顕微鏡はお好きですか?
恋をするのがお仕事です! 作:ハルカ カズラ
瑠々子、18歳。引きこもりのアイドルです!
……で、今は不思議な所に来ています。日本どころか地球ですら無い気がするけど。わたしがアイドルになるために突き付けられた条件は、恋愛をすること。普通、アイドルって恋愛御法度だとか、恋愛したらファンなんて出来ないだとか言われてるけど、わたしが所属しているプロダクションは普通じゃないみたい。
オールアバウトプロの社長は、人のようで人ではなかった。たぶんどこかの星から来てる星人? でも、そんなのはどうでもよくて、わたしは全能なアイドルになってチヤホヤされればいいのです。
「瑠々子さん、まず手始めに、ミクロで偉大な方と会って来てくれるかな。そして、その方と恋をしてください。上手くいけば星一つ手に入ります。そしたら君のファンは星一つ分、確保できる」
「星一つって…どれくらいの大きさでどれほどの人が生きているんですか?」
「人じゃないよ。ミクロ…あぁ、そうか。キミには見えないか。その方と会うときは、地球で作られた顕微鏡を持っていくといい。役に立つというか、見えない方だからね」
「あの、社長…でいいのかな。そんな極少で見えないモノ? と恋なんて出来るんですか?」
「キミは分かってないな。小さきモノ…自分が見えない存在を否定するのか? 何者も肯定すべき存在だ。そして尊い。そもそも引きこもりの人間の女が偉そうに言うのか? アイドルになりたいんだろ。人気者に! だったら、やるべきことをやれ。そうでなければ意味がない」
「は、はい……で、でも何が恋になるのかなんて…」
「つべこべ言わずにこの部屋から出ろ! そうすればそこにたどり着く。恋を実らせないと、君はここに戻れないから頑張れ。以上!」
なんて投げやり…恋愛って、相手のことが気になって、好きになって好きで好きで…じゃなかったっけ? わたしが偉そうに言えた口じゃないけど…最初から難易度高すぎない? 何よ、ミクロって。
「え、えーと…この一息で吹き飛びそうな星がそうなのかな? そーと…そぅーと…」
「ぉぉ、ょㇰキタネ」
「は? どこ?」
何かがわたしに呟いている? でも見えないし…聞こえないし……あっ、顕微鏡!
顕微鏡を覗いて、わたしはすぐさま後悔と、お詫びと…事務所をクビになる覚悟をした。
「息でどこかへ飛んで行っちゃった? 見えないしいないんだけど…ど、どうしよ」
って、恋以前の問題じゃない! 駄目だって、こんなの。もっと大きな存在じゃないと出会うとかそういうのも出来ないし。戻ろう……
「……瑠々子くん…キミの息でどれほどの人口がいなくなったと思う? 3千ミクロだ!! 何てことをしてんだ。引きこもりが長くて遠慮と気遣いと優しさも忘れたのか? 全く、何て子だ……」
「あのあのっ…ごめんなさい! でもでも、出来れば私の息で吹き飛ばされないくらい見える存在と、話が通じるモノでお願いします……次、次こそわたし、やります! お願いします」
「……分かった。次は地球にしとく。簡単だろ? 地球のアキバという所に行きなさい」
「アキバ? え、嘘…そ、それなら行きます! そこで恋愛相手探して恋をして来ます! で、では!」
何だか拍子抜け。ミクロの存在から一気に現実に戻された感じ。アキバなら聖地じゃん。イケそう。
恋愛…同じ人間なら簡単だよね。よぉし、やるぞぉ! 案外、あっさりとした展開でわたしは、次の場所であるアキバへ向かった――