はゆるい? あのエルフさん知ってたのかな…。でも恋って難しいなぁ…」
とりあえず、恋は出来てないけど人間に戻って来れたわたし。でも何だかもどかしい。こんな状態で戻って来たことにどうにも納得が出来ない…。
「納得の行かない表情をしているな。それなら燃えるような恋をしてくるといい。また転生っていうのは芸事が磨かれるわけでもないし、その姿のままある場所へ行ってきなさい。るるこ君は2000万を使って、いい男たちと一晩を過ごすこと。いいね?」
「ひひひ…一晩!? わ、わたしそういうのは無理です~~それならやめます~」
「勘違いしてるようだけど、そっちの意味じゃない。ホストクラブへ行って一晩を過ごして来なさいという意味だ。正直2000万じゃ微妙ではあるが…そこで口説かれてくればいい。じゃ、私はこれで失礼する」
「えええええっ!? しゃ、社長ぉぉ……ってわたしがホストクラブ? うそぉぉぉ……ってか未成年なのにそこはいいんですかぁ?」
ウサギ人生から一転…今度はホストクラブに行くことになりました。ここでわたしは大人への一歩を突き進むことになるんでしょうか――