story4.閉鎖特区アキハバラ
朝の東京を車で駆け抜ける。
俺は今、ロマンサバイバーズのNo.3として秋葉原へ向かっている途中なのだ。
「ところで、今頃聞くのもアレなんですが、どうして秋葉原なんかに行くんですか?」
「そう言えば言ってなかったな。秋葉原には俺の家がある。そこで一度準備するつもりだ。俺の家はそれなりに設備が整ってるし、まぁ秋葉原なら安全だしな」
「安全?」
「お前、本当に1人でオタク文化救おうとしてたのか?その割に知らないこと多すぎじゃないか?」
ぎ、ギクッ
「し、してましたよ……一応……」
「はぁ、槿、運転中悪いがこいつに1から教えてやってくれ、俺は少しの間眠りにつく。昨日の夜中、準備が忙しくて寝てないんだ。すまないな」
リーダーはそう言うと大欠伸をして、窓側に顔を倒した。後部座席からでは良く確認はできないが、きっともう既に夢の世界に落ちたのだろうか、その後ピクリともせず、寝息をたてていた。
「はぁ、全く先輩は……それじゃあ先輩の言う通り1から説明しますね」
「お願いします」
「もう仲間なんですから、敬語じゃなくて良いですよ。ちなみに槿も敬語じゃないかっていうツッコミは無しで」
「あ、あぁ……じゃあ、改めてよろしく」
槿は、目の前の信号が赤色になったのを確認し車を停止させる。それと同時に説明が始まった。
「まず、私達が倒すべき敵の名前は『聖華結社』目的不明、構成不明のほとんどが謎に包まれた団体です」
「聖華結社……ほとんどってことは分かってることもあるってことですか?」
「もちろん!!私達はアニメが焼失する前から聖華結社の動きを嗅ぎつけていたんですよ?今わかっていることは3つ。その1、世界中の有りと有らゆる科学者、研究者を集めていること。その2、日本各地に支部があること。その3、聖華結社のリーダー格は、これはわかってると思いますがあのゴーグル男ということ」
話し終わると信号が青に変わる。それを合図とするかのように、槿はアクセルを踏み、前進させていく。ビルの隙間から朝特有の東の陽光が目に突き刺さるが、我慢して槿との会話を続ける。
「なるほど、その聖華結社の事はだいたい理解できた。だが、秋葉原が安全ってどういう事なんだ?」
「秋葉原は今、閉鎖されてるんですよ」
「へ、閉鎖?」
「そう、と言っても閉鎖された訳じゃなくて昔から閉鎖されていたんですけどね。どういう事かと言うと、アムネシア・バグの影響、記憶改変。私達の様なイレギュラーな存在以外の人達の記憶の中では5年前から秋葉原は閉鎖されているって事になっているんですよ」
「そんな……じゃあ今秋葉原は?」
「閉鎖特区アキハバラに名前を変えて、巨大な壁と数体のオートマトンに守られているらしいです。まぁ、見たことないですが……」
記憶喪失…
記憶改変…
閉鎖特区アキハバラにオートマトン………
何だが段々話がややこしくなって来た……
ともかく今分かることは、一ヶ月前と今日では世界が全くと言っていいほど違うという事だ。
「そんな訳で、閉鎖特区アキハバラは巨大な壁に囲まれていて、さらにオートマトンにも守られている。敵の陣地にして最強の要塞ってことです」
「オペレーション『人の褌で相撲を取る』か……確かに、まさか自分の陣地に敵が住んでると思わないからな……馬鹿が考えそうな天才の考えだな。ってか、そんなに防御高かったらそもそも秋葉原に入れないんじゃない?」
「そこら辺は抜かりない……俺には俺なりの馬鹿には馬鹿なりの考えがある」
助手席で窓に横たわってた人影から返答が帰ってくる。
「なんだ、起きてたんですかリーダー」
「おう、そろそろ到着だからな。槿、ここで曲がってくれ」
「曲がれって、この通り神田駅ですよ?秋葉原は一駅隣ですが……」
「そんなことは分かってるさ……言っただろ?考えがあるって、とりあえず、荷物をまとめたら、まずはトイレを目指すぞ。あまり目立たないようにな。」
「と、トイレ?」
1通り荷物をまとめ、そのまま言われた通り出来るだけ気配を消しながら、駅内のトイレを目指す。気配を消すとは言っても、現在の時刻12時……お昼時も重なって故郷が田舎の俺から見れば、この人の流れは濁流の様に見えた。
「よしっ、着いたぞ。それじゃあ個室でこれに着替えて来い、そしたら今度こそ秋葉原を目指す」
そう言ってリーダーは俺と槿に洋服の様なものを渡す。俺は手にとって、目で眺めて、すぐに何の洋服か理解することが出来た。それはほんの1ヶ月前まで毎日の様に、袖に手を通していた着慣れた洋服だ。
~数分後~
「それでリーダー?俺達に工事現場用の作業服なんて着せてどうするんですか?」
「言っただろ?俺にも考えがあるって、確かに詩音が言った通り正面から秋葉原に入ることは困難……いや、不可能だ。しかし!!この犬蓼紡に不可能は無い!!!!そう正面から入れないなら裏から入ってしまえばいいだけ!!」
リーダーがそう叫ぶと、周りの人が一斉にコチラを向く。槿は恥ずかしそうに作業服に付いていた青色のキャップを深く被って顔を隠す。
「まぁ、要するに線路を歩いて行けばいいって事だ。あの出来事以来、山手線は神田駅から秋葉原駅を経由せずに御徒町に行く路線に変わった。とはいえ、秋葉原駅に行く線路が無くなったわけじゃない。俺らはそこを歩いて秋葉原内部に侵入する」
「なるほど、でも、だからって何で作業服?」
「そうですよ先輩!!早くゴスロリ着させろってさっきからハイビスカスが騒いでるんですから!!」
なるほど、ハイビスカスとは自分の中で会話可能のなのか……ってかやっぱり、あの服装はハイビスカスの趣味だったのか。
「まぁまぁ落ち着け、よしっ、こんな所で話しているのもアレだ。早速、秋葉原に潜入するぞ。それと槿、お前はそのまま深く帽子被っとけ、18歳の割に童顔だからな」
「俺より年上!?中学生くらいかと……考えてみれば、確かに運転してたか……」
「なぁに?私が何歳に見えたって?私怒る時は怒るんですよ?」
「よしっ、行きましょう!!リーダー」
そのままリーダーについて行く俺と槿。
久々に神田駅に来たが、昔に比べて歩きにくく感じるのは、俺が1ヶ月の間ひきこもっていたからか……バイトを辞めて体が鈍っていたからか……それは分からないが、とりあえずココは歩きにくく、生きにくさを感じた。
通り過ぎる人々は、どこか悲しみを引き摺っているようにすれ違っていく。
もしかしたら、この人達も何処か俺達と同じようにアニメの無くなった世界に違和感なりそう言ったモノを感じているのでは無いだろうか……
いや、忘れてるんだからそんな訳ないのだが……
「よし、着いたぞ」
そこは、俺が今まで何度も訪れたお馴染みの階段。お馴染みでは無いのは、その階段の先が薄暗いという事と、目の前に引かれた黄色い『keep out』の文字。
それを見て、『あぁ、本当に秋葉原閉鎖されてるんだな……』と無理矢理、気付かされた様だった。
「じゃあ、お邪魔して……」
「あぁ、ダメダメ!!何やってんの君たち!!」
リーダーがテープを乗り越えようとすると、後ろから駅員さんであろう人が走ってくる。
「あ、あのぉ……ボクタチハ……」
詩島詩音、初対面の人に話しかけられると口の筋肉が硬直する病を患った悲しき少年。
「すみません!!私達は聖華結社から依頼された線路管理業者です。秋葉原の閉鎖から5年、今日が点検の日になっています。通してもらえないでしょうか?」
だれぇ?この人……
低姿勢で、しかも整った口調で話し始める我がリーダー『犬蓼紡』
「線路点検?そんなの聞いてないけどなぁ……」
俺らを完全に疑ってふんぞり返り腕組みをする駅員さん。
まぁ、そうなるよな……俺ら完全に怪しい訳だし、駅員さんは仕事の責務をきちんと渡してる訳だし、ただ欲を言えば少しぐらい仕事をサボっていてもらいたかった……
「いえいえ、おかしいな……連絡入ってないのかなぁ……」
演技を続けるリーダー……
もう諦めて下さい。と俺が肩を叩こうとしたその時、リーダーはコートの胸ポケットから1枚のカードを駅員さんに見せつける。
「はっ……申し訳ございません。どうぞお通り下さい」
瞬間。
さっきまで偉そうにで応対していた駅員さんの態度が、途端に小さくなる。
「どうも〜」
悠々と黄色いテープを乗り越えていくリーダー、それに続くようにテープを超える俺。槿は一度会釈をしてからテープを乗り越えた。
◼◼◼
左を見ると秋葉原と外界を隔てる大きな壁、右を見れば、いつも車窓から見ていた変わらない風景。
線路の上を歩くこのなんとも言えない、スタンド・バイ・ミー感が俺のロマンをくすぐるが、それは一旦置いておいて、とりあえず例のアレについてリーダーに聞くことにする。
「先輩、さっきのアレって一体何だったんですか?」
俺が言おうとすると槿に先手をうたれる。
ということは槿も知らなかったのか……
「アレって、このカードのことか?これは旧友の縁故を辿って造ってもらった聖華結社の会員証だ」
そう言って見せたカードには、犬蓼紡の名前と証明写真。それと聖華結社の文字。
実物の会員証は知らないが、確かにそれっぽい。
「とはいえ、聖華結社の連中は騙せないと思う。まぁ、さっきみたいに無関係の人を騙すことにとっては無いよりはマシだろ」
リーダーはそう付け加えた。
「でも、あの駅員さんを見た感じ、この世界で聖華結社ってもしかしてすごい勢力持ってる感じ?」
「そりゃあな……路線変えたり、壁作っちゃたりしてるわけだし、まぁなんせ聖華結社の開発したオートマトンは、日本に留まらず世界に通用する技術。今や世界は警備員要らずとも言われているからな……世界各国の首脳は聖華結社に頭が上がらないらしい」
「そんなに……まぁ、俺達はそんな警備を難無く突破してる訳ですけどね……ってそんな話をしているうちにもう駅ですね」
秋葉原駅……いや、元秋葉原駅は形こそ残っているものの、電気は切れていて、廃墟さながらの空気を漂わせていた。
それこそ、奥から何か出てきそうな。
槿は、少し怯えながらリーダーの袖口に掴まる。そう言えば、全く気にしてなかったのだが、リーダーと槿は、どんな関係なだろうか?
『先輩』と呼んでいるってことは、同じ学校で勉学に励んでいたのだろうが……
それにしても、何故この2人で旅を?
俺は何を考えているのやら……
目の前に本人がいるのだから聞けばいい話じゃないか。
俺は、右手で槿の『肩』スッと触れた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
世界の終わりの様に叫ぶ槿。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
世紀末の始まりの様に叫ぶ俺。
「何やってんだお前ら……」
「い、いや槿が急に叫ぶから……」
「急に詩音くん肩叩くから……こんな暗闇で叩かれたら誰でも驚きますよ……そ、それで何の用ですか?」
槿の台詞で俺が何を聞きたかったのか思い出す。
「あぁ、そうそう……槿とリーダーってどういう関係なのかなぁ?って気になって……いや、俺が来る前から旅をしてたとか言ってたから……って槿さん?」
俺は気づいた。
俺が台詞を続けるごとに暗闇の中でも分かるほど槿の顔が徐々に赤くなっていくのを……
何かマズイ質問だったか……
焦ってすかさず謝罪を口にしようとした、その瞬間。
「な、な、何言い出すんですかぁ!!!!そ、そんな、私と先輩はその……えぇと……」
なるほど、なるほどな。
俺は全てを手に取る様に理解した。
「パートナーだ、槿は俺のパートナー。付き合いはそれなりに長い。俺が中3の時からだから、もう5年になるな……」
もうリーダー、鈍感主人公かよ。
5年も付き合いあるなら気づけよ。
「そうそう、パートナーですよ…………え!?恋人!?」
結果オーライみたいだな。
「俺が中学卒業の時に少し関わりがあってな。あれ以来、高校だの仕事場だの色んな所に現れるんだよ……まぁ運命と言うかなんというか」
「な、なるほど………」
なんかその文面だと……
「ねぇ?今、『槿って本当にストーカー癖があるんじゃ……』って思わなかった?改めて確認するけど、詩音くんをつけてたのハイビスカスだからね」
アハハ……何でバレたんだ。
「それじゃあ駄弁るのはここまで、出口が見えてきたからな。気引き締めて行こうか」
リーダーの言った通り、数10メートル先に見える外界の真っ白い光。近づく秋葉原の電気街口から零れるソレは、俺の閉鎖特区アキハバラに対しての不安を少しづつ加速させ始める。1歩、もう1歩と俺は過酷へ足を進めているのだろう。
今なら引き返せるだろうか?
いや、何を考えてるんだ。『自分勝手』を貫いてみせると決めたんじゃないか。今頃引き返すなんてありえない。
俺は“後悔”だけはしたくないんだ。
完璧なシナリオで俺はオタク文化を必ず救ってやるんだ。
その決断で足を動かし、白色の混凝土を足で強く踏みしめた。
明るい光に少しずつ慣れてくる眼が街の全貌を写し始める。
そこは、人の気配なんて勿論感じられない。
空を食う高層ビルは無機質なモニュメントと化していて、ドンッと電気街口から出ると印象に残っていたヨドバシカメラも、今まで色々な映像を流していたUDXの巨大モニターも、その威厳を剥奪されたかの様にただただそこに佇んでいたるだけだった。
酷く痛感した。
ある程度の覚悟を持っていたが、それでもやっぱり受け入れられなかった。遠くで霞む灰色の壁の外から微かに聞こえる物音。
しかし所詮、閉鎖特区の外の音。
それは同時にこの秋葉原がどれだけ静寂と言う二文字に支配されているのかを表すに充分過ぎた。
「静かだ」
「そりゃあ……閉鎖されてる訳だしな。このぐらい静かな方がこの秋葉原では自然なくらい……って伏せろ!!」
「なっ!?うべっ……」
いきなりリーダーが警告の言葉をかけ、俺の後頭部を掴んで無理矢理伏せさせる。
「な、なにするんッグ……」
リーダーは強引に俺の口に手を当て声が漏れないように抑え込むと、自分の唇に人差し指を当て喋るなと言うジェスチャーを見せつける。
「……オートマトンだ。気づかれないようにゆっくりと移動するぞ」
俺らは静かに音を立てず、気配を消してオートマトンの視界から隠れる様に、物陰へ入っていく。そこから、頭を出して初めてオートマトンの確認を試みる。
初めて見るその形、その姿。
白い光沢のあるボディに四肢の付いた素体。鼻や口、目の無いのっぺらぼうの様な顔を、周りを監視するように回しながら、その場を徘徊していた。
不気味の谷と言っただろうか……
きっとこういう存在の事を指すのだろう。
時間と共にその場から離れていくオートマトンを見送り、安全を確認して陰から立ち上がるリーダー。
「もう行ったみたいだな、お前らも立って平気だぞ」
「私も初めて動いているオートマトンを見ましたけど、なんだか不気味でしたね」
「でもリーダー、あのオートマトン武器らしきモノ持って無かったですけど、戦ったりしないんですか?」
「まぁ、俺も正直隠れるのはしょうに合ってない。叩いて殴ってぶっ壊したいところだ。と言うか、そう出来ないことは無い。一体だけならな」
「……と言うと?」
「あのオートマトン、危険を察知すると仲間を呼ぶ警報を鳴らすんですよ……全く徘徊するだけでも脅威って言うのに……」
「なるほど、確かにそれは面倒くさい」
「あぁ、だから戦いはなるべく避けた方が得策だな。ってな訳で気をつけながら向かうぞ」
◼◼◼
「おぉ!!帰ってきたぞ我がマァイホォゥム!!」
「先輩、テンション上がりすぎですよ……(まぁ、そんな無邪気な所が可愛いんですけど……)」
「ここが、リーダーの家ですか……」
家の外には『オタクの巣』と言う看板を掲げ、雑居ビル1階に佇んでいた。
「あぁ、1階は自営店。2階は俺のプライベートルーム、雑居ビルにしては住みやすいんだぜ?」
中には、大量の透明ショーケースとその中に保管されているフィギュアの数々。
雪の様に埃のかぶっているレジスターや無造作に置かれたパイプ椅子と長テーブル。
その全てが放置されていた事を物語っていた。
「フィギュア、沢山あるな」
「先輩の店はフィギュアショップでしたから、でもまだ残ってるとは…やっぱり…」
「やっぱりってまさか回収されるとか言い出すのか?」
この世界でなら有り得る。
聖華結社が完全にオタク文化を忘れさせる!!とか言って回収しても。
「いいや、そんな事はしないぜ、ただ勝手に消滅するがな」
「消滅?」
「お前、秋葉原には今までも来たことあるんだよな?じゃあ不思議に思わなかったか?あの日突然閉鎖されたこの街に1つも、そう取りこぼしも無く1つもポスターやオタク文化に関わる物が無くなってたことを」
「た、確かに…」
今考えてみれば、アニメ宣伝用の大きなポスターが一切なかった。
「でもそれは……」
「回収されたんじゃないんですよ。アムネシア・バグの二つ目の影響。記録消滅、消された記憶に関わる記録を完全に消滅させる二次災害です」
「記録消滅。じゃあ何でここのフィギュアは消えてないんですか?」
「そんなの簡単だ。俺が忘れていないからだ。要するに記憶を失って無いヤツの周りでは記録消滅は起こらない。お前のあのバッチみたいにな」
「つまり、アニメグッズとかオタク文化に関わるモノが残っていればその近くには記憶を持った人が居るってことですか?」
「そうなるな……という訳で、詩音。お前のロマンサバイバーズとしての初任務ができた。この秋葉原で何かオタク文化に関わるモノが残ってないか見てきてくれ、外に出るのはそれなりの覚悟をしないとならないが出来るか?」
冗談じゃない。
さっきあんな不気味なモノを見たばっかだ。正しい判断が出来る人間なら絶対に断る。例えるなら、鮫がいると分かってる海に飛び込む様なもんだ。
そんな危険な場所へ行くか行かないか。
もちろん俺の選択は決まっている。
「この任務は詩音くんにしか出来ないんだけどなぁ」
「あぁ槿、この俺に任せろ。オートマトンだろうがなんだろうが、チャチャッと行ってチャチャッと帰ってくるぜ!!」
ただし、詩島詩音が正しい判断ができる人間だとは誰も言っていない。
俺はそのまま勢いよく、店の扉を押し開けた。