プルすら4
休憩時間、ギルマスのお爺にお呼ばれされて、カタノの事件の顛末を伝えられた。
とりあえず、法律上の犯罪者ではなく、ギルド内部で罰則を受ける形でした。
ギルティはいいけど、何でわざわざオレ氏が呼ばわれた?
内容は、現ランク剥奪の上一年間のランクD固定。+調査費用もしくは、被害者への誠意ある形での謝罪。
ちなみに、拒否や抵抗をして捕まると三年は強制労働付きのブタバコで過ごす事になるらしい。
カタノはDからCランク昇格。報酬は払っていたから、普通はC降格と厳重注意くらいらしいんだが、ほぼカタノのおかげで上がったようなもんらしくて、実力が足りないから、一年Dからやり直せって事ね。
調査費用に関しては、ギルドへの迷惑料みたいなもんらしいが、カタノとしては、一部支払う形でいいから一言謝罪させたかったらしい。
だが、向こうが数ヶ月の間にかなり遠くに移動していたのと、また別途に護送費用がかかるので、ギルド側が費用全額負担を命じる事にしたらしい。
途中で逃げないとは限らないから、現地のギルドで決定した事だが、結構な額らしいから罰金で済んで良かったのね?
「…カタノが逆恨みされそうな感じするけど大丈夫すかね?」
「降格された冒険者の扱いは、犯罪者と同じで検問所で引っかかるからの。当分は大丈夫じゃよ。アサシンも端金じゃ動かせんし、ギルドの調査終了後に、被害者が殺されましたでは、ギルドの沽券に関わるしの?」
罪が軽いから、ギルドが口出さないのかと思ってたけど、アフターフォローはバッチリですか。
家族側が逆恨みして、文句を言いに来たりする場合もあるが、顔見知りでもなければギルド一度は来るから、かなり名前が売れてる冒険者でない限りはギルドが別人の代役を立てて対応するらしい。
「そういや、いつのまにか解体に黒髪の若者が一人増えてましたぜ?」
「似てないじゃろ?」
「ええ全く」
全然顔似てないジャガイモさんだけど、情報攪乱目的だし本人が無事ならそれでいいんだ?
と言うより、何でオレ氏はギルマスに包み隠さず聞かされてるんで?
「事情知らなければ、別人だとか騒ぎ出しそうじゃ」
「なるほど、カタノは解体で了解でー」
「そう言う事じゃ」
オレ氏、世間の断りを理解し、また一つ賢くなる。
「スライムに、そんなホイホイ情報教えていいんすかね」
「…どうせ死ぬまで飼い殺しじゃしな」
「マジすか!」
「いい“引き取り手”も居らんしな」
「どうせなら、果物扱ってる八百屋かお菓子屋さんがいいっすけど…」
「寿命が来るまで研究所だけはないから安心せい」
「マスター、オレ氏長生きしたいです」
「珍種じゃから、比較対象がないからの。とりあえず、いつまでも若いつもりで無茶しとったら早死にするかもしれんな」
「オレ氏、いよいよ不死の研究に手を出そうかしら」
「知識もないのに、またとんでもない事いいだすのぅ」
「まず、不可能って解ってるから言えるんすよ」
だいたい、スライムが吸血鬼になっても、ヒルになるだけっぽいすよね。
「それに、素人が難しい研究に手を出すと、関係ない所で偉人になったりするもんなんすよ」
「ダメじゃろ…」
ギルマス呆れてるけど、魔王の名前すら歴史に埋もれてくのに、スライムの名が残ったら快挙だと思わね?
まぁ、ピカソみたいに生前は相手にされなかた人も居るし、後世に名を残すなんてアイデア思いついた時点で偉大じゃね?
とりあえず、美肌美容から手を出して、健康な身体づくりから初めてみようか。
骨と筋繊維ないから体操は意味なさそうだし、早寝早起きも出来ないから意味ないのか?
運動不足に不眠症か、人間とは体の作りが違うけど、思ってるより残された時間ないのかも…。
よし、研究なんて無駄な事は止めて普通に生きて、今ある物を大切にした方がいい。
うん、見た目デフォ人形だし、明日も入口で呼び込みだ。
意外に呼び込みは楽しいしな。たまには昼夜ぶっ通しで呼び込みやろうかね。
それはさておき。
「カタノはどうしてます?」
まぁ、オレ氏いない時間に一人で採取依頼受けて出掛けたらしいのは知ってるけど一応ね。
「そうじゃな。カタノじゃが、やはりあまり気にしておらんかったな。“それより、クノイに、焼いたウサギのはらにノビル詰めたら旨かった。ありがとう”と伝えて欲しいと言っとったな」
裏切り者!?時間が合わなかったからって酷いよ。ギルマスに相談したら、カタノもギルティ与えちゃくれんか?
「クノイはあまり表にだせんと話してあるからかの。今度作って持って来てくれそうだぞ。いい友人でよかったの」
―カタノッ! 大好き!!