カゴの中のウサギ(わたし)
「ルルさん、そっち行ったよ!」
「あっ、はい~えいっ!」
ろろさんとの連携で、わたしはウサギとして初めて獲物をゲット出来た。いくらウサギだからと言っても、草ばかり食べてるわけにはいかず…というより、中身は人間なのでウサギでもお肉を食べていいという勝手な解釈をしていたのです。
「それにしても草って美味しいんですね~わたし感動です。人間の時でも食べられたらいいのになぁ」
「食べられるよ。天ぷらでもいいし、炒めるのもオススメだよ!」
「えええっ? そ、そうなんですか~でもどうしてそんなことを知っているのです?」
「僕はお金が無い代わりにその辺の草を食べて生活してたんだ。まさにサバイバルって感じだね。驚かせちゃったかな?」
「す…素敵です!! わたしよりも全然偉いですよ~わたし引きこもりでしたし。外に出ていてしかも、サバイバルだなんて尊敬通り越して好きになっちゃいます。好きになっていいですか~?」
こ、今度こそ…恋が出来る予感~……
「ごめんね。ルルさんとは無理だよ」
ガーーーーーン!!! そ、そんなぁぁ……自然の流れで上手くいくと思ってたのに。
「はうぅぅ…どうしてダメなんですか~? わたしに何か足りないところがあるなら直しますから~」
「ルルさんと僕は同じ事務所だよね? それはさすがに無理だよ。そんな簡単に行っても社長は認めないよ? だから、ごめんね。そして、本当にごめん!! 僕は一足先にウサギから人間に戻ることになったよ」
「ほえええ? な、何で? せっかく連携が上手く行ってたのに…ウサギをやめちゃうんですか?」
「ルルさんは恋をするのが仕事。僕は告白を振るのが仕事…だから、ごめん……」
わたしの告白を振って、ろろさんはあっという間に人間に戻ってしまった。見た感じ、男の子のわりには華奢で女の子みたいで透き通るほど白い肌をした男の子だった。アイドル志望なのも頷けるかも。
本当にホントに一人ぼっちになっちゃった。こんな姿で言葉が通じて恋が出来る相手って、この世界にいるのかなぁ…。
トボトボと歩くイメージでわたしは森の中を進んでいた。はぁ…どうすればいいんだろ。辺りはすっかり暗くなって夜になっていたけど、構わずぴょんぴょん進み続けた。
ガサガサと長く伸びた草をかき分ける音がして振り向こうとすると、背中を掴まれた気がした。え?
「こいつぁ、美味そうだな。今夜は鍋にするか!」
「駄目だめだめ!!! わたしなんか食べても美味しくないですよぉ~~!!」
とにかくバタバタと手足を動かして抵抗した。やばいやばいやばい!! 絶対やばい~~
というか、言葉が通じない!? 嘘でしょ~~やめて~下ろして~~
必死に暴れていたわたしの頭上を何かがすり抜けてた気がする。ちょっとヒリヒリしたけど、何だったのだろう? と思ってたら地上に落とされてすごい衝撃を受けてしまった。うぅ、痛い……
「そこの可愛いお嬢さん、大丈夫? 怪我は無かったかな」
「ほえ? ちょっとヒリヒリするけど大丈夫です~って…ま、まさか……この耳、この姿…エルフ様!?」
「うん? そうだよ。お嬢さんのお名前は?」
「わたしっ、ルルです! 今はウサギやってます。助けて頂いてありがとですっ!!」
「面白いお嬢さんだね。ルルさん、よかったらウチに来るかい?」
「是非ぜひっ!! 行きたいですっ。お願いします!」
エルフさんに矢で助けてもらった上に、ウチまで招待を受けちゃうなんて運がいいかも。ふふっあわよくばこのイケメンなエルフさんと恋仲になっちゃえば…今度こそは戻れる!
(ウサギのルルさん…か。可愛いね。ずっと飼って傍に置いておきたい……フフ…)
なんて心の声を知らずにドキドキしながらエルフさんのおウチにお邪魔することになったのです――