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プルすら3

「らっさーせーっ!お次のお嬢さんもらっさーせーっ!!」


冒険者ギルドの入口脇に吊されて、昨日と今日と毎日声を張り上げる。


おかげで、オレの認知度はウナギ登りで、肉屋や八百屋からオファーが後を絶たないらしい。

いや、二束三文で売り払われても旨いもんくれるなら全然構わないんだが、ギルドは頑なに売りに出さねーらしい。


まだまだおれは、ただのしがない一匹の魔物なだけだって事だな。

こんな愛らしいオレにさえ、未だに危険の二文字が付きまとうんさ。


「らっさーせーらっさーせー。D推奨の手頃な依頼はいったよー。はい、らっさーせらっさーせー!!」


幼女未満のデフォルメ魔物による呼び込みのキレ味としちゃ完璧じゃね?


無粋な奴が、オウムかなんかと勘違いして同じ言葉繰り返して覚えさせようとしてくるけど、そんな奴らの期待に応えてやるほどオレ氏甘くない。


性別無いからよ。オレと私を掛けてオレ氏でいいよね?

いや、まんまだったらオレクシで俺串から磔か!?


ワタシとオレでオレ氏にしよう。


オレ氏の元々の語源は何だろね?



「…ふぅ、つかれた」


たまに、サボって床に丸くなって休む時もあり、その時間帯は誰が来たとしても反応しないのがマイルール。


最近、新たに呼び子の依頼なんてのが入り始めたららしいね。

さしずめオレは、呼び込みのパイオニアって奴かい。ゾクゾクしてきたぜ。


とりあえず、今はただひたすらに喉を磨き次の戦いに向けて英気を養うだけさ。


「…随分静かにしているが、これが例の魔物か?」


「朝は叫んでいたのを兵士が確認しているので間違いないと思われます」


「では、フランとギリスは引き渡しの手続きをして来い」


「はっ!」


しはらくジッとしていたら 騎士を引き連れた貴族の子供らしき少年がやってきた。

騎士多少ゴツいが、タイプの違うイケメンが三人もいて脳と目が潰れてまう。


「……………」


「「…………………」」



引き渡し云々言ってたが、狙いはオレって訳じゃねーよな?

そしたら、権力者の手元であきるまで籠の中か、研究所に売り渡されて解体後にホルマリン漬けかー。


短い人生だったなー。


まぶた透明だから仕方ないけど、少年と無言で見つめ合う交通事故発生。


何を期待してるかわからないけど、あからさまにトランペットとかオモチャを見てるみたいなるキラキラお目めで見ないで欲しい。


少年も美形に育ちそうだけど、良くある貴族の無理難題を通しそうな顔してるよね。


オレ様かー、婚約破棄とか卒業式にやって、庶民の娘選んで苦労するんだろうなー。


オレなんてスライムだから、恋愛も繁殖期もあるかわからんからなー。


せいぜい苦労するがいいさー。


「心なし目の光がなくなったような…」


「そうなんですか?」


そうして何やら話し始めたので、ボンヤリとしばらく聞き流す。


―時間だ。


会話する二人の前で、身を起こし再び営業活動を再開する。


視線は少年から外さない。


「らっさーせー!!らっさーせー!!安眠妨害は受付ませんが、依頼発注ならカウンターで受付てまっせー!らっさーせらっさーせー!!」


「「………」」


ポカーンと口を開けてるが何か言いたい事でもあるのかね。


「らっさーせーらっさーせ!今日も朝からジャンジャンバリバリジャンジャンバリバリ、チューリップがー狂い咲き!らっさーせらっさーせ!」


「なんてもったいない。この声にして…」


「いい声してると思うのですが、ガラの悪さが滲み出るとでも言うのでしょうか」


「ああ、学んだ相手が悪かったのだろうな。残念だ。」


おおい。呼び込み聞いていきなり興味なくすとかまじかよっ。

こうみえて御近所さんには、好評なんだぜ!?


「歌でも覚てたら面白いんだが」


「知り合いの歌好きに紹介したら覚えますかね」


「父に講師を頼んでみるか」


「それはやめた方がいいかと…」


何を真剣な顔で話し合ってるんですかアンタら。ギルドの置物に歌のならい物とか冗談抜きでないわ。歌?歌ならしってるぜ?


籠の中で立ち上がり、行き交う人々に向かって叫ぶ。


「私の歌を…きけーっ!!♯たんたん♪たぬk…」


「クノイ!店先でその歌は止めなさいっ!!」


「…たまは、ヤポール!ヘルコマンダー!!」


アネさんに怒られちまった。


それから直ぐに彼らは帰ってったが、どうも犯罪者の引き渡しの手続きに来てたらしいぜ?


くわばらくわばら。



「さんはい。そーらがみえてー、」

「やまはい。そーらがみえてー、」



「やまはい?」


「…やまはいです」


おう!カムカム!イエスイエス!おうカムカム?


美人教師様キa(`▽´)bター。


とは言っても、冒険者のお姉さんだけどね。


「アレンジしなくていいから、普通に歌ってね?」


「らじゃ」


なんかよ。仲間と“魔物が人の歌を覚えるかどうか”の賭けしたらしくてな強制的に覚えさせられてる。


手加減してんのか、童謡とかみたいなのだからテンション上がらん。


「ノリいい曲のいいんだけどよ」


「なに言ってるのよ。賛美歌なら余興で歌わせて貰ええるじゃないの。教会とかで歌わせて貰えるかも知れないわよ」


お嬢さん、教会って魔物は悪って言いふらしてんすから、余興で呼ばれるとしたら“磔”かなんかにされかねませんぜ?


「見せ物小屋だって、芸をするゴブリンとか使ってるんだから大丈夫よ」


大丈夫?だいたい魔を払うとかあるし、賛美歌の時点で安心出来る要素はどこにもないですよ。

そもそも、あれよ?賛美歌でもなんでも、吟遊詩人とかオペラ歌手が歌うと魔物は浄化されちゃうって前提あるでしょ。


魔物が歌ったら、ヤバくね?


反作用で、聞き手が魔物落ちするか、自浄作用で浄化されちゃうよ?



「とにかく、息苦しいし消滅したくないから賛美歌は止めよう」


「わかったわよ。なら仕方ないわ、船乗り達の“偉大なる海を讃える歌”ならどう?」


「どんなんすか」


題名からしてやな予感。


「ラーラーラララー、母なる海よ。我らが偉大な海神のーかいなをすり抜け西東―「お姉さんアウトーっ?!」


音は海の男とか学校の校歌みたいな感じだけど出だしですでにアウトだろ!?

てかスリ抜けたんじゃ海賊じゃー?!

腕振り回してお嬢さんが歌う歌じゃネェ!


歌は先祖・神様への捧げ物とか変なフレーズ多発でオレ氏飽きたよ?


残念ですが、歌は規制とかあるし、投稿規制入るまえに…ね。


off-the-record



って事で許してください。


無理無理、歌は難しいよ歌は。


―まぁ変わりにミソ情報。


スライムって呼吸してるか分からないけど、オレ氏が歌を歌う時や言葉を話すときは、呼吸が必要みたい。


体透けてんの見えないんだけど、どっかに肺でもあるのか?


でも、呼吸すると鳩尾辺りが膨らむ感じするのさ。

いや、口から食べた物も消えてるから喉もないし、どっか別の場所に本体が?


別の本体なんて、あのスライムしかねぇから、それだけはやだな。


そう、まさにオレ氏の声帯は謎だって事で許せ。


…寒い。



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