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5.初めての異世界人

「これは、ハイオーク! みんな陣形を取るんだ!」


「了解だ!」


「はい!」


「わかったわ」


 森の向こうからやって来た鎧を着た男たちは、あの一回り大きいオーク、ハイオークとやらへと向かって行く。


 鎧を着た男の人と軽装の男の人がハイオークへと向かって行き、僧侶風の女の子が呪文を唱えると、男の人たちの体が輝き始めた。おおっ! も、もしかして魔法なのかな!? はじめてみた!


 それに続くように魔法使いのようなローブを着た女の子が同じように呪文を唱えると、空中に火の矢が10本近く現れた。そして、ハイオークに向かって飛んで行く。


 男の人たちの頭上を通り越してハイオークへと飛んで行った。うおぉぉっ! 良いなぁ、良いなぁ! 僕も魔法使ってみたいなぁ!


 ハイオークは火の矢に向けて棍棒を振るう。すると普通の矢では出ないような衝撃音が鳴り響く。おいハイオークの棍棒は火の矢とぶつかった衝撃で棍棒は吹き飛んだけど、ハイオークは殆ど無傷だ。そこに


「おらぁっ!」


 と、軽装の男の人がハイオークへと殴りかかった……殴りかかった!? ハイオークの懐に入って男の人はハイオークの腹を殴る。


 ハイオークは殴られた衝撃で数歩下がるけど、すぐに体勢を立て直して、同じ様に男の人へと殴りかかる。ハイオークの攻撃は一撃一撃が大振りだけど、当たったら骨なんて粉々になってしまうほどの一撃。だけど、男の人はスレスレで避けて、反撃までしている。


 そこに、鎧を着た男の人が、軽装の男の人と入れ替わるように盾を突き出す。軽装の男の人を殴ろうとして出した右腕を鎧の男の人がタイミング良く弾いた!


 勢い良く跳ね返された右腕につられるようにハイオークも右側へと仰け反る。鎧の男の人はそのままハイオークへと向かい、右脇腹を切り裂いた。あれはかなり深い! 


 ハイオークは痛みに叫びながらも鎧の男の人を殴ろうとするけど、今度は軽装の男の人が間に入り込み連打を浴びせる。腹を何発も殴り、思いっきり回し蹴りを放つ。ハイオークが腹を抱えて膝をついたところに、軽装の男の人が顎下を打ち上げるように蹴り上げる。


「くらえ! クロスセイバー!」


 そして、再び鎧の男の人がハイオークへと迫り攻撃する。あれはスキルかな。鎧の男の人が持つ剣が輝き振ると、ハイオークの体に斜め十字の傷が入った!


 ハイオークは断末魔を叫びながらも後ろへと倒れていく。た、倒したのか? ハイオークはそのまま光へと変わっていく。倒したみたいだ。


「助かったね、あお……い?」


 僕が笑顔で葵の方を見ると、何故か頰をぷくぅと膨らませて怒っているのだが。なんで?


「あーっと、あ、葵さん? どうしてそんなに怒っているのでしょうか?」


「……別に何もありません! あんな恥ずかしい思いしたのに……」


 そう言ってぷいっとそっぽを向く葵。うーん、どうして怒っているのかわからないけど、後で謝ろう。多分僕が葵に対して怒るような事をしたんだろう。


「大丈夫かい、君たち?」


 そこに、鎧を着た男の人たちが僕たちに話しかけて来た。おっ、異世界の言葉がわかる。話しているのは違う言葉なのに、僕の耳にはちゃんと日本語に聞こえてくる。何かの補正か何かかな?


「あ、はい、大丈夫です。助けて頂いてありがとうございました」


「いや、俺たちが手を出さなくても倒せていただろう。この周りの魔石はオークたちのだろう? ハイオーク以上は群れを連れてくるからね。ハイオーク以外いなかったので、倒したとは思っていたのだよ」


 そう言って爽やかに笑う鎧を着た男の人。サラサラの金髪でキラキラと輝いている。うわぁ、物凄くイケメンだ。その鎧の人を僧侶風の女の子が目をキラキラさせて見ている。誰が見ても惚れているのがわかるね。


 葵をチラッと見ると、葵は鎧の人に見向きもしていないけど。そんな葵にホッとしている自分がいる。なんでだろ?


「俺たちは冒険者で俺はシュウゼル、こっちの男がラグア、魔法師の方がセラで僧侶の方がクララだ。よろしくな」


「は、はい、僕はテルと言います。彼女が葵でこの狼がウィンドウルフのウィルです」


「……可愛い」


 僕がウィルを持ち上げて紹介すると、魔法使いの女の子、セラさんがキラキラとした目で見てくる。と言っても、さっきのクララさんがシュウゼルさんを見ていたような惚れた感じではなく、ただ可愛いものを見る目だ。


「それで、君たちはどうしてここに? 依頼か何かかい?」


「い、いえ、僕たちは……」


 僕は言い淀んで葵を見る。どこまで話していいものか。当然『クリモン』の事は話せないし、自称神様に異世界から転生させてもらったなんて言えないし。そう考えていたら


「私たちは魔法でこの森に飛ばされたのです。荷物などすべて無かったためこの森の中をさまよう事しか出来ませんでした」


 と、葵が説明してくれた。大丈夫かと思ったけど、シュウゼルさんたちは普通に信じてくれた。ダンジョンのトラップとやらで似たような事があるみたい。


「それは災難だったね。もし良かったら俺たちと来るか? 俺たちの依頼も終わったし丁度森から出て帰るところだったんだ」


 そう言い微笑んで来るシュウゼルさん。ど、どうしようか。お言葉に甘えていいものだろうか? それとも初対面だからと怪しむべきか。


 僕は再びチラッと葵を見る。葵も考えていたけど、僕と目が合うと頷いてくれた。葵もついて行く事に賛成みたい。良し、ついて行こう。


「申し訳ないのですが、ご一緒してもよろしいですか? お恥ずかしい話、出口がわからなくて」


「はは、構わないよ。それじゃあ行こうか」


 微笑み先頭を歩き出すシュウゼルさん。いや〜、本当にイケメンだなぁ。僕には無理だけどあんな風になって見たいと思っちゃうね。


 そんな事を考えながら僕はシュウゼルさんたちの後ろをついて行くのだった。

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