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創作物語帳  作者: ツェヘラザアド
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北風と太陽(現代いそっぷ)


北風と太陽とが議論をした。

それぞれ、おれの方が強力だとの主張をくりかえす。

強情っ張りで気位の高い二人はいつもこんな感じで議論をしている。

こうなってくると侃々諤々、堂々巡りで議論が終わらないで辟易するので、どちらかが力くらべを提案するんだ。

いつも通り、もはや何度めかもわからない力くらべを二人は始めた。

ルールが決まる。

ちょうど今コンビニからポテツィを買って出て来たジャージの男のジャージを脱がすことができるかだ。


「ふーん。ま、太陽くんは見ていていたまえ。クールに決めて魅せよう」


北風は髪を振り乱して猛烈に強い風を男に送った。

ジャージを剥ぎ取らんとする勢いの風に震え上がった。


「あぁ〜、寒い」


ジャージの男はコンビニの真正面にある家屋に入っていった。

彼の自宅である。


「あぁ〜、寒かった」


自室に入ると引きこもり、そのままゲームを始めた。

当然、ジャージはそのまんま着けたままだ。


「そ、そんな馬鹿な…」


北風は雲に手をついて、うなだれた。


「寒いやつだな、君は。今度は俺がやろう」


太陽は北風を見下していうと、再びコンビニでポテツィを買って出てきた男に髪を振り乱して暑い陽射しを浴びせた。


男は太陽を忌ま忌ましげに見上げると舌打ちして自宅に入っていった。

そして、また引き込もってゲームをし始めた。ジャージは当然云々。


「俺が負けたのか…」


太陽は北風と並び、雲に手をついた。


しかし、力くらべを引き分けに終わらせるわけにはいかない。


ジャージの男に何度も挑む北風と太陽。


決してジャージを脱がず、引きこもりを辞めない男。

いつしか北風と太陽は力くらべのことを忘れていた。


彼らの意地にかけて引きこもりに挑むようになっていた。


北風は雷雨を引き寄せ嵐となり、災害を引き起こした。しかし、引きこもりは部屋から出ない。

太陽は地球を照らし気温を上げ続け世界各地の気象台を絶望に落とした。しかし、引きこもりはジャージを脱がない。



引きこもりが引きこもりをやめるのが先か、地球が壊れて引きこもりが死ぬのが先かはわからないが、少なくともこれだけは言えるだろう。


北風と太陽の力くらべはこれからだ。




教訓。引きこもりと天気は無縁である。北風さん、太陽さん、引きこもりで力くらべをするのは山で鯛を釣るようなものですよ

参考文献

星新一作『未来いそっぷ』 新潮社

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